嘘吐きな妹と彼の病弱な義妹そして腹黒い幼馴染みに悪役令嬢と呼ばれる私、実は心の声が聞こえる聖女です

真理亜

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 今日はお茶会に来ている。

 正直言えば来たくなかった。なにせホストである侯爵令嬢のララは、カルロを狙っている一人だからだ。だが格上の侯爵家からの招待を断る訳にはいかない。

 ララは事あるごとに家格で釣り合いが取れるのは自分だと、私はカルロに相応しくないと、そう言い続けている。今日のお茶会でもマウントを取る気満々だろう。

 やがてお茶会の指定されたテーブルに着いた途端、私はすぐさま帰りたくなった。なぜかルナ、リズ、ミラの三人と同じテーブルで、私の席はララのすぐ隣と。

 完全に包囲網を形成されてしまった。三人はニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべている。心の声を拾ってみた。 

『フフフッ! リタ! そんな澄まし顔をしていられるのも今だけよ! たっぷりと恥を掻くがいいわ!』

 これはルナ。

『フフフッ! お姉様! その顔が苦痛に歪む姿を早く見たいわ! せいぜい苦しみなさい!』

 これはリズ。

『フフフッ! リタ様はどんな声で泣いてくれるのかしら? 楽しみだわ~♪』

 これはミラ。

 なるほど。方法は不明だが、私になにかしら恥を掻かせようとするらしい。私は警戒しながらお茶会の開始を待った。やがてララが現れ挨拶を始める。

「皆様、ようこそおいで下さいました。本日はごゆっくりお楽しみ下さい」

 ララが私の隣の席にやって来た。

「リタ様、今日は特別なお茶をご用意致しましたの。是非ともリタ様にご賞味頂きたいのですわ」

 そう言ってとても良い笑顔を浮かべている。怪しい事この上ない。心の声を拾ってみる。

『オーッホホホッ! このお茶には世界一辛いと言われる唐辛子「ドラゴンズ・ブレス」をたっぷり入れてあるのよ! 悶え苦しむがいいわ! 身の程も弁えずカルロ様に言い寄った報いを受けなさい! オーッホホホッ!』

 なるほど。そういう魂胆か。そっちがその気ならこっちも遠慮なくやらせて貰おう。

「えっ!? カルロ!?」

 私か指差した先には、カルロに良く似た髪色と体型の給仕役の執事が、こっちに背中を向けて立っている。もちろんカルロのはずはない。だがララを含むカルロ大好き娘達には効果覿面で、

「「「「 えっ!? カルロ(お義兄)様!? 」」」」

 全員の意識が執事の後ろ姿に集中した。その隙に私とララのお茶をカップごとすり替える。

「ごめんなさい、見間違いでしたわ。こんな所にカルロが居るはずがありませんものね。お騒がせして申し訳ございません。お茶を頂きますわね」

 そう言って私はお茶を一口飲んだ。皆が固唾を飲むのが分かる。

「あら美味しい! とても良い茶葉ですわね!」

 皆はポカンとしている。

「皆様? どうかしました? とっても美味しいですわよ?」

 私がそう言うと皆は首を捻りながらも、それぞれがお茶を口に運ぶ。そして...

「ブッホォォォッ!」

 ララが盛大にお茶を吹き出した。その飛沫は対面に座っていた三人娘に振り掛かる。

「「「 ギィヤァァァッ! 」」」

 お茶会は阿鼻叫喚の場となった。

 ざまぁ!
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