嘘吐きな妹と彼の病弱な義妹そして腹黒い幼馴染みに悪役令嬢と呼ばれる私、実は心の声が聞こえる聖女です

真理亜

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「カルロ様! 次は私と1曲踊って頂けませんこと?」

 ミカが息を弾ませながらカルロを誘う。なんか必死だねぇ。カルロが若干引いてるよ?

「ミカ様...申し訳ありません。リタが喉が渇いたと言ってまして...」

「リタ嬢なら僕がエスコートしますからご心配なく」

 ボンクラがしゃしゃり出て来た。そういやこの人の名前知らないや。まぁ、ボンクラでいいか。

「し、しかし...」

「カルロ、せっかくのお誘いだし、いってらっしゃいな。私は大丈夫だから」

「...分かった」

 カルロが名残惜しそうに離れて行く。ミカが醜悪そうな笑みを浮かべている。ここまでは上手く行ったと思ってんだろうな。甘いっての。

「さあ、リタ嬢。こちらのカクテルをどうぞ?」

 ボンクラがトレイにカクテルを沢山載せてやって来た。まるでボーイみたいだな。この内のどれかに即効性の媚薬が入っていると。どれに入れたのか心の声を拾ってみる。

『ムフフ♪ どれを選んでも大丈夫! 全てに媚薬を入れてあるからな! 飲んだらこっちもんだ! あんなことやこんなことし放題! 一晩中可愛がってあげるぜい! 今夜は寝かさないよ! ムフフ♪』

 キモッ! 鳥肌立って来たよ! まぁでも、全てに入っているんだったら良い手があるな。やってみるか。

「ありがとうございます。ねぇ、乾杯しませんこと?」

「えっ!? あ、そうですね...」

 フフフッ! 焦ってる焦ってる!

『参ったな...ここで断ったら不自然になるし、即効性と言っても部屋に連れ込むまでなら何とかなるかな?』

「「 乾杯~! 」」

 私は飲む所を見られないよう扇子で隠しながら、飲むフリをしてカクテルを袖口に流し込む。不快に感じるけど我慢する。ボンクラは私の演技に気付かず飲み干したようだ。

 即効性と言うだけあって、早くもボンクラの目がトロンとして来た。仕掛けるなら今だ。

「すいません...私、ちょっと酔ったみたいで...どこか休める場所はありませんか?」

「ありまふよ。あんないしまひょ」

 大分言葉が怪しくなって来ている。早く行った方がいいな。私は案内された部屋のドアを開けて、その中にボンクラをペイッと放り込んでドアを閉めた。

 すかさずダンスフロアに戻って、カルロと踊っているミカに声を掛ける。

「ミカ様! 大変です! ミカ様の婚約者が! 急いで来て下さい!」

「えっ!? えっ!?」

 なんで私がここに居るのかと混乱しているミカの手を強引に引っ張って連れ出した。そして先程ボンクラを放り込んだ部屋に、ミカも同じようにペイッと放り込んでからドアを閉めた。

「あっ!? ちょっと待っ! あぁ! いやぁ! ダメぇ!」

 ドアの向こう側からミカの悩ましげな声が聞こえて来たのを確認して、私はそっとその場から離れた。

「リタ! ミカ様達は大丈夫なのかい!?」

「心配要らないわ。ちょっと飲み過ぎちゃったみたいね。今はミカ様が付いてるわ。お二人の邪魔をしないように私達は戻りましょう」 

「そうだね。行こうか」

 一晩中ごゆっくり♪

 ざまぁ!
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