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第30話 ちみっこと夏休み その10
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洞窟に入った瞬間、妙な違和感を覚えた。
何やら不穏な雰囲気というか気配というか、そんな気持ち悪さを肌で感じた。
「ねぇ、上手く言えないんだけど...この洞窟なんか変じゃない?」
アタシだけじゃなく、アリシアもそう感じたみたいだ。不気味な気配は洞窟の奥の方から漂って来るように感じる。慎重に歩を進めるよう、全員に指示した。
「みんな、アリシアの言う通り、なんだか嫌な予感がする。油断しないでゆっくり進もう。アリシアとエリオットが先頭、私とシルベスターが後に続いて、殿はマリーね。じゃあ行くよ」
「「「「 応っ! 」」」」
洞窟の中は狭い。二人並んで通るのがやっとだ。オマケに湿度が高い。地面は滑り易く、結露した水が天井から滴り落ちて来る。まるで鍾乳洞みたいだ。
灯りは精霊達が照らしてくれるから問題無いとして、この隊列で敵と遭遇するのはマズい。なんとか少しでも広い場所に辿り着けるといいんだけど。
歩き始めてしばらく経った頃だった。
「うわっと!」
何かに躓いて転びそうになった。なんだろうと思って視線を下に向けると、
「お嬢様っ!」
切羽詰まったようなマリーの叫びが聞こえた。既にレイピアを抜いてる。
アタシの足は地面から生えた青白い腕に絡み取られていた!
「ヒィィィッッッ!」
さすがに情けない悲鳴を上げてしまったのは勘弁して貰いたい。そのくらいビックリした。
「ハァァァッ! ヤァァァッ!」
マリーがアタシの足に絡み着いた腕を斬り飛ばして解放してくれたが、
「いやぁ~! なによこれ~!」
「くそっ! 離せっ!」
「ひぇぇぇっ! お助け~!」
マリーを除く全員が絡め取られた! 地面からは無数の腕が生えてくる! しかも下からだけじゃなく、左右両サイドの壁からも無数の腕が伸びてきた!
「くっ! お嬢様っ!」
マリーも捕まった! マズい! これじゃ全員拘束される! ついにアタシも下と左右からの腕に絡み取られてしまった! パニックになる! 湿った腕が気持ち悪い!
うん?...湿ってる?
「エリオット~! 全て凍らせて~!」
アタシは拘束されながらも力の限り叫んだ!
『アイスロード!』
次の瞬間、アタシ達を拘束していた腕も地面も壁も全て凍り付いた!
当然、アタシ達にもダメージはあったが、それは後で治せば良い。アタシ達は絡み着かれている凍った青白い腕を叩き割り、やっと自由を取り戻した。
「みんな、急いでここを離れよう! 足元滑るから気を付けて!」
◇◇◇
先に進むと少しだけ広い空間が広がっていた。
「ハァハァ...ここで少し休憩しましょう。みんな、怪我は無い?」
「フゥ...私は平気。それにしてもなんなのアレ? 気持ち悪かった~!」
「僕は元々耐性があるから問題無い。そもそも自分で放った魔法だしな。それでダメージ受けてたんじゃシャレにならない」
「こ、怖かったよ~!」
「問題有りません」
約1名、単なる感想になってるが、怪我は無いようなので良しとしよう。
一息入れたところでみんなに確認する。
「さて、これからなんだけど、どうする? このまま先に進む? それとも一旦引いて体勢を立て直す?」
すると全員一致で「先へ進む」になった。まぁ、確かに戻るとあの不気味な腕地獄が待ってるからねぇ。気持ちは分からんでもない。想定外なことはあったけど、取り敢えず先に進もうか。
進むにつれ道は次第に狭くなり、ついに一人ずつしか通れなくなった。あの腕地獄の恐怖が蘇る。この狭さはヤバいと判断したアタシは一計を案じる。
「みんな、ちょっと離れてて」
両手を伸ばし壁の両側に手を着いたあと、呪文を唱える。
『ウォールエリア』
すると壁の両側及び地面に薄い土の膜が広がる。
「地面と壁をコーティングしたから。これであの気持ち悪い腕は生えて来ないよ」
「「「「 おぉ~! 」」」」
みんなから感嘆の声が上がる。いやぁ、それ程でも~
細い道を何事もなく進むと、やがて前方に大きな鉄の扉が見えてきた。
「これってやっぱり...」
「「「「 ボス部屋! 」」」」
「だよね...」
◇◇◇
「開けるよ?」
「「「「 応っ! 」」」」
ギギギッと軋む音を立てながら扉が開く。部屋の中は意外なことに明るかった。天井や壁が淡く光っている。大きさは30m四方くらいだろうか。
バタンッ!
音に振り返ると扉が閉まっていた。嫌な感じがする。と、その時、前方からいきなり火球が飛んで来た! 魔法攻撃!? アタシは咄嗟に前に出てガードする!
次の瞬間、周り中の地面がボコボコと盛り上がり、アンデッドが集団で現れた。ゾンビやグール、マミーやスケルトン、などに周りを囲まれてしまった!
モンスターハウス!?
ダンジョンによくあるギミックで、複数のモンスターが同時に出現する。全てのモンスターを倒さないと扉が開くことはない。これに引っ掛かってパーティーが全滅するという話を良く聞く。
てっきりボス部屋だとばかり思っていたのにモンスターハウスだった!? いやしかし、さっきの魔法攻撃は一体? アンデッドは魔法なんて使えないはず。
その答えは部屋の奥の方から近付いて来た存在によって明らかになった。魔道士が着るようなフード付きのローブを身に纏い、手には真っ黒な杖を握っている。フードから覗く顔は骸骨そのままで、落ち窪んだ眼窩は赤く怪しげに光っている。
「リッチ...」
それは強力な魔法使いの成れの果て。知性を持たないアンデッドとは異なり、高い知能と魔術の技能を持ち合わせている強敵だ。アタシはみんなに指示を飛ばす!
「私がリッチの攻撃をガードする! アリシアは右側の敵を倒して!」
「任せてっ!」
「エリオットは左側を!」
「応っ!」
「マリーは後ろを!」
「はいっ!」
「シルベスター、リッチを攻撃して!」
「わ、分かった!」
リッチの強力な魔法攻撃が飛んで来る! 火、水、風、土、全ての属性で攻撃が可能なようだ。アタシは必死でガードする! 一撃一撃が重い!
『正拳五段突き!』
『刺突三連撃!』
『アイスマシンガン!』
みんなそれぞれ複数の敵と向かい合ってる! アタシも負けられない!
「ミナっ! ダメだ! リッチの魔法防御が高過ぎる!」
シルベスターが舌打ちする。魔法攻撃が効かないみたいだ。魔法防御が高いのは魔道士だからか。魔法で倒せないなら!
「アリシア、シルベスター、位置をシフトする! 私の合図で動いて! シルベスターはリッチの攻撃をガード、アリシアはリッチを物理で攻撃、私は右側の敵をガードする! 良い!?」
「「 了解っ!」」
アタシはリッチの攻撃パターンを慎重に見極める! 土から火の攻撃に移る時、僅かだけどタイムラグがある!
「用意して! 3、2、1、今っ! シフトっ!」
相手を素早く入れ替える! シルベスターとアタシが敵の攻撃をガードする! アリシアがリッチに向かう!
「ウォリァァァッッッ!!!」
アリシアが一気にリッチへと肉薄する! リッチは慌てて杖でガードしようとするが間に合わない! アリシアの攻撃が炸裂した!
「グォォォッッッ!」
良しっ! リッチを倒した! やっぱり魔道士は物理攻撃に弱い!
