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「いいから行くぞ? 王族の俺が一人で入場なんて恥ずかしい真似は出来ないからな」
「分かりましたよ...」
仕方なくエミリアはヘンリーに手を引かれて会場の中へ入った。
「やっと来ましたね、ヘンリー殿下!」
すると壇上にはアンソニーを伴ったイライザが仁王立ちしていた。
「今日この場であなたを断罪します!」
イライザはそう高らかに宣言した。
「のあっ!? な、なんだってぇ!?」
驚愕しているヘンリーを尻目に、イライザは次々とヘンリーの悪行を暴いて行く。まずは王族の権威を振り飾し教師を恫喝して成績と出席日数を改竄させたこと。本来なら成績的にも出席日数的にもヘンリーは到底卒業できるはずがなかったのだ。
次に小遣い銭欲しさに生徒を恐喝し金品を巻き上げていたこと。これは何人もの男子生徒が被害に遭っている。何れも貴族の中では位の低い男爵家や子爵家の生徒ばかりだった。
「更にもっとも悪質だったのが、女子生徒を王宮に連れて行ってやると騙して連れ出し、薬を使って眠らせた挙げ句暴行したことです! 可哀想に...被害に遭った女子生徒の中には、妊娠してしまい人知れず堕胎した娘も居れば、純潔を散らされたことで心に深い傷を負い、人生を悲観して自決してしまった娘まで居るんですよ! なんでそんな酷いことが平気で出来るんですか! この...人の皮を被ったケダモノがぁ!」
「あぐ...」
全て真実なのでヘンリーにはなにも言えなかった。
「それだけじゃない。ヘンリー、お前。遊ぶ金に困って国庫の金に手を付けたな。証拠もちゃんと揃ってる。言い逃れは出来ないぞ」
アンソニーのトドメの一言でついにヘンリーは崩れ落ちた。
「近衛兵、このケダモノを連行しろ」
そうアンソニーが命令すると、脱力したヘンリーは引き摺られるように連れて行かれた。
エミリアはそんなヘンリーを呆然と見送りながら、あんなクズに少しでも思いを募らせたことを後悔していた。それと同時にヘンリーだけが断罪されて良かったと安堵もしていた。なにせ自分はなにもやっていないのだから。
いや、なにも出来なかったというべきか。
「さて、エミリアさん。この人達に見覚えはありますか?」
そんなエミリアの目に飛び込んで来たのは、
「あ、あんた達!?」
そう、ヘンリーの取り巻きクズ三人衆である。相変わらずゲスい嗤いを浮かべながら壇上に上がって来た。
「あなた、この三人に私を襲うよう依頼したらしいわね?」
「あ、あんた達、裏切ったのね! なんて人でなしなの! 信じらんないわ!」
「へへへっ! 悪く思うなよ? 公爵家を敵に回したくないんでな!」
「こちとらお前なんかに義理立てする筋合いはねぇしな!」
「この! このぉ! よくもぉ! ロクデナシのゲス野郎共がぁ!」
「近衛兵、この阿婆擦れを連行しろ」
今にも取り巻き三人衆に掴み掛からんとするエミリアを近衛兵はガッシリ掴んで連行して行った。
「放せ! 放しなさい! 私はこの世界のヒロインなのよ~! こんな扱いを受けていいはずがないのよぁ~!」
エミリアはなにか訳の分からないことを叫びながら退場して行った。
「あなた達、ご苦労だったわね」
「ひひひっ! なぁに、当然のことをしたまでですぜ!」
「そう、それなら私も当然のことをしないとね。コイツらを連行して」
イライザは近衛兵にそう命じた。
「へっ!? な、なんで俺達まで!?」
「あんた達、ヘンリー殿下と一緒になって女子生徒に暴行していたそうじゃない?。ネタは上がってんのよ?」
「そ、それは...」
「おい、このケダモノ共をさっさと連れて行け」
アンソニーが重ねてそう命じた。三人が連行されて行った後、
「皆さん、お騒がせして申し訳ありませんでした。余興はこれで終わりです。さあ、卒業式を開始しましょうか」
イライザは仕切り直すようにそう宣言した。
「イライザ、お疲れ様」
「アンソニー様、ありがとうございます」
これでもうあの悪夢に魘されることはなくなるだろう。
