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第7話 ちみっこと校外学習 その1
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あれから一ヶ月が経った。
アタシは相変わらず毎日、お昼になるとバカップルに拉致されている。もう抵抗すんの諦めたよ...
ただ一点、変わった所がある。エリオットが一緒に付いて来るようになったことだ。最初、バカップルは嫌がってた。特にシャロン様は露骨に嫌な顔をしてた。けどそれにめげずに何度もエリオットが付いて来るので仕舞いには折れたようだ。
てな訳で今は四人でテーブルを囲んでる。見ようによっては2対2のカップル同士に見えなくもないが、アタシは相変わらずシャロン様の膝上に乗ってるから色々と台無しだ。
最初にその光景を目にしたエリオットはさすがに目を白黒させていたもんだが、人間慣れって怖いね。今では普通に受け入れてんだもん。
あぁ、そう言えばアタシとエリオットがお互いを「エリオット」「ミナ」って呼び合ってるのを最初に聞いた時のバカップルの反応は凄かったっけな~
「お、お前らまさか付き合ってるのか!? 許さんっ! パパは許さんぞっ!」
「なんてことなのっ! ママはそんな子に育てた覚えありませんよっ!」
いやお前らいつからアタシのオトンとオカンになったんだよ!? それに付き合ってねーし! 勝手に妄想膨らますな! ったく、誤解を解くの大変だったよ...それとエリオット、満更でもないって顔してないでお前もちゃんと否定しろよ!
その後も「俺のこともアルと呼べ」だの「シャロンと呼び捨てにして」だの五月蝿いったらない。アタシが「将来、国王国母になられるかも知れないお二方にそんな失礼なこと言えません」って言ったら渋々ではあるが納得したみたいだ。間違ってないよね? まだ第一王子が立太子してないもん。
そんな日常を過ごしていたある日、シルベスターが停学明けで学園に復学して来た。
朝イチでアタシのクラスにやって来たシルベスターは、なんだか少し痩せたみたいだ。すかさずエリオットがアタシの前に立って威嚇する。
「ミナ・バートレット嬢...本当に本当に申し訳ありませんでした...それと、あなたが厳罰を望まなかったお陰でボクはこの場に立って居られます...その事に心より感謝申し上げます...」
「...うん、もう二度としないでね」
いやもうなんかね、頭の上に犬耳が垂れているのが見えるくらい落ち込んでるのよ。こう言うしかないじゃん。これ以上追い詰めらんないって。だからエリオット、そんなに睨むな。
シルベスターは何度も「すみません、ありがとうございます」って頭を下げながら戻って行った。その後ろ姿に今度は尻尾まで丸まっているのが見えた気がした。
まあ元々、シルベスターをこのゲームから退場させる気は無かった。ヒロインがまだ入学していない今の状況なら尚更だ。主要キャラに抜けられては困るっていう打算的な意味もある。シルベスターの能力は頼りになるからね。心を入れ替えてくれたならそれでいい。
「ミナ、また来てるぞ」
エリオットに言われて振り返ると...居たよ。アタシと目が合うとサッと物陰に隠れるシルベスターが。休み時間になる度にアタシ達のクラスまでやって来る。声を掛けてきたりはせず、ただああやって見てるだけ。うん、ぶっちゃけ怖い。
これはアレなんだろうな、ワンコ系キャラからストーカーにジョブチェンジしたって訳じゃなく、某RPGみたいに「仲間に入りたそうにしている」んだろうけど。でもなぁ...アルベルト殿下の話だと今回の件、シャロン様が相当お怒りだったそうで、宥めるのが大変だったとか。
アタシの為に怒ってくれたんだからありがたい話ではあるんだけどさ、さすがに殴り込みとか勘弁してよね...てな訳でシルベスター、まだアタシに近付かないように...何かきっかけでもあればいいんだけどね~
◆◆◆
「それでは先日連絡した通り、今週末に行われる校外学習の為、五人一組の班を作っておくこと。今日の伝達は以上」
ホームルームで担任の教師がそう告げるとクラス中が騒がしくなる。二泊三日の校外学習。ゲームの時にこんなイベントは無かった。アタシもちょっと楽しみにしてる。こういうイベントがきっかけでシルベスターとも距離を縮められたらいいんだけどね。
アタシは仲の良いクラスメイトの女子四人と班を組んだ。エリオットが物欲しそうに見てるけど、同じ部屋に泊まるんだから同性同士に決まってる。そっちはそっちで男同士仲良くやんな。班になった者同士で旅の栞を広げる。どんな内容なのかワクワクするね!
景勝地『プレヤデス』という場所が舞台らしい。なんでも『精霊の森』と呼ばれる原生林と『スバル湖』というとってもキレイな湖があるんだって。ナニソレ聞いただけでも楽しそう!
しかもなんと移動に使うのは飛行船だっていうじゃない! 飛行船一度乗ってみたかったんだよね~! これだけでもテンション爆上がりだよ~! 早く週末来ないかな~
◆◆◆
やって来ました校外学習当日! 天気は快晴旅行日和! そしてアタシ達の目前には巨大な飛行船がっ! いや~ ホント壮観だよね~!
前世でいう所の「ツェッペリン型」っていうのかな? 全長は200mを軽く越えて、高さも50m以上あるんじゃない? 係留してる学園の校庭が狭く見えるくらいの大きさだよね~!
まぁもっとも、学年全員で生徒約120人、引率の教師やら使用人やら含めると200人近くになる訳だから、このくらいの大きさは必要なのかも。定員は300人なんだそうな。
あ、ちなみに飛行船の中身は水素でもヘリウムガスでもなく、風魔法の魔力で膨らましてんだってさ! いや~ このあたりはさすがファンタジーだね~ 爆発事故の危険性が無いっていいよね~
さぁ乗り込んでいざ出航~!『プレヤデス』まで約5時間くらい掛かるらしい。それまで空の旅を心ゆくまで楽しむぞ~!
一瞬だけフワッとした浮遊感みたいなのを感じた。と思ったら既に100mくらいの高さまで浮き上がってた! 凄い凄い! ナニコレナニコレ! 全然揺れないよ!
見渡すとアタシ達の居る展望デッキから360°の大パノラマが広がっていたっ! まさに絶景っ! アタシは大ハシャギで展望デッキを一周する。凄い凄い凄いっ~! あぁ写メ撮りたいっ! 動画に残したいっ! この感動を記録したい~!
アタシのテンションはMAXに振り切っていた。東を向けば遠くに海が見える。西を向けば険しい山並みが見える。南を向けば遠くに町や村が見える。北を向けば一面に平原が広がっている。
アタシは飽きることなく景色に見蕩れていた。とそこにシャロン様が現れた。
「あら、ミナさん。ここに居たんですのね」
「あぁ、シャロン様。えぇ、この絶景に見蕩れていました」
「確かに絶景ですわね~ これ見るだけで来た甲斐がありましたわ~」
「同感ですっ!」
アタシが力強く頷いていると、今度は殿下とエリオットがやって来た。
「よぉ、ここに居たのか」
「空の旅楽しんでる?」
「えぇ、とっても満喫してますっ!」
四人で笑い合った。すると殿下が、
「そういやミナ、知ってるか? これから行く『プレヤデス』は聖地って呼ばれてんだぞ?」
「えっ?...聖地ですか?...」
「あぁ、『精霊の森』があるって聞いただろ? 昔、そこに精霊王が住んでたっていう伝説があるんだよ」
「それ、僕も聞いたことあります。『スバル湖』の真ん中にある浮島に精霊王の祠があるって話ですよね」
「なるほど...それで聖地...」
「なんだかロマンチックですわね~」
聖地だって? ゲーム内で起きなかったイベントなのに、そんな曰くありげな場所に行くのか?
アタシは楽しみだと思う反面、何か起きるんじゃないかという漠然とした不安を感じていた。
その不安が現実になるとは思いもよらずに...
...ちなみにシルベスターはこの時も物陰からアタシ達を伺っていたらしい...
ゴメン! すっかり忘れてたよ。
アタシは相変わらず毎日、お昼になるとバカップルに拉致されている。もう抵抗すんの諦めたよ...
ただ一点、変わった所がある。エリオットが一緒に付いて来るようになったことだ。最初、バカップルは嫌がってた。特にシャロン様は露骨に嫌な顔をしてた。けどそれにめげずに何度もエリオットが付いて来るので仕舞いには折れたようだ。
てな訳で今は四人でテーブルを囲んでる。見ようによっては2対2のカップル同士に見えなくもないが、アタシは相変わらずシャロン様の膝上に乗ってるから色々と台無しだ。
最初にその光景を目にしたエリオットはさすがに目を白黒させていたもんだが、人間慣れって怖いね。今では普通に受け入れてんだもん。
あぁ、そう言えばアタシとエリオットがお互いを「エリオット」「ミナ」って呼び合ってるのを最初に聞いた時のバカップルの反応は凄かったっけな~
「お、お前らまさか付き合ってるのか!? 許さんっ! パパは許さんぞっ!」
「なんてことなのっ! ママはそんな子に育てた覚えありませんよっ!」
いやお前らいつからアタシのオトンとオカンになったんだよ!? それに付き合ってねーし! 勝手に妄想膨らますな! ったく、誤解を解くの大変だったよ...それとエリオット、満更でもないって顔してないでお前もちゃんと否定しろよ!
その後も「俺のこともアルと呼べ」だの「シャロンと呼び捨てにして」だの五月蝿いったらない。アタシが「将来、国王国母になられるかも知れないお二方にそんな失礼なこと言えません」って言ったら渋々ではあるが納得したみたいだ。間違ってないよね? まだ第一王子が立太子してないもん。
そんな日常を過ごしていたある日、シルベスターが停学明けで学園に復学して来た。
朝イチでアタシのクラスにやって来たシルベスターは、なんだか少し痩せたみたいだ。すかさずエリオットがアタシの前に立って威嚇する。
「ミナ・バートレット嬢...本当に本当に申し訳ありませんでした...それと、あなたが厳罰を望まなかったお陰でボクはこの場に立って居られます...その事に心より感謝申し上げます...」
「...うん、もう二度としないでね」
いやもうなんかね、頭の上に犬耳が垂れているのが見えるくらい落ち込んでるのよ。こう言うしかないじゃん。これ以上追い詰めらんないって。だからエリオット、そんなに睨むな。
シルベスターは何度も「すみません、ありがとうございます」って頭を下げながら戻って行った。その後ろ姿に今度は尻尾まで丸まっているのが見えた気がした。
まあ元々、シルベスターをこのゲームから退場させる気は無かった。ヒロインがまだ入学していない今の状況なら尚更だ。主要キャラに抜けられては困るっていう打算的な意味もある。シルベスターの能力は頼りになるからね。心を入れ替えてくれたならそれでいい。
「ミナ、また来てるぞ」
エリオットに言われて振り返ると...居たよ。アタシと目が合うとサッと物陰に隠れるシルベスターが。休み時間になる度にアタシ達のクラスまでやって来る。声を掛けてきたりはせず、ただああやって見てるだけ。うん、ぶっちゃけ怖い。
これはアレなんだろうな、ワンコ系キャラからストーカーにジョブチェンジしたって訳じゃなく、某RPGみたいに「仲間に入りたそうにしている」んだろうけど。でもなぁ...アルベルト殿下の話だと今回の件、シャロン様が相当お怒りだったそうで、宥めるのが大変だったとか。
アタシの為に怒ってくれたんだからありがたい話ではあるんだけどさ、さすがに殴り込みとか勘弁してよね...てな訳でシルベスター、まだアタシに近付かないように...何かきっかけでもあればいいんだけどね~
◆◆◆
「それでは先日連絡した通り、今週末に行われる校外学習の為、五人一組の班を作っておくこと。今日の伝達は以上」
ホームルームで担任の教師がそう告げるとクラス中が騒がしくなる。二泊三日の校外学習。ゲームの時にこんなイベントは無かった。アタシもちょっと楽しみにしてる。こういうイベントがきっかけでシルベスターとも距離を縮められたらいいんだけどね。
アタシは仲の良いクラスメイトの女子四人と班を組んだ。エリオットが物欲しそうに見てるけど、同じ部屋に泊まるんだから同性同士に決まってる。そっちはそっちで男同士仲良くやんな。班になった者同士で旅の栞を広げる。どんな内容なのかワクワクするね!
