9 / 83
9
しおりを挟む
今日、私は神殿に来ている。
聖女として神に祈りを捧げ務めを果たすためだ。
「これはこれは聖女様、ようこそお越し下さいました」
大司教が出迎えてくれる。私はこの男が大嫌いだった。聖職者らしからぬでっぷりと太った醜い体型に、嫌らしい笑みを浮かべる油ぎった顔。心の声を聞くまでもなく、ロクでもない男だと分かるようなものだ。
聞きたくなかったのだが、心の声が聞こえてしまう。
『フンッ! 今日も澄ましてお高く止まりやがって! お前のみたいな小娘に謙るなんて儂のプライドが許さんが、今だけは妥協しといてやる! あぁ、こんな色気の無い小娘よりも、今日参拝に訪れた信者の女の方がよっぽどいい! 小娘の相手は適当にやっといて、早いところ部屋に戻ってあの女を抱くとするか! グヘヘヘッ♪ 聖職者ってのは全くもって美味しい仕事よなぁ! バカな信者どもを騙して金を巻き上げたり、女の股を開かせるなんて簡単なことよ! ちょっと囁くだけでいいんだからな!「あなたに悪魔が忍び寄っています。浄化するには浄財を寄付するのと、聖職者たる私と交わることが必要となります」これだけでコロッと騙されてくれるんだからな! ウポポポッ♪ 聖職者最高~♪』
こいつホントにクズだな! こんなヤツが聖職者を名乗るなんて許せない! 聖職者ならぬ性職者じゃないか!
私は鉄槌を下すことにした。
◇◇◇
「大司教様、折り入ってご相談したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「私でよろしければ。では私の部屋で伺いましょう」
心の声は、
『チッ! 面倒くせぇな! もうすぐ信者の女と約束してる時間だってのに! 適当に遇ってさっさと帰すとするか...』
こんな男と部屋で二人っきりになんてなりたくないが、ここは我慢だ。私は部屋に入る際、ドアをちょっとだけ開けておく。
「それでご相談とはなんでこざいましょうか?」
「実は...信者の主に若い女性の方々から相談されたんですが、神殿の聖職者と名乗る者からお布施を強要されたり、体を要求されたりすることがあるらしいのです...これは由々しき事態だとは思われませんか?」
「せ、聖女様の仰る通り、せ、聖職者を騙るなど、け、決してあ、あってはな、ならないことですな...」
大司教の顔から滝のような汗が流れている。その時だった。部屋の奥のドアが開いて、バスタオル一枚巻いただけのほぼ全裸の若い女が現れた。
「あ、あの...大司教様...まだでしょうか?」
大司教は顔が真っ青になった。
「大司教様! これはどういうことですか!」
私はおもいっきり声を張り上げた。部屋の外まで聞こえるように。なぜならこの時間にこの場所を通るのは...
「聖女様! 何事ですか!?」
「あぁっ! 教皇様! 聞いて下さい!」
そう、神殿のTOPである教皇様だ。大司教の顔色は青を通り越して白くなっている。
その後の調べで、大司教は信者の女とただならぬ関係にあったのみならず、信者からのお布施を自分の懐に入れていたことも判明し、罰として鉱山労働を言い渡されたとのこと。
ざまぁ!
聖女として神に祈りを捧げ務めを果たすためだ。
「これはこれは聖女様、ようこそお越し下さいました」
大司教が出迎えてくれる。私はこの男が大嫌いだった。聖職者らしからぬでっぷりと太った醜い体型に、嫌らしい笑みを浮かべる油ぎった顔。心の声を聞くまでもなく、ロクでもない男だと分かるようなものだ。
聞きたくなかったのだが、心の声が聞こえてしまう。
『フンッ! 今日も澄ましてお高く止まりやがって! お前のみたいな小娘に謙るなんて儂のプライドが許さんが、今だけは妥協しといてやる! あぁ、こんな色気の無い小娘よりも、今日参拝に訪れた信者の女の方がよっぽどいい! 小娘の相手は適当にやっといて、早いところ部屋に戻ってあの女を抱くとするか! グヘヘヘッ♪ 聖職者ってのは全くもって美味しい仕事よなぁ! バカな信者どもを騙して金を巻き上げたり、女の股を開かせるなんて簡単なことよ! ちょっと囁くだけでいいんだからな!「あなたに悪魔が忍び寄っています。浄化するには浄財を寄付するのと、聖職者たる私と交わることが必要となります」これだけでコロッと騙されてくれるんだからな! ウポポポッ♪ 聖職者最高~♪』
こいつホントにクズだな! こんなヤツが聖職者を名乗るなんて許せない! 聖職者ならぬ性職者じゃないか!