イライザは晴れやかな笑顔でアンソニーに寄り添った。
~ fin. ~
「分かりましたよ...」
仕方なくエミリアはヘンリーに手を引かれて会場の中へ入った。
「やっと来ましたね、ヘンリー殿下!」
すると壇上にはアンソニーを伴ったイライザが仁王立ちしていた。
「今日この場であなたを断罪します!」
イライザはそう高らかに宣言した。
「のあっ!? な、なんだってぇ!?」
驚愕しているヘンリーを尻目に、イライザは次々とヘンリーの悪行を暴いて行く。まずは王族の権威を振り飾し教師を恫喝して成績と出席日数を改竄させたこと。本来なら成績的にも出席日数的にもヘンリーは到底卒業できるはずがなかったのだ。
次に小遣い銭欲しさに生徒を恐喝し金品を巻き上げていたこと。これは何人もの男子生徒が被害に遭っている。何れも貴族の中では位の低い男爵家や子爵家の生徒ばかりだった。
「更にもっとも悪質だったのが、女子生徒を王宮に連れて行ってやると騙して連れ出し、薬を使って眠らせた挙げ句暴行したことです! 可哀想に...被害に遭った女子生徒の中には、妊娠してしまい人知れず堕胎した娘も居れば、純潔を散らされたことで心に深い傷を負い、人生を悲観して自決してしまった娘まで居るんですよ! なんでそんな酷いことが平気で出来るんですか! この...人の皮を被ったケダモノがぁ!」
「あぐ...」
全て真実なのでヘンリーにはなにも言えなかった。
「それだけじゃない。ヘンリー、お前。遊ぶ金に困って国庫の金に手を付けたな。証拠もちゃんと揃ってる。言い逃れは出来ないぞ」
アンソニーのトドメの一言でついにヘンリーは崩れ落ちた。
「近衛兵、このケダモノを連行しろ」
そうアンソニーが命令すると、脱力したヘンリーは引き摺られるように連れて行かれた。
エミリアはそんなヘンリーを呆然と見送りながら、あんなクズに少しでも思いを募らせたことを後悔していた。それと同時にヘンリーだけが断罪されて良かったと安堵もしていた。なにせ自分はなにもやっていないのだから。
いや、なにも出来なかったというべきか。
「さて、エミリアさん。この人達に見覚えはありますか?」
そんなエミリアの目に飛び込んで来たのは、
「あ、あんた達!?」
そう、ヘンリーの取り巻きクズ三人衆である。相変わらずゲスい嗤いを浮かべながら壇上に上がって来た。
「あなた、この三人に私を襲うよう依頼したらしいわね?」
「あ、あんた達、裏切ったのね! なんて人でなしなの! 信じらんないわ!」
「へへへっ! 悪く思うなよ? 公爵家を敵に回したくないんでな!」
「こちとらお前なんかに義理立てする筋合いはねぇしな!」
「この! このぉ! よくもぉ! ロクデナシのゲス野郎共がぁ!」
「近衛兵、この阿婆擦れを連行しろ」
今にも取り巻き三人衆に掴み掛からんとするエミリアを近衛兵はガッシリ掴んで連行して行った。
「放せ! 放しなさい! 私はこの世界のヒロインなのよ~! こんな扱いを受けていいはずがないのよぁ~!」
エミリアはなにか訳の分からないことを叫びながら退場して行った。
「あなた達、ご苦労だったわね」
「ひひひっ! なぁに、当然のことをしたまでですぜ!」
「そう、それなら私も当然のことをしないとね。コイツらを連行して」
イライザは近衛兵にそう命じた。
「へっ!? な、なんで俺達まで!?」
「あんた達、ヘンリー殿下と一緒になって女子生徒に暴行していたそうじゃない?。ネタは上がってんのよ?」
「そ、それは...」
「おい、このケダモノ共をさっさと連れて行け」
アンソニーが重ねてそう命じた。三人が連行されて行った後、
「皆さん、お騒がせして申し訳ありませんでした。余興はこれで終わりです。さあ、卒業式を開始しましょうか」
イライザは仕切り直すようにそう宣言した。
「イライザ、お疲れ様」
「アンソニー様、ありがとうございます」
これでもうあの悪夢に魘されることはなくなるだろう。
イライザは晴れやかな笑顔でアンソニーに寄り添った。
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