嘘吐きな妹と彼の病弱な義妹そして腹黒い幼馴染みに悪役令嬢と呼ばれる私、実は心の声が聞こえる聖女です

真理亜

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 今日、私は神殿に来ている。

 聖女として神に祈りを捧げ務めを果たすためだ。

「これはこれは聖女様、ようこそお越し下さいました」

 大司教が出迎えてくれる。私はこの男が大嫌いだった。聖職者らしからぬでっぷりと太った醜い体型に、嫌らしい笑みを浮かべる油ぎった顔。心の声を聞くまでもなく、ロクでもない男だと分かるようなものだ。

 聞きたくなかったのだが、心の声が聞こえてしまう。

『フンッ! 今日も澄ましてお高く止まりやがって! お前のみたいな小娘に謙るなんて儂のプライドが許さんが、今だけは妥協しといてやる! あぁ、こんな色気の無い小娘よりも、今日参拝に訪れた信者の女の方がよっぽどいい! 小娘の相手は適当にやっといて、早いところ部屋に戻ってあの女を抱くとするか! グヘヘヘッ♪ 聖職者ってのは全くもって美味しい仕事よなぁ! バカな信者どもを騙して金を巻き上げたり、女の股を開かせるなんて簡単なことよ! ちょっと囁くだけでいいんだからな!「あなたに悪魔が忍び寄っています。浄化するには浄財を寄付するのと、聖職者たる私と交わることが必要となります」これだけでコロッと騙されてくれるんだからな! ウポポポッ♪ 聖職者最高~♪』 

 こいつホントにクズだな! こんなヤツが聖職者を名乗るなんて許せない! 聖職者ならぬ性職者じゃないか!

 私は鉄槌を下すことにした。


◇◇◇


「大司教様、折り入ってご相談したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」

「私でよろしければ。では私の部屋で伺いましょう」

 心の声は、

『チッ! 面倒くせぇな! もうすぐ信者の女と約束してる時間だってのに! 適当に遇ってさっさと帰すとするか...』

 こんな男と部屋で二人っきりになんてなりたくないが、ここは我慢だ。私は部屋に入る際、ドアをちょっとだけ開けておく。

「それでご相談とはなんでこざいましょうか?」

「実は...信者の主に若い女性の方々から相談されたんですが、神殿の聖職者と名乗る者からお布施を強要されたり、体を要求されたりすることがあるらしいのです...これは由々しき事態だとは思われませんか?」

「せ、聖女様の仰る通り、せ、聖職者を騙るなど、け、決してあ、あってはな、ならないことですな...」

 大司教の顔から滝のような汗が流れている。その時だった。部屋の奥のドアが開いて、バスタオル一枚巻いただけのほぼ全裸の若い女が現れた。 

「あ、あの...大司教様...まだでしょうか?」

 大司教は顔が真っ青になった。

「大司教様! これはどういうことですか!」

 私はおもいっきり声を張り上げた。部屋の外まで聞こえるように。なぜならこの時間にこの場所を通るのは...

「聖女様! 何事ですか!?」

「あぁっ! 教皇様! 聞いて下さい!」

 そう、神殿のTOPである教皇様だ。大司教の顔色は青を通り越して白くなっている。

 その後の調べで、大司教は信者の女とただならぬ関係にあったのみならず、信者からのお布施を自分の懐に入れていたことも判明し、罰として鉱山労働を言い渡されたとのこと。

 ざまぁ!
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