「みんな! 親玉は倒した! あとは雑魚だけだよ!」
「「「「 応っ! 」」」」
それから間も無くモンスターハウスは終了した。
◇◇◇
「みんな、お疲れ様~ 怪我してない?」
「お疲れ様。僕はなんともない」
「つ、疲れた...あ、ボクも大丈夫」
「お疲れ様でした。私も平気でございます」
「良かったよ~ あれ? アリシアは?」
アタシはみんなの無事を労いながらアリシアを捜す。すると部屋の奥の方からアリシアがひょっこり現れた。何か手に持ってる。
「ミナ~! 見てこれ!」
「それなに?」
「リッチが使ってた杖だよ! ミナにあげる!」
「要らないよ、そんなの! どう見ても呪われてるじゃん!」
「え~? そうかな~?」
「だって杖の先見てみなよ、骸骨だよ骸骨!」
「う~ん、でも初めてのモンスタードロップ品だよ? 記念にはなるじゃん?」
「記念ってあんた...まぁ、いいか、取り敢えずギルドで鑑定して貰おう...」
「そうしよ~!」
こうして波乱に満ちた冒険者としての初任務が終わった。
何やら不穏な雰囲気というか気配というか、そんな気持ち悪さを肌で感じた。
「ねぇ、上手く言えないんだけど...この洞窟なんか変じゃない?」
アタシだけじゃなく、アリシアもそう感じたみたいだ。不気味な気配は洞窟の奥の方から漂って来るように感じる。慎重に歩を進めるよう、全員に指示した。
「みんな、アリシアの言う通り、なんだか嫌な予感がする。油断しないでゆっくり進もう。アリシアとエリオットが先頭、私とシルベスターが後に続いて、殿はマリーね。じゃあ行くよ」
「「「「 応っ! 」」」」
洞窟の中は狭い。二人並んで通るのがやっとだ。オマケに湿度が高い。地面は滑り易く、結露した水が天井から滴り落ちて来る。まるで鍾乳洞みたいだ。
灯りは精霊達が照らしてくれるから問題無いとして、この隊列で敵と遭遇するのはマズい。なんとか少しでも広い場所に辿り着けるといいんだけど。
歩き始めてしばらく経った頃だった。
「うわっと!」
何かに躓いて転びそうになった。なんだろうと思って視線を下に向けると、
「お嬢様っ!」
切羽詰まったようなマリーの叫びが聞こえた。既にレイピアを抜いてる。
アタシの足は地面から生えた青白い腕に絡み取られていた!
「ヒィィィッッッ!」
さすがに情けない悲鳴を上げてしまったのは勘弁して貰いたい。そのくらいビックリした。
「ハァァァッ! ヤァァァッ!」
マリーがアタシの足に絡み着いた腕を斬り飛ばして解放してくれたが、
「いやぁ~! なによこれ~!」
「くそっ! 離せっ!」
「ひぇぇぇっ! お助け~!」
マリーを除く全員が絡め取られた! 地面からは無数の腕が生えてくる! しかも下からだけじゃなく、左右両サイドの壁からも無数の腕が伸びてきた!
「くっ! お嬢様っ!」
マリーも捕まった! マズい! これじゃ全員拘束される! ついにアタシも下と左右からの腕に絡み取られてしまった! パニックになる! 湿った腕が気持ち悪い!
うん?...湿ってる?
「エリオット~! 全て凍らせて~!」
アタシは拘束されながらも力の限り叫んだ!
『アイスロード!』
次の瞬間、アタシ達を拘束していた腕も地面も壁も全て凍り付いた!
当然、アタシ達にもダメージはあったが、それは後で治せば良い。アタシ達は絡み着かれている凍った青白い腕を叩き割り、やっと自由を取り戻した。
「みんな、急いでここを離れよう! 足元滑るから気を付けて!」
◇◇◇
先に進むと少しだけ広い空間が広がっていた。
「ハァハァ...ここで少し休憩しましょう。みんな、怪我は無い?」
「フゥ...私は平気。それにしてもなんなのアレ? 気持ち悪かった~!」
「僕は元々耐性があるから問題無い。そもそも自分で放った魔法だしな。それでダメージ受けてたんじゃシャレにならない」
「こ、怖かったよ~!」
「問題有りません」
約1名、単なる感想になってるが、怪我は無いようなので良しとしよう。
一息入れたところでみんなに確認する。
「さて、これからなんだけど、どうする? このまま先に進む? それとも一旦引いて体勢を立て直す?」
すると全員一致で「先へ進む」になった。まぁ、確かに戻るとあの不気味な腕地獄が待ってるからねぇ。気持ちは分からんでもない。想定外なことはあったけど、取り敢えず先に進もうか。
進むにつれ道は次第に狭くなり、ついに一人ずつしか通れなくなった。あの腕地獄の恐怖が蘇る。この狭さはヤバいと判断したアタシは一計を案じる。
「みんな、ちょっと離れてて」
両手を伸ばし壁の両側に手を着いたあと、呪文を唱える。
『ウォールエリア』
すると壁の両側及び地面に薄い土の膜が広がる。
「地面と壁をコーティングしたから。これであの気持ち悪い腕は生えて来ないよ」
「「「「 おぉ~! 」」」」
みんなから感嘆の声が上がる。いやぁ、それ程でも~
細い道を何事もなく進むと、やがて前方に大きな鉄の扉が見えてきた。
「これってやっぱり...」
「「「「 ボス部屋! 」」」」
「だよね...」
◇◇◇
「開けるよ?」
「「「「 応っ! 」」」」
ギギギッと軋む音を立てながら扉が開く。部屋の中は意外なことに明るかった。天井や壁が淡く光っている。大きさは30m四方くらいだろうか。
バタンッ!
