虐め? そんな面倒なことしませんよ?

真理亜

文字の大きさ
上 下
6 / 7

6

しおりを挟む
 コウシャンが淡々と続ける。

「私は運命に抗うため、ゲームの強制力とやらに抗うため、とにかく必死に努力を重ねたわ。この世界の知識を貪欲に吸収し、様々な人脈を築き上げ、不測の事態が起きても冷静に対応できるように。あなた達が遊び呆けている間にね。そんな時だったわ。あの3人に会ったのは」

「...3人...あ、取り巻き達の婚約者の?」

「えぇ、そうよ。彼女達も苦しんでいたわ。婚約者の心変わりにね。そして彼女達の相談に乗っている内にね、なんか違和感を感じたのよ」

「...違和感って?」

「ちょうどあなたと話しているみたいな感じって言えばいいのかしらね」

「えっ!? それって...まさか!?」

「えぇ、彼女達3人もまた私達と同じ転生者だったのよ」

 ダンシャルは驚愕に目を見開いた。

「えぇっ!? そ、それじゃあ...」

「あなたが思った通りよ。私達は全員ゲームから下りることにしたの。だからあなたはどのルートを選んでも上手く行かなかったでしょうね。あなたはゲームの世界を生きていたみたいだけど、私達は現実の世界を必死で生きていたんだから。死亡エンドを回避するためにね」

 ダンシャルは今度こそ打ちのめされて崩れ落ちてしまった。そんなダンシャルを冷たく見下ろしながらコウシャンは続ける。

「それで最初の質問に戻るんだけど、やっぱり逆ハー狙いだったの?」

「...えぇ、そうよ。逆ハーエンドを迎えて隠れキャラである隣国の王太子に会いたかったのよ...でもイベントが何一つ起きなくて中々好感度が上がらず、仕方なしに体を使ったわ...」

 開き直ったのかダンシャルは素直に白状した。

「呆れたわね...逆ハーなんて現実世界じゃ有り得ないでしょうに...結局あなたは最後までゲームの世界の中に居たのね...それで破滅を迎えてりゃ世話ないわね...」
 
 コウシャンは蔑んだ目でダンシャルを見やった。

「まぁとにかく、聞きたいことが聞けて良かったわ。じゃあね」

 コウシャンが踵を返した瞬間、ダンシャルが跳ねるように飛び起きて鉄格子を掴む。

「ま、待って! お願いよ! 命だけは! 命だけは助けてよ!」

「あら? なんで私がそんなことをしなければならないのかしら?」

 立ち止まったコウシャンは振り返って、心底分からないと言った表情を浮かべた。

「お、同じ転生者のよしみじゃないのよ! お願いよ! お願いします!」

「ふうん...でもあなた、私に冤罪をふっ掛けて断罪しようとしたんじゃなかったっけ? 平気で私を殺す気だったのよね?」

 コウシャンの目が鋭く光る。その目にダンシャルは怯えた。

「そ、それはその...」

「そんな人を助けるほど私は聖人君子じゃないの。お生憎様」

 そう言ってコウシャンは、二度と振り返ることなく牢屋を後にした。ダンシャルはいつまでも叫び続けていた。


~ fin. ~
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私は婚約破棄されると知っている

山葵
恋愛
私とイザーク王子との出会いは彼の誕生日お茶会。 同じ年頃の子息、令嬢が招待されたお茶会で初めて殿下を見た時は、『うわぁ~、キラキラしてる。本物の王子様だぁ~』なんて可愛い事を思ったっけ。 まさかイザーク王子と私が婚約するなんてねぇ~。 まさか私が悪役令嬢なんてねぇ~。 異世界転生させた神(?かしら)恨むわよっ! 私は絶対に悪役令嬢になんて成らないんだからねっ!!

公爵令嬢の一度きりの魔法

夜桜
恋愛
 領地を譲渡してくれるという条件で、皇帝アストラと婚約を交わした公爵令嬢・フィセル。しかし、実際に領地へ赴き現場を見て見ればそこはただの荒地だった。  騙されたフィセルは追及するけれど婚約破棄される。  一度だけ魔法が使えるフィセルは、魔法を使って人生最大の選択をする。

【完結】ご安心を、問題ありません。

るるらら
恋愛
婚約破棄されてしまった。 はい、何も問題ありません。 ------------ 公爵家の娘さんと王子様の話。 オマケ以降は旦那さんとの話。

その悪役令嬢、問題児につき

ニコ
恋愛
 婚約破棄された悪役令嬢がストッパーが無くなり暴走するお話。 ※結構ぶっ飛んでます。もうご都合主義の塊です。難しく考えたら負け!

真実の愛(笑)だそうですよ。

豆狸
恋愛
魔導学園の入学式の朝、私の三度目の人生が始まりました。 アルノー王国ギャルニエ公爵令嬢ベアトリーチェの一度目の人生は、婚約者のフリート王太子殿下に婚約を破棄されて不幸のどん底に沈みました。 二度目のときは一度目の経験を活かして婚約破棄を回避し、王妃となって── 今回の人生では殿下に真実の愛を確かめていただくつもりです。 なろう様でも公開中です。

【完結】婚約破棄させた本当の黒幕は?

山葵
恋愛
「お前との婚約は破棄させて貰うっ!!」 「お義姉樣、ごめんなさい。ミアがいけないの…。お義姉様の婚約者と知りながらカイン様を好きになる気持ちが抑えられなくて…ごめんなさい。」 「そう、貴方達…」 「お義姉様は、どうか泣かないで下さい。激怒しているのも分かりますが、怒鳴らないで。こんな所で泣き喚けばお姉様の立場が悪くなりますよ?」 あぁわざわざパーティー会場で婚約破棄したのは、私の立場を貶める為だったのね。 悪いと言いながら、怯えた様に私の元婚約者に縋り付き、カインが見えない様に私を蔑み嘲笑う義妹。 本当に強かな悪女だ。 けれどね、私は貴女の期待通りにならないのよ♪

神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました

青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。 それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。 二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。 けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。 ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。 だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。 グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。 そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。

処理中です...