処刑される未来をなんとか回避したい公爵令嬢と、その公爵令嬢を絶対に処刑したい男爵令嬢のお話

真理亜

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「あんた、男爵令嬢のクセに調子こいてんじゃないわよ!」

「そうよそうよ! ヘンリー王子にはイライザ様っていう立派な婚約者が居るってのに何様のつもりよ!」

「見せびらかすようにヘンリー王子とイチャイチャしたりして、一体なに考えてんのよ! 常識を疑うわ!」

 ここは王立学園の中庭。今はお昼休みである。中庭の一角には周りから見え辛く死角になる場所がある。

 その場所に男爵令嬢であるエミリアは追い詰められていた。彼女に詰め寄っているのは何れも伯爵以上の身分の高い令嬢達である。

 第二王子ヘンリーの婚約者であるイライザがなにも言わないのを良いことに、学園中の噂になるほどヘンリー王子とイチャ付いているエミリア。

 それを快く思わない有志一同がこうやって集まってエミリアを詰っているのだ。詰られているエミリア当人は涙目になってプルプルと震えている。

「黙ってないでなんとか言いなさいよ!」

 その姿にイライラしたのか、集まった内の一人がついに手を上げようとした。その時、

「お止めなさい。あなた達、こんな所で一体なにをしているの?」

「せ、生徒会長!」

「い、イライザ様!」

 どこかからイライザが現れて、エミリアを庇うように彼女の前に立ってこう言った。

「大勢で寄って集って一人を糾弾するなんて淑女として恥ずべき行為よ。あなた達、自分のしていることを客観的にご覧になってみなさいな」

「で、でも私達、見ていられなくて...」

「そ、そうですわ...だ、だからイライザ様の代わりに私達が...」

 それでも令嬢達は食い下がるが、

「私がいつ、あなた達にそうしてくれと頼んだかしら? 人のことをダシに使って責任転嫁するのはお止めなさい」

 イライザにそう言われて令嬢達は黙り込んでしまった。そのまま収拾がつくかと思われた時だった。

「おい! これは一体なんの騒ぎだ!?」

 騒ぎを聞き付けたのか、第二王子のヘンリーがやって来て怒りを滲ませながら詰問した。

「これはこれはヘンリー様。なんでもございませんわ。ちょっとお話し合いをしていただけですの。そうよね? あなた達?」

 そう言ってイライザは令嬢達に目を向けた。令嬢達は顔色を青くさせながらコクコクと頷いた。

「そ、そうなのか...なにやら剣呑な雰囲気を感じたが...」

「多少の行き違いがあっただけで、もう解決しましたからなにも問題ありませんわ。そうよね? エミリアさん?」

「えっ!? あぁ、まぁその...」

 釈然としないエミリアだが、そう言われてしまえば口の中でモニョモニョと呟くことしか出来なかった。

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