私は鉄槌を下すことにした。
◇◇◇
「大司教様、折り入ってご相談したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「私でよろしければ。では私の部屋で伺いましょう」
心の声は、
『チッ! 面倒くせぇな! もうすぐ信者の女と約束してる時間だってのに! 適当に遇ってさっさと帰すとするか...』
こんな男と部屋で二人っきりになんてなりたくないが、ここは我慢だ。私は部屋に入る際、ドアをちょっとだけ開けておく。
「それでご相談とはなんでこざいましょうか?」
「実は...信者の主に若い女性の方々から相談されたんですが、神殿の聖職者と名乗る者からお布施を強要されたり、体を要求されたりすることがあるらしいのです...これは由々しき事態だとは思われませんか?」
「せ、聖女様の仰る通り、せ、聖職者を騙るなど、け、決してあ、あってはな、ならないことですな...」
大司教の顔から滝のような汗が流れている。その時だった。部屋の奥のドアが開いて、バスタオル一枚巻いただけのほぼ全裸の若い女が現れた。
「あ、あの...大司教様...まだでしょうか?」
大司教は顔が真っ青になった。
「大司教様! これはどういうことですか!」
私はおもいっきり声を張り上げた。部屋の外まで聞こえるように。なぜならこの時間にこの場所を通るのは...
「聖女様! 何事ですか!?」
「あぁっ! 教皇様! 聞いて下さい!」
そう、神殿のTOPである教皇様だ。大司教の顔色は青を通り越して白くなっている。
その後の調べで、大司教は信者の女とただならぬ関係にあったのみならず、信者からのお布施を自分の懐に入れていたことも判明し、罰として鉱山労働を言い渡されたとのこと。
ざまぁ!
11
お気に入りに追加
1,745
あなたにおすすめの小説
【完結】「私は善意に殺された」
まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。
誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。
私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。
だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。
どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿中。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!


絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
婚約破棄された聖女は、愛する恋人との思い出を消すことにした。
石河 翠
恋愛
婚約者である王太子に興味がないと評判の聖女ダナは、冷たい女との結婚は無理だと婚約破棄されてしまう。国外追放となった彼女を助けたのは、美貌の魔術師サリバンだった。
やがて恋人同士になった二人。ある夜、改まったサリバンに呼び出され求婚かと期待したが、彼はダナに自分の願いを叶えてほしいと言ってきた。彼は、ダナが大事な思い出と引き換えに願いを叶えることができる聖女だと知っていたのだ。
失望したダナは思い出を捨てるためにサリバンの願いを叶えることにする。ところがサリバンの願いの内容を知った彼女は彼を幸せにするため賭けに出る。
愛するひとの幸せを願ったヒロインと、世界の平和を願ったヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:4463267)をお借りしています。

もう一度7歳からやりなおし!王太子妃にはなりません
片桐葵
恋愛
いわゆる悪役令嬢・セシルは19歳で死亡した。
皇太子のユリウス殿下の婚約者で高慢で尊大に振る舞い、義理の妹アリシアとユリウスの恋愛に嫉妬し最終的に殺害しようとした罪で断罪され、修道院送りとなった末の死亡だった。しかし死んだ後に女神が現れ7歳からやり直せるようにしてくれた。
もう一度7歳から人生をやり直せる事になったセシル。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる