2 / 18
2
しおりを挟む
「あんた、男爵令嬢のクセに調子こいてんじゃないわよ!」
「そうよそうよ! ヘンリー王子にはイライザ様っていう立派な婚約者が居るってのに何様のつもりよ!」
「見せびらかすようにヘンリー王子とイチャイチャしたりして、一体なに考えてんのよ! 常識を疑うわ!」
ここは王立学園の中庭。今はお昼休みである。中庭の一角には周りから見え辛く死角になる場所がある。
その場所に男爵令嬢であるエミリアは追い詰められていた。彼女に詰め寄っているのは何れも伯爵以上の身分の高い令嬢達である。
第二王子ヘンリーの婚約者であるイライザがなにも言わないのを良いことに、学園中の噂になるほどヘンリー王子とイチャ付いているエミリア。
それを快く思わない有志一同がこうやって集まってエミリアを詰っているのだ。詰られているエミリア当人は涙目になってプルプルと震えている。
「黙ってないでなんとか言いなさいよ!」
その姿にイライラしたのか、集まった内の一人がついに手を上げようとした。その時、
「お止めなさい。あなた達、こんな所で一体なにをしているの?」
「せ、生徒会長!」
「い、イライザ様!」
どこかからイライザが現れて、エミリアを庇うように彼女の前に立ってこう言った。
「大勢で寄って集って一人を糾弾するなんて淑女として恥ずべき行為よ。あなた達、自分のしていることを客観的にご覧になってみなさいな」
「で、でも私達、見ていられなくて...」
「そ、そうですわ...だ、だからイライザ様の代わりに私達が...」
それでも令嬢達は食い下がるが、
「私がいつ、あなた達にそうしてくれと頼んだかしら? 人のことをダシに使って責任転嫁するのはお止めなさい」
イライザにそう言われて令嬢達は黙り込んでしまった。そのまま収拾がつくかと思われた時だった。
「おい! これは一体なんの騒ぎだ!?」
騒ぎを聞き付けたのか、第二王子のヘンリーがやって来て怒りを滲ませながら詰問した。
「これはこれはヘンリー様。なんでもございませんわ。ちょっとお話し合いをしていただけですの。そうよね? あなた達?」
そう言ってイライザは令嬢達に目を向けた。令嬢達は顔色を青くさせながらコクコクと頷いた。
「そ、そうなのか...なにやら剣呑な雰囲気を感じたが...」
「多少の行き違いがあっただけで、もう解決しましたからなにも問題ありませんわ。そうよね? エミリアさん?」
「えっ!? あぁ、まぁその...」
釈然としないエミリアだが、そう言われてしまえば口の中でモニョモニョと呟くことしか出来なかった。
「そうよそうよ! ヘンリー王子にはイライザ様っていう立派な婚約者が居るってのに何様のつもりよ!」
「見せびらかすようにヘンリー王子とイチャイチャしたりして、一体なに考えてんのよ! 常識を疑うわ!」
ここは王立学園の中庭。今はお昼休みである。中庭の一角には周りから見え辛く死角になる場所がある。
その場所に男爵令嬢であるエミリアは追い詰められていた。彼女に詰め寄っているのは何れも伯爵以上の身分の高い令嬢達である。
第二王子ヘンリーの婚約者であるイライザがなにも言わないのを良いことに、学園中の噂になるほどヘンリー王子とイチャ付いているエミリア。
それを快く思わない有志一同がこうやって集まってエミリアを詰っているのだ。詰られているエミリア当人は涙目になってプルプルと震えている。
「黙ってないでなんとか言いなさいよ!」
その姿にイライラしたのか、集まった内の一人がついに手を上げようとした。その時、
「お止めなさい。あなた達、こんな所で一体なにをしているの?」
「せ、生徒会長!」
「い、イライザ様!」
どこかからイライザが現れて、エミリアを庇うように彼女の前に立ってこう言った。
「大勢で寄って集って一人を糾弾するなんて淑女として恥ずべき行為よ。あなた達、自分のしていることを客観的にご覧になってみなさいな」
「で、でも私達、見ていられなくて...」
「そ、そうですわ...だ、だからイライザ様の代わりに私達が...」
それでも令嬢達は食い下がるが、
「私がいつ、あなた達にそうしてくれと頼んだかしら? 人のことをダシに使って責任転嫁するのはお止めなさい」
イライザにそう言われて令嬢達は黙り込んでしまった。そのまま収拾がつくかと思われた時だった。
「おい! これは一体なんの騒ぎだ!?」
騒ぎを聞き付けたのか、第二王子のヘンリーがやって来て怒りを滲ませながら詰問した。
「これはこれはヘンリー様。なんでもございませんわ。ちょっとお話し合いをしていただけですの。そうよね? あなた達?」
そう言ってイライザは令嬢達に目を向けた。令嬢達は顔色を青くさせながらコクコクと頷いた。
「そ、そうなのか...なにやら剣呑な雰囲気を感じたが...」
「多少の行き違いがあっただけで、もう解決しましたからなにも問題ありませんわ。そうよね? エミリアさん?」
「えっ!? あぁ、まぁその...」
釈然としないエミリアだが、そう言われてしまえば口の中でモニョモニョと呟くことしか出来なかった。
15
お気に入りに追加
448
あなたにおすすめの小説

