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『王子様と友達!? 本当に!?』
レイ君が疑いの目を向けて来る。まぁそうだよね。普通信じないよね。
『本当よ。ほら、これ見て?』
私はポケットから黒い手帳を取り出して、そこに刻まれている紋章を指差す。
『ほ、本当だ! アルファ王国の紋章だ!』
大使館勤めしているだけあって、レイ君は理解が早かった。
『信じてくれて良かったわ。ねぇレイ君、聞きたいことがあるんだけどいいかな?』
『うん! 何でも聞いて!』
『ありがとう。まず第1にここはディード王国の大使館で間違いない?』
『うん! 間違いないよ!』
『通称大使館通りにあるのよね?』
『うん! そうだよ!』
良し、ここまでは予想通り。
『そう。では第2にレイ君、この建物からコッソリ抜け出すことが出来る?』
『出来るよ! 大人は通れないけど、壁に子供のボクなら通り抜けられる小さい穴が空いている所があるんだ!』
『それは良かったわ。それじゃあこれを』
私は手帳のページを一枚破ってメモを書く。
『どこでもいいから他の国の大使館に駆け込んで、そこに居る人に渡してくれる?』
『うん! 分かった!』
『見付からないように注意してね?』
『大丈夫! 任せといて!』
レイ君を見送った後、私は手足の縄をいったん解いて、グルグルと巻き付けておくだけにしておいた。誰か来た時に油断させるためである。
レイ君が出て行ってしばらくしてから、誰かがやって来る気配がした。私は身構える。やって来たのは...
「フハハハッ! いい格好だなぁ、アビー!」
クズ義兄だった。下卑た嗤いを浮かべながら、鍵を開けて中に入ってくる。
「怖いか? 怖いだろうな? 安心しろ、すぐには殺さん。お前には散々恥を掻かされたからな。まずはたっぷりと可愛がってやる」
そう言ってシャツのボタンを外しながら近寄って来る。うん、めっちゃキモい! だから私は、
「お、お義兄さま、お願いです...乱暴しないで下さい...」
と弱々しい演技をしてみせた。油断してヨダレを溢しながら近付いて来るところを、
「はぐっ!」
首に縄を巻き付けて引き摺り倒した。頭を打ったのか悶絶しているクズから鍵を奪った後、
「死んでもお断りって言ったわよね!」
そう言って股間を蹴り潰してやった。
「ぐぴゅっ!」
クズが奇怪な声を発してその場に崩れ落ちる。そのまま泡を吹いて気絶してしまった。ざまぁ!
そのまま座敷牢から出て鍵を掛けてから建物の中を走った。座敷牢は上の階にあったようなので、階段を駆け降りて行く。そろそろ1階に辿り着くかと思った時だった。
「止まれ!」
階段の踊り場にもう1人の転生者、ディード王国の特使の男が剣を手に立ち塞がっていた。
レイ君が疑いの目を向けて来る。まぁそうだよね。普通信じないよね。
『本当よ。ほら、これ見て?』
私はポケットから黒い手帳を取り出して、そこに刻まれている紋章を指差す。
『ほ、本当だ! アルファ王国の紋章だ!』
大使館勤めしているだけあって、レイ君は理解が早かった。
『信じてくれて良かったわ。ねぇレイ君、聞きたいことがあるんだけどいいかな?』
『うん! 何でも聞いて!』
『ありがとう。まず第1にここはディード王国の大使館で間違いない?』
『うん! 間違いないよ!』
『通称大使館通りにあるのよね?』
『うん! そうだよ!』
良し、ここまでは予想通り。
『そう。では第2にレイ君、この建物からコッソリ抜け出すことが出来る?』
『出来るよ! 大人は通れないけど、壁に子供のボクなら通り抜けられる小さい穴が空いている所があるんだ!』
『それは良かったわ。それじゃあこれを』
私は手帳のページを一枚破ってメモを書く。
『どこでもいいから他の国の大使館に駆け込んで、そこに居る人に渡してくれる?』
『うん! 分かった!』
『見付からないように注意してね?』
『大丈夫! 任せといて!』
レイ君を見送った後、私は手足の縄をいったん解いて、グルグルと巻き付けておくだけにしておいた。誰か来た時に油断させるためである。
レイ君が出て行ってしばらくしてから、誰かがやって来る気配がした。私は身構える。やって来たのは...
「フハハハッ! いい格好だなぁ、アビー!」
クズ義兄だった。下卑た嗤いを浮かべながら、鍵を開けて中に入ってくる。
「怖いか? 怖いだろうな? 安心しろ、すぐには殺さん。お前には散々恥を掻かされたからな。まずはたっぷりと可愛がってやる」
そう言ってシャツのボタンを外しながら近寄って来る。うん、めっちゃキモい! だから私は、
「お、お義兄さま、お願いです...乱暴しないで下さい...」
と弱々しい演技をしてみせた。油断してヨダレを溢しながら近付いて来るところを、
「はぐっ!」
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「死んでもお断りって言ったわよね!」
そう言って股間を蹴り潰してやった。
「ぐぴゅっ!」
クズが奇怪な声を発してその場に崩れ落ちる。そのまま泡を吹いて気絶してしまった。ざまぁ!
そのまま座敷牢から出て鍵を掛けてから建物の中を走った。座敷牢は上の階にあったようなので、階段を駆け降りて行く。そろそろ1階に辿り着くかと思った時だった。
「止まれ!」
階段の踊り場にもう1人の転生者、ディード王国の特使の男が剣を手に立ち塞がっていた。
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