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「なんじゃ、ケチくさいヤツらじゃのぅ。二本あるんだから一本くらい良いではないか。なんなら儂の尻尾が生えて来たら、それと交換でも構わんのじゃが」
「人間の手足はホイホイ生えて来ねぇ!」
カレンが叫んだ。
「あぁ、人間は一度切ったら生えて来んのじゃったか。面倒な生き物じゃの」
「ちょっと待って! そう言うってことは竜って尻尾だけじゃなく、手足を失ってもまた生えて来るってこと!?」
今度はシイナが叫ぶ。
「あぁ、そうじゃが? もっとも尻尾よりは多少時間は掛かるがの。生えて来るぞ?」
ヘイロンは事も無げに言い切った。
「底知れない生き物ね...竜って...」
シイナが戦慄したようにそう言った。
「というか、尻尾肉ことは思い出させないで欲しかったな...」
「そうですわよ...せっかく忘れ掛けていたのに...」
フウカとミレイが不満を述べる。
「そう言えばヘイロン。あなた、私達が試練を突破した時言ってたわよね? 私達の絆が深まった以外にもう一つ意味があるって。あれって一体どういうことなの?」
シイナが思い出したようにそう尋ねた。
「あぁ、それか。そうじゃな、少し昔話でもしようか」
そう言ってヘイロンは遠い目をした。
「昔々、お主らが生まれるずっと前の話じゃが、儂は世界中を飛び回って腹が減っては気ままに人間を食らっておった。ただ目立たんようにコッソリとやっておったがな。お主らの言うところの神隠しというヤツじゃ。いつの間にか誰か一人が居なくなっているという。そうしないと人間から討伐の対象にされてしまうからな。それは面倒なんで慎重にやっとった」
そこでヘイロンはいったん言葉を切ってお茶を一口飲んだ。
「そんなある日のこと、どこでバレたか知らんが、儂の住処に人間がやって来てこう言いおった」
『取引をしたい。食っても良い人間、つまり罪を犯して死罪になった人間を用意するから、気ままに人を食うのは止めて欲しい』
「とな。もちろん儂は二つ返事で了承した。それからじゃよ、儂があの谷底で暮らすようになったのは。じゃが人間達は一つ条件を付けて来おった」
『例え罪を犯したヤツらでもなんらかの救いはあるべきだ。罪人には試練を課して欲しい。試練の内容は任せる。その試練を突破した者には恩赦を与えて欲しい』
「とな。儂はこれも面白そうだと思って了承した。それであの三つの試練を考案した訳じゃ。儂は裁定者としての役割も担っておった。試練を受けていて気付いたじゃろ? 誰か一人でも抜け駆けしようとしたり、他人を出し抜こうなんて思ったら失敗すると。そう言った意味でもお主らは合格じゃ。誰か一人欠けても失敗したじゃろうからな」
4人は何も言えなかった。
「人間の手足はホイホイ生えて来ねぇ!」
カレンが叫んだ。
「あぁ、人間は一度切ったら生えて来んのじゃったか。面倒な生き物じゃの」
「ちょっと待って! そう言うってことは竜って尻尾だけじゃなく、手足を失ってもまた生えて来るってこと!?」
今度はシイナが叫ぶ。
「あぁ、そうじゃが? もっとも尻尾よりは多少時間は掛かるがの。生えて来るぞ?」
ヘイロンは事も無げに言い切った。
「底知れない生き物ね...竜って...」
シイナが戦慄したようにそう言った。
「というか、尻尾肉ことは思い出させないで欲しかったな...」
「そうですわよ...せっかく忘れ掛けていたのに...」
フウカとミレイが不満を述べる。
「そう言えばヘイロン。あなた、私達が試練を突破した時言ってたわよね? 私達の絆が深まった以外にもう一つ意味があるって。あれって一体どういうことなの?」
シイナが思い出したようにそう尋ねた。
「あぁ、それか。そうじゃな、少し昔話でもしようか」
そう言ってヘイロンは遠い目をした。
「昔々、お主らが生まれるずっと前の話じゃが、儂は世界中を飛び回って腹が減っては気ままに人間を食らっておった。ただ目立たんようにコッソリとやっておったがな。お主らの言うところの神隠しというヤツじゃ。いつの間にか誰か一人が居なくなっているという。そうしないと人間から討伐の対象にされてしまうからな。それは面倒なんで慎重にやっとった」
そこでヘイロンはいったん言葉を切ってお茶を一口飲んだ。
「そんなある日のこと、どこでバレたか知らんが、儂の住処に人間がやって来てこう言いおった」
『取引をしたい。食っても良い人間、つまり罪を犯して死罪になった人間を用意するから、気ままに人を食うのは止めて欲しい』
「とな。もちろん儂は二つ返事で了承した。それからじゃよ、儂があの谷底で暮らすようになったのは。じゃが人間達は一つ条件を付けて来おった」
『例え罪を犯したヤツらでもなんらかの救いはあるべきだ。罪人には試練を課して欲しい。試練の内容は任せる。その試練を突破した者には恩赦を与えて欲しい』
「とな。儂はこれも面白そうだと思って了承した。それであの三つの試練を考案した訳じゃ。儂は裁定者としての役割も担っておった。試練を受けていて気付いたじゃろ? 誰か一人でも抜け駆けしようとしたり、他人を出し抜こうなんて思ったら失敗すると。そう言った意味でもお主らは合格じゃ。誰か一人欠けても失敗したじゃろうからな」
4人は何も言えなかった。
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