嘘吐きな妹と彼の病弱な義妹そして腹黒い幼馴染みに悪役令嬢と呼ばれる私、実は心の声が聞こえる聖女です

真理亜

文字の大きさ
上 下
15 / 83

15

しおりを挟む
 今日は聖女の務めとして孤児院に慰問に来ている。

 私は子供達の健康状態のチェックを、護衛として付いて来た神殿の神兵は子供達の遊び相手をしている。

 健康状態は概ね心配は無さそうだが、全体的に子供達が痩せ過ぎている印象がある。この孤児院は神殿が経営しているので滅多なことはないと思うが、ちょっと気になったので院長を勤めている神父さんと、副院長を勤めているシスターさんに話を聞いてみることにした。

 ちなみにこのお二人はでっぷりと太っている。

「子供達が痩せ過ぎているように見受けられます。食べ盛りのはずなのに食が細いのでしょうか? 何か心当たりはございませんか?」

「さ、さぁ...私どもは三食きっちりと食べさせておりますので、とんと見当が...」

「そ、そうですわ...毎日きちんと出しておりますわよ。聖女様の気のせいではございませんこと?」
 
 やたら汗を掻きながら説明する二人。とても怪しい。何か隠しているな? 私はすかさず心の声を拾ってみた。

『ま、マズい! 食費をちょろまかして懐に入れてることを疑われてる!? 確かに食事の質は落としたし量も減らしたけど、食事を抜いたりはしてない! なんとか誤魔化してさっさと帰って貰わないと! 今夜は出荷だってあるのに!』

『ま、マズいわ! 出荷の際、暴れたりしないように、日頃から食事を減らしてガキどもの体力を落としていたのが仇になったわね! なんとしても誤魔化さないと! 今夜は大口の顧客が来るんだから!』

 なるほど、そういうことか。孤児院のお金を着服して自分達の懐に入れ、その皺寄せを子供達に押し付けたと。最低だなコイツら。

 それより気になったのは出荷って言葉だ。まるで家畜か何かを卸すみたいな言い方、そして今夜って...まさか!

「...院長先生方、つかぬことをお聞きしますが、ここ最近子供達の養子縁組が決まったりしましたか?」

「い、いえ、こ、ここの所は特にありませんです。はい...」

「え、えぇ、良いご縁があればありがたいのですが...」

「そうですか。もしかしたら紹介できるかも知れません。子供達のリストをお預かりしても構いませんか?」

「えぇ、もちろんですとも!」

「子供達のためにも何卒よろしくお願い致します!」

 子供達のためね...自分達のためじゃないの? どの口がそんなこと言えるんだか...子供達を食い物にしたことを後悔させてやる! 覚悟しろ!
  
 私は護衛の神兵を呼んで耳打ちした。そして神殿に帰って教皇様に報告し、作戦の許可を取って夜になるのを待った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】「私は善意に殺された」

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

もう一度7歳からやりなおし!王太子妃にはなりません

片桐葵
恋愛
いわゆる悪役令嬢・セシルは19歳で死亡した。 皇太子のユリウス殿下の婚約者で高慢で尊大に振る舞い、義理の妹アリシアとユリウスの恋愛に嫉妬し最終的に殺害しようとした罪で断罪され、修道院送りとなった末の死亡だった。しかし死んだ後に女神が現れ7歳からやり直せるようにしてくれた。 もう一度7歳から人生をやり直せる事になったセシル。

王命により泣く泣く婚約させられましたが、婚約破棄されたので喜んで出て行きます。

十条沙良
恋愛
「僕にはお前など必要ない。婚約破棄だ。」と、怒鳴られました。国は滅んだ。

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

一番悪いのは誰

jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。 ようやく帰れたのは三か月後。 愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。 出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、 「ローラ様は先日亡くなられました」と。 何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・

処理中です...