攻略対象の王子様は放置されました
白生荼汰
恋愛
……前回と違う。
お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。
今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。
小説家になろうにも投稿してます。
せっかくですもの、特別な一日を過ごしましょう。いっそ愛を失ってしまえば、女性は誰よりも優しくなれるのですよ。ご存知ありませんでしたか、閣下?
石河 翠
恋愛
夫と折り合いが悪く、嫁ぎ先で冷遇されたあげく離婚することになったイヴ。
彼女はせっかくだからと、屋敷で夫と過ごす最後の日を特別な一日にすることに決める。何かにつけてぶつかりあっていたが、最後くらいは夫の望み通りに振る舞ってみることにしたのだ。
夫の愛人のことを軽蔑していたが、男の操縦方法については学ぶところがあったのだと気がつく彼女。
一方、突然彼女を好ましく感じ始めた夫は、離婚届の提出を取り止めるよう提案するが……。
愛することを止めたがゆえに、夫のわがままにも優しく接することができるようになった妻と、そんな妻の気持ちを最後まで理解できなかった愚かな夫のお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25290252)をお借りしております。

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな

婚約破棄の、その後は
冬野月子
恋愛
ここが前世で遊んだ乙女ゲームの世界だと思い出したのは、婚約破棄された時だった。
身体も心も傷ついたルーチェは国を出て行くが…
全九話。
「小説家になろう」にも掲載しています。

とっても短い婚約破棄
桧山 紗綺
恋愛
久しぶりに学園の門を潜ったらいきなり婚約破棄を切り出された。
「そもそも婚約ってなんのこと?」
***タイトル通りとても短いです。
※「小説を読もう」に載せていたものをこちらでも投稿始めました。

公爵令嬢の一度きりの魔法
夜桜
恋愛
領地を譲渡してくれるという条件で、皇帝アストラと婚約を交わした公爵令嬢・フィセル。しかし、実際に領地へ赴き現場を見て見ればそこはただの荒地だった。
騙されたフィセルは追及するけれど婚約破棄される。
一度だけ魔法が使えるフィセルは、魔法を使って人生最大の選択をする。

婚約破棄をいたしましょう。
見丘ユタ
恋愛
悪役令嬢である侯爵令嬢、コーデリアに転生したと気づいた主人公は、卒業パーティーの婚約破棄を回避するために奔走する。
しかし無慈悲にも卒業パーティーの最中、婚約者の王太子、テリーに呼び出されてしまうのだった。

転生悪役令嬢は冒険者になればいいと気が付いた
よーこ
恋愛
物心ついた頃から前世の記憶持ちの悪役令嬢ベルティーア。
国の第一王子との婚約式の時、ここが乙女ゲームの世界だと気が付いた。
自分はメイン攻略対象にくっつく悪役令嬢キャラだった。
はい、詰んだ。
将来は貴族籍を剥奪されて国外追放決定です。
よし、だったら魔法があるこのファンタジーな世界を満喫しよう。
国外に追放されたら冒険者になって生きるぞヒャッホー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる