処刑される未来をなんとか回避したい公爵令嬢と、その公爵令嬢を絶対に処刑したい男爵令嬢のお話

真理亜

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「なぁ、エミリア」

「なんですか?」

 イライラしているエミリアは声が刺々しい。

「やっぱり設定に無理があったんじゃないか?」

「どういう意味ですか?」

「お前のことを集団で虐めている連中を現行犯逮捕しようとしたら、連中は罪を逃れるためにイライザが命令してやらせたんだっていう展開になるってお前言ってたよな?」

「それがなにか?」

「いやだから、その点に無理があるんじゃないかって言ってんだよ。だって考えてもみろよ? 生徒会長として全校生徒に慕われているイライザが、そんなこと命じたなんて言ったって誰も信じないだろ? 俺らと違って人望あるしな」

「だから言ったじゃないですか。私に対する嫉妬に駆られたんだって」

「いやいや、アイツ俺らのことなんて歯牙にも掛けていないぞ? 間違っても嫉妬なんかするタイプじゃない」

 その点は確かにエミリアも気にはなっていた。ゲームと違ってこの世界のイライザはヘンリーに対して全く興味が無いように見える。やっぱりイライザも自分と同じ転生者ってことなんだろうか?

「それにな、いくら命令されたとは言ってもだ。実行犯だったことに変わりはない訳で、処罰されるのは間違いないんだ。その上でウソを重ねて公爵家を敵に回すような真似はしないんじゃないか?」

 正論である。ヘンリーは可哀想な者を見るような目でエミリアを見ている。その眼差しにムカついたエミリアは、

「もう! さっきから五月蝿いですよ! そんなこと言うんだったらヘンリー様がやったらいいじゃないですか!」

「いやいや、お前の方から任せとけって言って来たんだろ? イライザを貶めてみせるって。だから俺はやってみろって言ったんだ。今更なに言ってんだよ? ひょっとしたらもう白旗を掲げるつもりなのか?」

「そんな訳ないじゃないですか! これからですよ、これから!」

 エミリアは精一杯強がって見せた。

「そっか。んじゃまぁせいぜい頑張ってくれ。俺は忙しいからあんまり手伝えないけどな」

 そう言ってヘンリーは去って行った。残されたエミリアは爪を噛みながら、

「なにが忙しいよ...あんのエロボケ王子が...」

 そう吐き捨てた。ゲームと違うのはヘンリーも同じだ。とにかく女好きなのだ。ちょっと良い女と見るや、手当たり次第に手を出す。

 エミリアもすぐに体を要求された。前世で風俗嬢だったエミリアに貞操の観念なんてものはなかったので、それは別に構わなかったのだが、ヘンリーの女癖の悪さは留まる所を知らない。

 こんなにクズな男だったのだろうか? ゲームとは違うヘンリーにエミリアは頭を抱えた。

 勉強もせずに側近連中と女遊びに興じる毎日。当然、学業の成績は最底辺。王族でありながら生徒会にも入っていない。

「そりゃあイライザも愛想尽かすはずだわ...」

 エミリアはため息を吐きながら独り言ちた。

 
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