上 下
102 / 176

第102話 ちみっことドワーフの村 その4

しおりを挟む
「アリシア、あんたの馬鹿力の出番だよ!」

「馬鹿っていうな...何させる気?」

「亀の弱点を突くんだよ!」

「弱点って...あぁっ! そういうこと!?」

 うんうん、理解が早くて助かるよ! アタシは他のみんなに呼び掛ける。

「みんな~! 今からアリシアが亀をひっくり返すから~! そしたら攻撃してね~!」

 ん? みんなの頭にクエスチョンマークが!?

「ミナミナ、この世界の人達は亀のこと良く知らないんじゃ?」

 アリシアがアタシの耳元で囁く。

「あぁっ! そういうことか!」

 思わず日本に居た頃の感覚で話してたよ。

「亀の弱点はひっくり返したお腹の部分だから! その部分は柔らかいから! 攻撃は通るはずだから! それと亀はひっくり返されたら自力では起き上がれないから!」

 アタシがそう言うと「えっ!? そうなの!?」「知らなかった」「亀のお腹ってどこ?」などなど、確かに初耳だったみたいだね。

「じゃあ、アリシア! やっちゃって!」

「どっこいしょ~!」

 うん、さすがの馬鹿力。あの亀の巨体が仰向けになったよ。短い足をバタバタさせているけど、自重で地面にめり込んでるんでどうしようもないよね。でもアリシア、どっこいしょって...それでいいのか? 女子高生...

 その後はみんなでめっちゃボコった。

 うん、もうね、愛用の武器を破壊された恨みってヤツ? しばらくすると亀の体が光り出した。そして光りが収まった後には亀の巨体は消えてて、その代わりにあったのは...

「なんだこれ!? 魔石!?」

 レッドドラゴンを倒した時と同じ...いや、あの時よりもっと大きな真っ黒い魔石! ? が残されていた。  


◇◇◇


「これって魔石...なんだよな?」

 殿下がコンコンと叩いている。見るからに硬そうだ。

「だと思いますが...アリシア、ちょっと持ち上げてみてくれる?」

「よいしょ~! ってさすがに私でも結構重いわ...」

「だよね。地面にめり込んでるくらいだもん」

 それでもなんとか持ち上げてるアリシアも凄いけど。

「どうします? 一応、持って帰りますか?」

「う~ん...どうしたもんかな...アリシア、馬車で運べると思うか?」

「この重さだと難しいと思います。馬車が進まないと思いますし...その前に、載せただけで馬車の底が抜けるんじゃないでしょうか?」

「そうか...気にはなるが置いて行くしかないか...亀討伐の証拠なんだがな...」

 その時、ナギが水竜サイズになって側に寄って来た。

「キュイキュイ!」

「えっ!? ナギが運んでくれるの!?」
 
「キュイ~♪」

「ナギ、大丈夫なのか!? 相当な重さみたいだぞ!?」

「キュイ~!」

「大丈夫って言ってます」

「そうか...それじゃあ、アリシア。ナギの背中に載せてくれるか?」

「分かりました。じゃあナギちゃん、行くよ~!」

「キュイ!」

 アリシアがナギの背中に魔石擬きを載せた。すると驚いたことに、ナギの背中が少し沈んで、魔石擬きをしっかりとホールドした。確かにこれなら大丈夫そうだ。
 
「ナギ、このまま王都まで運んでくれる?」

「キュイ~♪」

「殿下、私はナギと一緒に先に戻ります。後はお任せしてもいいですか?」 

「任せろ。冒険者ギルドで会おう」

 こうして私達は亀を討伐し、魔石擬きを持ち帰ることにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生幼女が魔法無双で素材を集めて物作り&ほのぼの天気予報ライフ 「あたし『お天気キャスター』になるの! 願ったのは『大魔術師』じゃないの!」

なつきコイン
ファンタジー
転生者の幼女レイニィは、女神から現代知識を異世界に広めることの引き換えに、なりたかった『お天気キャスター』になるため、加護と仮職(プレジョブ)を授かった。 授かった加護は、前世の記憶(異世界)、魔力無限、自己再生 そして、仮職(プレジョブ)は『大魔術師(仮)』 仮職が『お天気キャスター』でなかったことにショックを受けるが、まだ仮職だ。『お天気キャスター』の職を得るため、努力を重ねることにした。 魔術の勉強や試練の達成、同時に気象観測もしようとしたが、この世界、肝心の観測器具が温度計すらなかった。なければどうする。作るしかないでしょう。 常識外れの魔法を駆使し、蟻の化け物やスライムを狩り、素材を集めて観測器具を作っていく。 ほのぼの家族と周りのみんなに助けられ、レイニィは『お天気キャスター』目指して、今日も頑張る。時々は頑張り過ぎちゃうけど、それはご愛敬だ。 カクヨム、小説家になろう、ノベルアップ+、Novelism、ノベルバ、アルファポリス、に公開中 タイトルを 「転生したって、あたし『お天気キャスター』になるの! そう女神様にお願いしたのに、なぜ『大魔術師(仮)』?!」 から変更しました。

乙女ゲームに転生した世界でメイドやってます!毎日大変ですが、瓶底メガネ片手に邁進します!

美月一乃
恋愛
 前世で大好きなゲームの世界?に転生した自分の立ち位置はモブ! でも、自分の人生満喫をと仕事を初めたら  偶然にも大好きなライバルキャラに仕えていますが、毎日がちょっと、いえすっごい大変です!  瓶底メガネと縄を片手に、メイド服で邁進してます。    「ちがいますよ、これは邁進してちゃダメな奴なのにー」  と思いながら

悪役令嬢に転生したのに、三巡目からヒロインフラグが立ちました

いく
ファンタジー
自分がやったことのある乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまったナディアは、二巡目を終えるころにはすっかりと自分が悪役令嬢であることに慣れてしまっていた。けれど、三巡目。いつもと違うターンが始まり、ただの令嬢としての生活がスタートして……

こちらの世界でも図太く生きていきます

柚子ライム
ファンタジー
銀座を歩いていたら異世界に!? 若返って異世界デビュー。 がんばって生きていこうと思います。 のんびり更新になる予定。 気長にお付き合いいただけると幸いです。 ★加筆修正中★ なろう様にも掲載しています。

異世界に転生したら転生特典が言語マスターだったので、通訳になろうと思います

真理亜
恋愛
私の名はアビー。転生者だ。私が転生した世界に魔法はなく、代わりにスキルが存在していた。神からの贈り物、ギフトとも呼ばれるその能力は様々な特殊効果を発揮するが、私のギフトは言語マスターというこの世界に存在する全ての言語を理解するという能力だった。その能力を買われて王宮勤めとなる。やがて王太子付きとなり諸外国との外交に駆り出されるようになったり、養子先の家のゴタゴタに巻き込まれたり、とにかく大変な日々を過ごすことになるが、言語マスターの能力を活かしてなんとか乗り越えていく。

私、のんびり暮らしたいんです!

クロウ
ファンタジー
神様の手違いで死んだ少女は、異世界のとある村で転生した。 神様から貰ったスキルで今世はのんびりと過ごすんだ! しかし番を探しに訪れた第2王子に、番認定をされて……。

転生したアラサーオタク女子はチートなPCと通販で異世界でもオタ活します!

ねこ専
ファンタジー
【序盤は説明が多いので進みがゆっくりです】 ※プロローグを読むのがめんどくさい人は飛ばしてもらっても大丈夫です。 テンプレ展開でチートをもらって異世界に転生したアラサーオタクOLのリリー。 現代日本と全然違う環境の異世界だからオタ活なんて出来ないと思いきや、神様にもらったチートな「異世界PC」のおかげでオタ活し放題! 日本の商品は通販で買えるし、インターネットでアニメも漫画も見られる…! 彼女は異世界で金髪青目の美少女に生まれ変わり、最高なオタ活を満喫するのであった。 そんなリリーの布教?のかいあって、異世界には日本の商品とオタク文化が広まっていくとかいかないとか…。 ※初投稿なので優しい目で見て下さい。 ※序盤は説明多めなのでオタ活は後からです。 ※誤字脱字の報告大歓迎です。 まったり更新していけたらと思います!

小さいぼくは最強魔術師一族!目指せ!もふもふスローライフ!

ひより のどか
ファンタジー
ねぇたまと、妹と、もふもふな家族と幸せに暮らしていたフィリー。そんな日常が崩れ去った。 一見、まだ小さな子どもたち。実は国が支配したがる程の大きな力を持っていて? 主人公フィリーは、実は違う世界で生きた記憶を持っていて?前世の記憶を活かして魔法の世界で代活躍? 「ねぇたまたちは、ぼくがまもりゅのら!」 『わふっ』 もふもふな家族も一緒にたくましく楽しく生きてくぞ!

処理中です...