音に振り返ると扉が閉まっていた。嫌な感じがする。と、その時、前方からいきなり火球が飛んで来た! 魔法攻撃!? アタシは咄嗟に前に出てガードする!
次の瞬間、周り中の地面がボコボコと盛り上がり、アンデッドが集団で現れた。ゾンビやグール、マミーやスケルトン、などに周りを囲まれてしまった!
モンスターハウス!?
ダンジョンによくあるギミックで、複数のモンスターが同時に出現する。全てのモンスターを倒さないと扉が開くことはない。これに引っ掛かってパーティーが全滅するという話を良く聞く。
てっきりボス部屋だとばかり思っていたのにモンスターハウスだった!? いやしかし、さっきの魔法攻撃は一体? アンデッドは魔法なんて使えないはず。
その答えは部屋の奥の方から近付いて来た存在によって明らかになった。魔道士が着るようなフード付きのローブを身に纏い、手には真っ黒な杖を握っている。フードから覗く顔は骸骨そのままで、落ち窪んだ眼窩は赤く怪しげに光っている。
「リッチ...」
それは強力な魔法使いの成れの果て。知性を持たないアンデッドとは異なり、高い知能と魔術の技能を持ち合わせている強敵だ。アタシはみんなに指示を飛ばす!
「私がリッチの攻撃をガードする! アリシアは右側の敵を倒して!」
「任せてっ!」
「エリオットは左側を!」
「応っ!」
「マリーは後ろを!」
「はいっ!」
「シルベスター、リッチを攻撃して!」
「わ、分かった!」
リッチの強力な魔法攻撃が飛んで来る! 火、水、風、土、全ての属性で攻撃が可能なようだ。アタシは必死でガードする! 一撃一撃が重い!
『正拳五段突き!』
『刺突三連撃!』
『アイスマシンガン!』
みんなそれぞれ複数の敵と向かい合ってる! アタシも負けられない!
「ミナっ! ダメだ! リッチの魔法防御が高過ぎる!」
シルベスターが舌打ちする。魔法攻撃が効かないみたいだ。魔法防御が高いのは魔道士だからか。魔法で倒せないなら!
「アリシア、シルベスター、位置をシフトする! 私の合図で動いて! シルベスターはリッチの攻撃をガード、アリシアはリッチを物理で攻撃、私は右側の敵をガードする! 良い!?」
「「 了解っ!」」
アタシはリッチの攻撃パターンを慎重に見極める! 土から火の攻撃に移る時、僅かだけどタイムラグがある!
「用意して! 3、2、1、今っ! シフトっ!」
相手を素早く入れ替える! シルベスターとアタシが敵の攻撃をガードする! アリシアがリッチに向かう!
「ウォリァァァッッッ!!!」
アリシアが一気にリッチへと肉薄する! リッチは慌てて杖でガードしようとするが間に合わない! アリシアの攻撃が炸裂した!
「グォォォッッッ!」
良しっ! リッチを倒した! やっぱり魔道士は物理攻撃に弱い!
「みんな! 親玉は倒した! あとは雑魚だけだよ!」
「「「「 応っ! 」」」」
それから間も無くモンスターハウスは終了した。
◇◇◇
「みんな、お疲れ様~ 怪我してない?」
「お疲れ様。僕はなんともない」
「つ、疲れた...あ、ボクも大丈夫」
「お疲れ様でした。私も平気でございます」
「良かったよ~ あれ? アリシアは?」
アタシはみんなの無事を労いながらアリシアを捜す。すると部屋の奥の方からアリシアがひょっこり現れた。何か手に持ってる。
「ミナ~! 見てこれ!」
「それなに?」
「リッチが使ってた杖だよ! ミナにあげる!」
「要らないよ、そんなの! どう見ても呪われてるじゃん!」
「え~? そうかな~?」
「だって杖の先見てみなよ、骸骨だよ骸骨!」
「う~ん、でも初めてのモンスタードロップ品だよ? 記念にはなるじゃん?」
「記念ってあんた...まぁ、いいか、取り敢えずギルドで鑑定して貰おう...」
「そうしよ~!」
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