嘘吐きな妹と彼の病弱な義妹そして腹黒い幼馴染みに悪役令嬢と呼ばれる私、実は心の声が聞こえる聖女です

真理亜

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 今日は聖女の仕事で神殿に来ている。

 お茶会と言う名の接待をするためだ。集まったのは皆、高額の寄付をしてくれた人達ばかりだ。一人一人に感謝の意味を込めてニッコリと愛想笑いする。

 そんなん聖女の仕事じゃないだろうって? うん、私も激しく同意するよ...全く...いくら高額寄付してくれた人達だからと言って、皆が皆揃って高尚な志の元に寄付したという訳じゃない。寧ろそういう人の方が圧倒的に少数派だ。

 心の声を聞いてみれば良く分かる。ある者は神殿における政治的な立場を強固なものにしたいがため。ある者は聖女の視察先を自分の領地にして貰って、自身の権力をアピールをしたいがため。

 そしてある者は...

『ふうん、これが聖女であのカルロの婚約者ねぇ。中々いい女じゃないか。カルロなんかにゃ勿体ないね。僕のような男にこそ相応しい。フフフッ! 寝取ってやったらカルロのヤツどんな顔するかなぁ!? 見物だねぇ。大体、僕よりカルロの方が人気があるってのが許せないんだよなぁ。僕の方が絶対いい男なのにさぁ。ホント世の中の女どもは見る目がないよねぇ。さてさて、この聖女様をどうやって堕としてやろうかねぇ』

 なんだかなぁ...私に寄って来る男ってホント碌なの居ないよねぇ...カルロ以外は。確かコイツはさる公爵家の次男坊だったっけ。だからカルロに対してライバル心剥き出しなんだね。

 さて、どう仕掛けて来るのやら。まさか神殿の中で堂々と聖女を口説くなんて罰当たりなことはしないと思うけど。


◇◇◇


「...聖女様...ちょっとよろしいでしょうか...」

 お茶会が終わって私が自分の部屋に戻ろうとすると、例の公爵家次男坊が仕掛けて来た。

「はい? なんでしょうか?」

「...実は先程から急に具合が悪くなりまして...よろしければ聖女様に診て頂ければと...」

 そう言って弱々しい演技をする。もちろん仮病だ。診るまでもない。そして心の中では...

『フフフッ! 治療となれば部屋に二人っきりになるはず。そうなればこっちのもんだ。僕の魅力に堕ちない女なんか居ないからね。フフフッ! 楽しみだ♪』

 どんだけ自意識過剰なんだこの男は...ハッキリ言ってカルロの方がコイツより何倍もカッコ良い。贔屓目を差し引いてもね。

「分かりました。こちらへどうぞ」

 私は神殿の治療所にある大部屋に案内した。シスターや若い神官が入れ替わり立ち替わり出入りしては治療を行っている。

「あ、あの...ここは?」

「治療所ですが何か?」

「い、いえ、別に...」

 お前なんかと部屋で二人っきりになる訳ねぇだろ! キモッ!

「で? どこがお悪いんですって?」

「えっと...その...」

 結局、しどろもどろになった男は、治療するまでもなく治ったと言って、そそくさと帰って行った。

 ざまぁ!
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