3 / 18
3
しおりを挟む
「ということですのでヘンリー様、私達はこれで失礼しますわ。あなた達、行くわよ?」
そう言って令嬢達を促し、イライザはこの場を後にしようとする。
「あぁ、その...イライザ...ご苦労だった...」
ヘンリーはそう言うしかなかった。
「生徒会長として当然のことをしたまでですわ。ではご機嫌よう」
去って行くイライザの背中を睨み付けながら、エミリアはヘンリーに愚痴を溢す。
「もう! ヘンリー様! 駆け付けて来るのが遅いですよ!」
「いや、そう言われてもだな...いきなりイライザが現れたもんで出番を逸したというか...そもそもなんでイライザがここに来たんだよ? お前の話と違うじゃないか?」
「そんなの私だって分かりませんよ! この場面は私があの虐めっ子連中に頬を張られて倒れ込んだ所を、颯爽と現れたヘンリー様が助け起こすってイベントの一部だったんですから! そして虐めっ子連中は罪を逃れるために、イライザに指示を下されてやったんだってってウソを吐く所までが1セットになってるんですよ! これじゃあイベント回収できないじゃないですか!」
「いやだから俺に言われても...そもそもそのイベントってなんなんだよ?」
イライラしているエミリアに困惑したヘンリーは、取り敢えず意味不明な言葉を聞いてみることにした。
「ヘンリー様は知らなくても良いことです。この世界の理だとでも思っていて下さい」
「なんじゃそりゃ...」
ヘンリーには意味不明な言葉を聞いて分かる通り、エミリアは転生者である。この世界は前世で彼女がプレイしていた大好きな乙女ゲームの世界そのものなのだ。
自分がこの乙女ゲームの世界に転生したこと、しかもヒロインに生まれ変わったことに気付いたエミリアは狂喜した。神に感謝した。
エミリアが10歳の頃である。お転婆だったエミリアは、木登りしていた木から滑り落ちて頭を打った時、前世の記憶が甦ったのだ。
そこからはもう人生勝ち組とばかりに、王立学園へ入学する日が来るのを心待ちにしていた。
そして入学するや否や、直ぐ様ヘンリーを籠絡し順調な攻略生活をスタートした...までは良かったのだが、それ以降攻略が一向に進まない。
さっきのようにイベントが悉く失敗に終わるのだ。そもそもゲームの世界では、嫉妬に駆られ自分を虐めに来るはずの悪役令嬢イライザが全く虐めて来ない。
「もしかしたら彼女も転生者なのかしら.. 」
ゲームのシナリオ通りに動かない悪役令嬢に、思わずイライザは独り言ちた。そんなエミリアをヘンリーは怪訝な表情を浮かべて見詰めていた。
そう言って令嬢達を促し、イライザはこの場を後にしようとする。
「あぁ、その...イライザ...ご苦労だった...」
ヘンリーはそう言うしかなかった。
「生徒会長として当然のことをしたまでですわ。ではご機嫌よう」
去って行くイライザの背中を睨み付けながら、エミリアはヘンリーに愚痴を溢す。
「もう! ヘンリー様! 駆け付けて来るのが遅いですよ!」
「いや、そう言われてもだな...いきなりイライザが現れたもんで出番を逸したというか...そもそもなんでイライザがここに来たんだよ? お前の話と違うじゃないか?」
「そんなの私だって分かりませんよ! この場面は私があの虐めっ子連中に頬を張られて倒れ込んだ所を、颯爽と現れたヘンリー様が助け起こすってイベントの一部だったんですから! そして虐めっ子連中は罪を逃れるために、イライザに指示を下されてやったんだってってウソを吐く所までが1セットになってるんですよ! これじゃあイベント回収できないじゃないですか!」
「いやだから俺に言われても...そもそもそのイベントってなんなんだよ?」
イライラしているエミリアに困惑したヘンリーは、取り敢えず意味不明な言葉を聞いてみることにした。
「ヘンリー様は知らなくても良いことです。この世界の理だとでも思っていて下さい」
「なんじゃそりゃ...」
ヘンリーには意味不明な言葉を聞いて分かる通り、エミリアは転生者である。この世界は前世で彼女がプレイしていた大好きな乙女ゲームの世界そのものなのだ。
自分がこの乙女ゲームの世界に転生したこと、しかもヒロインに生まれ変わったことに気付いたエミリアは狂喜した。神に感謝した。
エミリアが10歳の頃である。お転婆だったエミリアは、木登りしていた木から滑り落ちて頭を打った時、前世の記憶が甦ったのだ。
そこからはもう人生勝ち組とばかりに、王立学園へ入学する日が来るのを心待ちにしていた。
そして入学するや否や、直ぐ様ヘンリーを籠絡し順調な攻略生活をスタートした...までは良かったのだが、それ以降攻略が一向に進まない。
さっきのようにイベントが悉く失敗に終わるのだ。そもそもゲームの世界では、嫉妬に駆られ自分を虐めに来るはずの悪役令嬢イライザが全く虐めて来ない。
「もしかしたら彼女も転生者なのかしら.. 」
ゲームのシナリオ通りに動かない悪役令嬢に、思わずイライザは独り言ちた。そんなエミリアをヘンリーは怪訝な表情を浮かべて見詰めていた。
15
お気に入りに追加
448
あなたにおすすめの小説

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな

婚約破棄の、その後は
冬野月子
恋愛
ここが前世で遊んだ乙女ゲームの世界だと思い出したのは、婚約破棄された時だった。
身体も心も傷ついたルーチェは国を出て行くが…
全九話。
「小説家になろう」にも掲載しています。

婚約破棄をいたしましょう。
見丘ユタ
恋愛
悪役令嬢である侯爵令嬢、コーデリアに転生したと気づいた主人公は、卒業パーティーの婚約破棄を回避するために奔走する。
しかし無慈悲にも卒業パーティーの最中、婚約者の王太子、テリーに呼び出されてしまうのだった。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。

公爵令嬢の一度きりの魔法
夜桜
恋愛
領地を譲渡してくれるという条件で、皇帝アストラと婚約を交わした公爵令嬢・フィセル。しかし、実際に領地へ赴き現場を見て見ればそこはただの荒地だった。
騙されたフィセルは追及するけれど婚約破棄される。
一度だけ魔法が使えるフィセルは、魔法を使って人生最大の選択をする。

転生悪役令嬢は冒険者になればいいと気が付いた
よーこ
恋愛
物心ついた頃から前世の記憶持ちの悪役令嬢ベルティーア。
国の第一王子との婚約式の時、ここが乙女ゲームの世界だと気が付いた。
自分はメイン攻略対象にくっつく悪役令嬢キャラだった。
はい、詰んだ。
将来は貴族籍を剥奪されて国外追放決定です。
よし、だったら魔法があるこのファンタジーな世界を満喫しよう。
国外に追放されたら冒険者になって生きるぞヒャッホー!

【改稿版】婚約破棄は私から
どくりんご
恋愛
ある日、婚約者である殿下が妹へ愛を語っている所を目撃したニナ。ここが乙女ゲームの世界であり、自分が悪役令嬢、妹がヒロインだということを知っていたけれど、好きな人が妹に愛を語る所を見ていると流石にショックを受けた。
乙女ゲームである死亡エンドは絶対に嫌だし、殿下から婚約破棄を告げられるのも嫌だ。そんな辛いことは耐えられない!
婚約破棄は私から!
※大幅な修正が入っています。登場人物の立ち位置変更など。
◆3/20 恋愛ランキング、人気ランキング7位
◆3/20 HOT6位
短編&拙い私の作品でここまでいけるなんて…!読んでくれた皆さん、感謝感激雨あられです〜!!(´;ω;`)

魅了アイテムを使ったヒロインの末路
クラッベ
恋愛
乙女ゲームの世界に主人公として転生したのはいいものの、何故か問題を起こさない悪役令嬢にヤキモキする日々を送っているヒロイン。
何をやっても振り向いてくれない攻略対象達に、ついにヒロインは課金アイテムである「魅惑のコロン」に手を出して…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる