430 / 462
白馬
しおりを挟む
万事休す...ヒュドラをあと一歩のところまで追い詰めたっていうのに...あぁ、本当に悔しいな...
私は口唇を噛み締めながら、ただただヒュドラの九つ目の首を睨み付けることしか出来なかった。
九つ目の首は目が虹色に輝いている。あれが恐らく回復の力なんだろう。そうこうしている内に、せっかくお二方が落としてくれた他の八つの首が、ゆっくりと再生を始めた。もうダメだ...そんな絶望感に支配された時だった。
「ヒヒヒーンッ!」
突然、大きな嘶きの声が辺りに響き渡った。次の瞬間、私の亜空間の中からなにかが飛び出して来た。
「えぇぇっ!?」
私はビックリして思わず叫んでいた。なぜならそこには、一頭の美しい白馬の姿があったからだ。しかもその白馬は、螺旋状になった長くて美しい一本の角を頭から生やしていた。
白馬はまるで空を飛んでいるかのように、軽やかな足取りでヒュドラに近付いたかと思うと、九つ目の首目掛けて角を突き出した。
「プシュウッ...」
角に貫かれた九つ目の首は、そんな音と共にゆっくりと萎んでいった。そして今まさに、復活を遂げようとしていた他の八つの首も、再生の途中で動きを止め次第に萎み始めていた。
やがてヒュドラは完全に機能を停止した。あまりにも急な展開に私達が呆然としている中、当の白馬はまるで何事もなかったかのように近くの草をゆっくりと食んでいた。
◇◇◇
「カリナ、一体なにがどうなっているんだ!? あれは例の子馬なのか!?」
先に私達の所へ戻って来たラウムさんが、興奮混じりにそう聞いてきた。
「そ、それが...私にも良く分からないんです...亜空間を解除した覚えも無いですし...」
「子馬は? もしかしてまだ亜空間に居るのか?」
「ちょっと待ってください...あぁ、いつの間にか居なくなってますね...」
私は亜空間を見渡しながらそう答えた。
「じゃあやっぱり間違い無いんじゃないか?」
「でもなんで急に成長したんですか?」
今や子馬の面影はどこにも無い。立派な成体となった白馬は、我関せずとばかりに相変わらず草を食み続けている。
「それは...なんでだろうな!?...私にも分からん...」
「ラウムさん、理由の詮索は後回しにして、まずは事後処理を済ませてしまいましょう」
そこに遅れてやって来たアスカさんがそう提案した。
「あぁ、そうだな...」
「あ、ラウムさん。既に体の方は幼児退行化が進んでいるみたいなので、あまり無理はしないでくださいね?」
私な釘を刺すことを忘れなかった。
私は口唇を噛み締めながら、ただただヒュドラの九つ目の首を睨み付けることしか出来なかった。
九つ目の首は目が虹色に輝いている。あれが恐らく回復の力なんだろう。そうこうしている内に、せっかくお二方が落としてくれた他の八つの首が、ゆっくりと再生を始めた。もうダメだ...そんな絶望感に支配された時だった。
「ヒヒヒーンッ!」
突然、大きな嘶きの声が辺りに響き渡った。次の瞬間、私の亜空間の中からなにかが飛び出して来た。
「えぇぇっ!?」
私はビックリして思わず叫んでいた。なぜならそこには、一頭の美しい白馬の姿があったからだ。しかもその白馬は、螺旋状になった長くて美しい一本の角を頭から生やしていた。
白馬はまるで空を飛んでいるかのように、軽やかな足取りでヒュドラに近付いたかと思うと、九つ目の首目掛けて角を突き出した。
「プシュウッ...」
角に貫かれた九つ目の首は、そんな音と共にゆっくりと萎んでいった。そして今まさに、復活を遂げようとしていた他の八つの首も、再生の途中で動きを止め次第に萎み始めていた。
やがてヒュドラは完全に機能を停止した。あまりにも急な展開に私達が呆然としている中、当の白馬はまるで何事もなかったかのように近くの草をゆっくりと食んでいた。
◇◇◇
「カリナ、一体なにがどうなっているんだ!? あれは例の子馬なのか!?」
先に私達の所へ戻って来たラウムさんが、興奮混じりにそう聞いてきた。
「そ、それが...私にも良く分からないんです...亜空間を解除した覚えも無いですし...」
「子馬は? もしかしてまだ亜空間に居るのか?」
「ちょっと待ってください...あぁ、いつの間にか居なくなってますね...」
私は亜空間を見渡しながらそう答えた。
「じゃあやっぱり間違い無いんじゃないか?」
「でもなんで急に成長したんですか?」
今や子馬の面影はどこにも無い。立派な成体となった白馬は、我関せずとばかりに相変わらず草を食み続けている。
「それは...なんでだろうな!?...私にも分からん...」
「ラウムさん、理由の詮索は後回しにして、まずは事後処理を済ませてしまいましょう」
そこに遅れてやって来たアスカさんがそう提案した。
「あぁ、そうだな...」
「あ、ラウムさん。既に体の方は幼児退行化が進んでいるみたいなので、あまり無理はしないでくださいね?」
私な釘を刺すことを忘れなかった。
23
お気に入りに追加
3,980
あなたにおすすめの小説
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
森だった 確かに自宅近くで犬のお散歩してたのに。。ここ どこーーーー
ポチ
ファンタジー
何か 私的には好きな場所だけど
安全が確保されてたらの話だよそれは
犬のお散歩してたはずなのに
何故か寝ていた。。おばちゃんはどうすれば良いのか。。
何だか10歳になったっぽいし
あらら
初めて書くので拙いですがよろしくお願いします
あと、こうだったら良いなー
だらけなので、ご都合主義でしかありません。。
子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~
月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。
「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。
そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。
『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。
その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。
スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。
※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。)
※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。
今さら帰ってこいなんて言われても。~森に移住した追放聖女は快適で優雅に暮らす~
ケンノジ
ファンタジー
「もうお前は要らない女だ!」
聖女として国に奉仕し続けてきたシルヴィは、第一王子ヴィンセントに婚約破棄と国外追放を言い渡される。
その理由は、シルヴィより強い力を持つ公爵家のご令嬢が現れたからだという。
ヴィンセントは態度を一変させシルヴィを蔑んだ。
王子で婚約者だから、と態度も物言いも目に余るすべてに耐えてきたが、シルヴィは我慢の限界に達した。
「では、そう仰るならそう致しましょう」
だが、真の聖女不在の国に一大事が起きるとは誰も知るよしもなかった……。
言われた通り国外に追放されたシルヴィは、聖女の力を駆使し、
森の奥で出会った魔物や動物たちと静かで快適な移住生活を送りはじめる。
これは虐げられた聖女が移住先の森の奥で楽しく幸せな生活を送る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる