処刑される未来をなんとか回避したい公爵令嬢と、その公爵令嬢を絶対に処刑したい男爵令嬢のお話

真理亜

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後日談

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 あの卒業式の日から一ヶ月が経った。

 今日はイライザとアンソニーが正式に婚約を結ぶ日だ。ヘンリーが罪人となったことにより、当然ながらイライザとヘンリーの婚約は解消されていた。

 ドレスアップして王宮に赴いたイライザを正装姿のアンソニーが出迎える。

「綺麗だよイライザ。僕は幸せ者だ。こんな素敵なレディと結婚できるんだから」

「ありがとうございます。アンソニー様も素敵ですよ。幸せ者は私の方です」

 イライザは頬を赤らめながら微笑んだ。

「さぁ行こうか、婚約者殿」

「はい、婚約者様」

 イライザはアンソニーが差し出した手を取って一緒に歩き始めた。

「ところでイライザ、こんなおめでたい日に言うのもなんなんだが、本当にアレで良かったのかい?」

 アンソニーの言う「アレ」とはエミリアとヘンリー、そして取り巻き共を含めた罪人達の処罰に関してである。

 国王、そしてアンソニー含む王家の連中は皆一様に厳罰に処するつもりでいた。王家のスキャンダルでイメージダウンした民意をこれ以上下げないため、ケジメとしての公開処刑を課そうとしていた。

 民衆の前で行うことにより、自浄効果としてのイメージアップを図る狙いがあった。つまり例え王族といえど、罪を犯せば罰せられるということを民衆にアピールしたかったのだ。

 そこに待ったを掛けたのがイライザだった。彼女はこう主張した。

「断頭台で一瞬にして終わる刑罰よりも、生かして自分の犯した罪を贖わさせるべき。男共は死ぬまで鉱山労働に従事させ、女は死ぬまで修道院に閉じ込めておく。これが妥当と思われる」

 当事者である彼女の一言は重く、また説得力もあった。結局彼女の希望が通り刑が確定したのだった。

「甘い...と思われますか?」

「いいや、僕は君の意見を尊重するよ」

「ありがとうございます」
 
 実の所、イライザ自身があの悪夢の中で何度も見た断頭台を、もう二度と見たくなかったからというのが本音だったりする。

 もう一度見たらまた悪夢に魘されるかも知れない。ようやくあの悪夢から解放されてホッとしている所なのだ。ぶり返したくない。

 そんな思いをそっと胸に秘めて、イライザはアンソニーにピッタリと寄り添った。
 
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