全て殿下の仰ったことですわ

真理亜

文字の大きさ
上 下
1 / 7

しおりを挟む
「アイリス! 貴様ぁ! このサリアが平民だからという理由で散々虐めていたそうだなぁ!? 貴様のような性根の腐った女など、この高貴な俺様には相応しくない! よってこの場で婚約破棄を申し渡す! 何か言い分があるなら言ってみろ!」

 今日は明日から始まる夏休みを前に、学園恒例の舞踏会が講堂で開かれていた。

 その冒頭、3人の取り巻きを従えて壇上に上がったこの国の第2王子イーサンは、自身の婚約者である公爵令嬢のアイリスを見下ろし、下卑た嗤いを浮かべながら言い放った。彼の取り巻き3人も同じように下卑た笑みを浮かべている。

 そしてイーサンの傍らには、彼に肩を抱かれながら撓垂れ掛かっている儚げな少女の姿があった。

 名指しされたアイリスは顔色一つ変えることなく反論した。

「身に覚えがありませんわ」

「貴様ぁ! 惚ける気かぁ!」

 イーサンが激昂する。

「そもそも虐める理由がありませんもの。どうして私がそんなことをする必要がありますの?」

「貴様がサリアに嫉妬したからだろうがぁ!」

「嫉妬? 誰が誰に嫉妬するんですの?」

 アイリスは本気で分からないというように首を捻った。イーサンはますます猛り立ち、唾を飛ばしながら叫ぶ。

「貴様が俺様とサリアの仲に嫉妬したからだろうがぁ!」
 
「まぁ、どうして私が嫉妬しますの? 殿下が誰と仲良くされていようと、私には関係ありませんわ」

 ここでイーサンはちょっと怯んだ。

「なっ!? 貴様は俺の婚約者だろうが!?」

「えぇ、大変不本意ですが、それが何か?」

 アイリスは本当に嫌そうにそう言った。それに気付かずイーサンは続ける。

「俺様に惚れてるから嫉妬したんじゃないのか!?」

「いいえ微塵も」

「ぬあっ!?」

 イーサンは思ってもいなかったのか、間抜けな声を上げた。

「たとえ一万歩いえ一億歩いえいえ一兆歩譲って、あなたに惚れていたとしてもですね、それでもやっぱり嫉妬する理由がありませんわ」

「随分譲ったな.. それはともかくどうしてだ!?」

「だって家畜に嫉妬する趣味はありませんもの」 

「はっ!? 家畜!?」

 イーサンは最初何のことだか分からなかったが、次第にサリアのことを言われているのだと理解し、またもや怒りが爆発した。

「き、貴様ぁ! ついに本性を現しよったなぁ! 言うに事欠いてサリアが平民だから家畜扱いするなど! 恥を知れい!」

「あら? 殿下が仰ったことではありませんの? お忘れですか?」

 アイリスは何事もなかったかのように平然とそう言った。

「な、なんだとぉ!?」

 イーサンは焦ったように叫んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

不謹慎なブス令嬢を演じてきましたが、もうその必要はありません。今日ばっかりはクズ王子にはっきりと言ってやります!

幌あきら
恋愛
【恋愛ファンタジー・クズ王子系・ざまぁ】 この王子との婚約ばっかりは拒否する理由がある――! アレリア・カッチェス侯爵令嬢は、美麗クズ王子からの婚約打診が嫌で『不謹慎なブス令嬢』を装っている。 しかしそんな苦労も残念ながら王子はアレリアを諦める気配はない。 アレリアは王子が煩わしく領内の神殿に逃げるが、あきらめきれない王子はアレリアを探して神殿まで押しかける……! 王子がなぜアレリアに執着するのか、なぜアレリアはこんなに頑なに王子を拒否するのか? その秘密はアレリアの弟の結婚にあった――? クズ王子を書きたくて、こんな話になりました(笑) いろいろゆるゆるかとは思いますが、よろしくお願いいたします! 他サイト様にも投稿しています。

ええ。私もあなたの事が嫌いです。 それではさようなら。

月華
ファンタジー
皆さんはじめまして。月華です。はじめてなので至らない点もありますが良い点も悪い点も教えてくだされば光栄です。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「エレンベール・オーラリー!貴様との婚約を破棄する!」…皆さんこんにちは。オーラリー公爵令嬢のエレンベールです。今日は王立学園の卒業パーティーなのですが、ここロンド王国の第二王子のラスク王子殿下が見たこともない女の人をエスコートしてパーティー会場に来られたらこんな事になりました。

【完結】公女さまが殿下に婚約破棄された

杜野秋人
恋愛
突然始まった卒業記念パーティーでの婚約破棄と断罪劇。 責めるのはおつむが足りないと評判の王太子、責められるのはその婚約者で筆頭公爵家の公女さま。どっちも卒業生で、俺のひとつ歳上だ。 なんでも、下級生の男爵家令嬢に公女さまがずっと嫌がらせしてたんだと。 ホントかね? 公女さまは否定していたけれど、証拠や証言を積み上げられて公爵家の責任まで問われかねない事態になって、とうとう涙声で罪を認めて謝罪するところまで追い込まれた。 だというのに王太子殿下は許そうとせず、あろうことか独断で国外追放まで言い渡した。 ちょっとこれはやりすぎじゃねえかなあ。公爵家が黙ってるとも思えんし、将来の王太子妃として知性も教養も礼儀作法も完璧で、いつでも凛々しく一流の淑女だった公女さまを国外追放するとか、国家の損失だろこれ。 だけど陛下ご夫妻は外遊中で、バカ王太子を止められる者などこの場にはいない。 しょうがねえな、と俺は一緒に学園に通ってる幼馴染の使用人に指示をひとつ出した。 うまく行けば、公爵家に恩を売れるかも。その時はそんな程度しか考えていなかった。 それがまさか、とんでもない展開になるなんて⸺!? ◆衝動的に一晩で書き上げたありきたりのテンプレ婚約破棄です。例によって設定は何も作ってない(一部流用した)ので固有名詞はほぼ出てきません。どこの国かもきちんと決めてないです(爆)。 ただ視点がちょっとひと捻りしてあります。 ◆全5話、およそ8500字程度でサラッと読めます。お気軽にどうぞ。 9/17、別視点の話を書いちゃったんで追加投稿します。全4話、約12000字………って元の話より長いやんけ!(爆) ◆感想欄は常に開放しています。ご意見ご感想ツッコミやダメ出しなど、何でもお待ちしています。ぶっちゃけ感想もらえるだけでも嬉しいので。 ◆この物語も例によって小説家になろうでも公開しています。あちらも同じく全5話+4話。

貴様とは婚約破棄だ!え、出来ない?(仮)

胸の轟
ファンタジー
顔だけ王子が婚約破棄しようとして失敗する話 注)シリアス

婚約破棄ですか....相手が悪かったですね?

神々廻
恋愛
婚約者から婚約破棄を言われてしまいました。私は婚約者の事が好きでは無かったので良いのですが..... 少し遊んで下さいませ♪相手が悪かったですね?

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました

青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。 それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

処理中です...