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今日は聖女の仕事として神殿に来ている。
聖女見習いの指導をするためだ。次代を担う聖女を育成するのも聖女としての大切なお仕事だ。
聖女見習いに選ばれたのは、国中から集められた10~15歳までの少女達だ。この中から才能に溢れる者、真面目に修行する者が聖女に認定される。
私もそうだった。10歳から修行して聖女に選ばれたのは13歳の時。今年18歳だから聖女になって5年経った訳だ。
歴代の聖女が代替わりするのは凡そ20歳前後。私の聖女としての任期もあと2年あまりということになる。
寂しい気持ちも勿論あるが、それよりもどちらかというと、やっと肩の荷が下りるなという気持ちの方が強い。
聖女という立場は重い責任を背負わされるものだ。教会の顔として、また国民に対する希望の象徴として振る舞うことを求められる。
10代の少女に背負わせるには重い荷物だ。僅か13歳でその立場に立たされた私は、右も左も分からぬまま周りに求められた通りの聖女を演じて来た。
そのことを苦痛に感じる時も勿論あったが、私の場合は周りの人達に支えられてここまでやって来れた。
先代の聖女、神官や神官見習い、シスターやシスター見習い、みんな良い人達ばかりで、13歳の小娘を時に優しく時に厳しく導いてくれた。とても感謝している。
だから私も、聖女見習いの少女達を彼らがしてくれたのと同じように導いてあげたいと思っている。それが彼らに対する恩返しになると信じて。
◇◇◇
「このグズ! アタシ達の分まで掃除しておきなさいって言ったじゃないの! なんでまだ終わってないのよ! これじゃアタシ達がサボっていると思われちゃうじゃないの!」
「も、申し訳ありません、セナ様。で、でもこれだけの範囲を一人で掃除するのは大変でして...」
「お黙り! レイ、アンタみたいな平民は言われた通りやってりゃいいのよ! 掃除や洗濯、食事の用意とかの雑用をしてる方がお似合いなんだから!」
聖女見習いの少女達が暮らしている神殿の一角から、そんな怒鳴り声が聞こえて来た。
ふぅ...私は頭を抱える。国中から集められた聖女見習いの少女達の中には、当然ながら平民の娘も含まれる。
今、グズ呼ばわりされている娘はレイと言って平民の娘で、レイをアゴでコキ使っているのが伯爵令嬢のセナ率いる貴族令嬢達だ。
格差社会の弊害はこんな所にまで及んでいる。修行の一環として聖女見習いの少女達は、自分の身の回りのことは自分でしなければならない。
貴族令嬢として甘やかされて育てられた彼女達は、それを厭い平民であるレイに押し付けているのだろう。
このままではお互いのためにならない。
そう思った私は彼女達の前に立った。
聖女見習いの指導をするためだ。次代を担う聖女を育成するのも聖女としての大切なお仕事だ。
聖女見習いに選ばれたのは、国中から集められた10~15歳までの少女達だ。この中から才能に溢れる者、真面目に修行する者が聖女に認定される。
私もそうだった。10歳から修行して聖女に選ばれたのは13歳の時。今年18歳だから聖女になって5年経った訳だ。
歴代の聖女が代替わりするのは凡そ20歳前後。私の聖女としての任期もあと2年あまりということになる。
寂しい気持ちも勿論あるが、それよりもどちらかというと、やっと肩の荷が下りるなという気持ちの方が強い。
聖女という立場は重い責任を背負わされるものだ。教会の顔として、また国民に対する希望の象徴として振る舞うことを求められる。
10代の少女に背負わせるには重い荷物だ。僅か13歳でその立場に立たされた私は、右も左も分からぬまま周りに求められた通りの聖女を演じて来た。
そのことを苦痛に感じる時も勿論あったが、私の場合は周りの人達に支えられてここまでやって来れた。
先代の聖女、神官や神官見習い、シスターやシスター見習い、みんな良い人達ばかりで、13歳の小娘を時に優しく時に厳しく導いてくれた。とても感謝している。
だから私も、聖女見習いの少女達を彼らがしてくれたのと同じように導いてあげたいと思っている。それが彼らに対する恩返しになると信じて。
◇◇◇
「このグズ! アタシ達の分まで掃除しておきなさいって言ったじゃないの! なんでまだ終わってないのよ! これじゃアタシ達がサボっていると思われちゃうじゃないの!」
「も、申し訳ありません、セナ様。で、でもこれだけの範囲を一人で掃除するのは大変でして...」
「お黙り! レイ、アンタみたいな平民は言われた通りやってりゃいいのよ! 掃除や洗濯、食事の用意とかの雑用をしてる方がお似合いなんだから!」
聖女見習いの少女達が暮らしている神殿の一角から、そんな怒鳴り声が聞こえて来た。
ふぅ...私は頭を抱える。国中から集められた聖女見習いの少女達の中には、当然ながら平民の娘も含まれる。
今、グズ呼ばわりされている娘はレイと言って平民の娘で、レイをアゴでコキ使っているのが伯爵令嬢のセナ率いる貴族令嬢達だ。
格差社会の弊害はこんな所にまで及んでいる。修行の一環として聖女見習いの少女達は、自分の身の回りのことは自分でしなければならない。
貴族令嬢として甘やかされて育てられた彼女達は、それを厭い平民であるレイに押し付けているのだろう。
このままではお互いのためにならない。
そう思った私は彼女達の前に立った。
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「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
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