景勝地『プレヤデス』という場所が舞台らしい。なんでも『精霊の森』と呼ばれる原生林と『スバル湖』というとってもキレイな湖があるんだって。ナニソレ聞いただけでも楽しそう!
しかもなんと移動に使うのは飛行船だっていうじゃない! 飛行船一度乗ってみたかったんだよね~! これだけでもテンション爆上がりだよ~! 早く週末来ないかな~
◆◆◆
やって来ました校外学習当日! 天気は快晴旅行日和! そしてアタシ達の目前には巨大な飛行船がっ! いや~ ホント壮観だよね~!
前世でいう所の「ツェッペリン型」っていうのかな? 全長は200mを軽く越えて、高さも50m以上あるんじゃない? 係留してる学園の校庭が狭く見えるくらいの大きさだよね~!
まぁもっとも、学年全員で生徒約120人、引率の教師やら使用人やら含めると200人近くになる訳だから、このくらいの大きさは必要なのかも。定員は300人なんだそうな。
あ、ちなみに飛行船の中身は水素でもヘリウムガスでもなく、風魔法の魔力で膨らましてんだってさ! いや~ このあたりはさすがファンタジーだね~ 爆発事故の危険性が無いっていいよね~
さぁ乗り込んでいざ出航~!『プレヤデス』まで約5時間くらい掛かるらしい。それまで空の旅を心ゆくまで楽しむぞ~!
一瞬だけフワッとした浮遊感みたいなのを感じた。と思ったら既に100mくらいの高さまで浮き上がってた! 凄い凄い! ナニコレナニコレ! 全然揺れないよ!
見渡すとアタシ達の居る展望デッキから360°の大パノラマが広がっていたっ! まさに絶景っ! アタシは大ハシャギで展望デッキを一周する。凄い凄い凄いっ~! あぁ写メ撮りたいっ! 動画に残したいっ! この感動を記録したい~!
アタシのテンションはMAXに振り切っていた。東を向けば遠くに海が見える。西を向けば険しい山並みが見える。南を向けば遠くに町や村が見える。北を向けば一面に平原が広がっている。
アタシは飽きることなく景色に見蕩れていた。とそこにシャロン様が現れた。
「あら、ミナさん。ここに居たんですのね」
「あぁ、シャロン様。えぇ、この絶景に見蕩れていました」
「確かに絶景ですわね~ これ見るだけで来た甲斐がありましたわ~」
「同感ですっ!」
アタシが力強く頷いていると、今度は殿下とエリオットがやって来た。
「よぉ、ここに居たのか」
「空の旅楽しんでる?」
「えぇ、とっても満喫してますっ!」
四人で笑い合った。すると殿下が、
「そういやミナ、知ってるか? これから行く『プレヤデス』は聖地って呼ばれてんだぞ?」
「えっ?...聖地ですか?...」
「あぁ、『精霊の森』があるって聞いただろ? 昔、そこに精霊王が住んでたっていう伝説があるんだよ」
「それ、僕も聞いたことあります。『スバル湖』の真ん中にある浮島に精霊王の祠があるって話ですよね」
「なるほど...それで聖地...」
「なんだかロマンチックですわね~」
聖地だって? ゲーム内で起きなかったイベントなのに、そんな曰くありげな場所に行くのか?
アタシは楽しみだと思う反面、何か起きるんじゃないかという漠然とした不安を感じていた。
その不安が現実になるとは思いもよらずに...
...ちなみにシルベスターはこの時も物陰からアタシ達を伺っていたらしい...
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