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突然の来訪
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「ママぁ! お水! お水! 早く! 早く!」
「はいはい、ちょっと待ってね?」
起き出して来るなり、ルキノちゃんはアスカさんになにかをせがんでいた。私が首を捻っていると、
「ルキノちゃん、お庭の一角を耕してお花の苗を植えたんですよ」
すかさずセリカさんがそう教えてくれた。
「あぁ、だから苗に撒くための水を催促をしているんですね?」
「えぇ、そういうことです」
見ると、アスカさんが小さな如雨露に水を入れてルキノちゃんに渡してあげていた。
「ママ、ありがと!」
ルキノちゃんは大事そうに如雨露を抱えながら、イソイソと外に出て行った。私達はそんなルキノちゃんの姿を微笑ましく見守っていた。
「あ、ステラ。お前もこの記事を読んでおいた方がいいな」
そう言って私の時と同じように、ラウムさんは例の新聞記事を指差した。
「なんですか?」
ステラさんが記事に目を落とした時だった。
「どっひゃあっ!」
そんな叫び声を上げながら、ルキノちゃんが大慌てで外から戻って来た。
「ルキノ!? 一体どうしたの!?」
「う、馬! お庭に馬が居る! 白い馬が!」
それを聞いた瞬間、私達は全員が外に飛び出した。
◇◇◇
「こ、これは...」
今、私達の目の前では白毛の子馬がノンビリと草を食んでいる。どうやらさっきセリカさんが言っていた、お花の苗を植えるためにルキノちゃんが土を耕した際、積み上げたのであろう雑草の山の中に、顔を突っ込んでムシャムシャと食っているみたいだ。
昨日ジョージさん宅の倉庫では、私しか視認できていなかった子馬の姿だったが、今はここに居る全員が目の当たりにしている。
「なんてキレイな...」
誰かがそう呟いた。その言葉通り、子馬は昨日見た時と同じように神秘的な美しさを醸し出していた。
その時、両隣の家から朝の支度をする音が聞こえて来た。
「皆さん、他の人に見られて騒ぎになるのもマズいですから、いったん家の中に戻ってください」
「それはいいが、この子馬はどうする?」
「こうします」
私は子馬にそっと近付いた。
「お、おい、カリナ!」
ラウムさんが慌てて声を掛けて来るが、幸い子馬は草を食むのに夢中で私の接近に気付いた様子はない。
それになんとなくだが、危険は無いように思う。なぜならこの子馬からは、邪気のようなものを感じなかったからだ。寧ろ逆に清らかな感じさえする。
私は子馬の体にそっと触れて亜空間へと放り込んだ。ついでに雑草の山も放り込んでおいてやる。食べてる途中だったからね。取り上げたら可哀想かなって思ったんだ。
「フゥ...それじゃ中に戻りますか」
私は大きなため息を一つ吐いた。そして、固唾を呑んで見守っていたであろう全員に向けてそう言った。
「はいはい、ちょっと待ってね?」
起き出して来るなり、ルキノちゃんはアスカさんになにかをせがんでいた。私が首を捻っていると、
「ルキノちゃん、お庭の一角を耕してお花の苗を植えたんですよ」
すかさずセリカさんがそう教えてくれた。
「あぁ、だから苗に撒くための水を催促をしているんですね?」
「えぇ、そういうことです」
見ると、アスカさんが小さな如雨露に水を入れてルキノちゃんに渡してあげていた。
「ママ、ありがと!」
ルキノちゃんは大事そうに如雨露を抱えながら、イソイソと外に出て行った。私達はそんなルキノちゃんの姿を微笑ましく見守っていた。
「あ、ステラ。お前もこの記事を読んでおいた方がいいな」
そう言って私の時と同じように、ラウムさんは例の新聞記事を指差した。
「なんですか?」
ステラさんが記事に目を落とした時だった。
「どっひゃあっ!」
そんな叫び声を上げながら、ルキノちゃんが大慌てで外から戻って来た。
「ルキノ!? 一体どうしたの!?」
「う、馬! お庭に馬が居る! 白い馬が!」
それを聞いた瞬間、私達は全員が外に飛び出した。
◇◇◇
「こ、これは...」
今、私達の目の前では白毛の子馬がノンビリと草を食んでいる。どうやらさっきセリカさんが言っていた、お花の苗を植えるためにルキノちゃんが土を耕した際、積み上げたのであろう雑草の山の中に、顔を突っ込んでムシャムシャと食っているみたいだ。
昨日ジョージさん宅の倉庫では、私しか視認できていなかった子馬の姿だったが、今はここに居る全員が目の当たりにしている。
「なんてキレイな...」
誰かがそう呟いた。その言葉通り、子馬は昨日見た時と同じように神秘的な美しさを醸し出していた。
その時、両隣の家から朝の支度をする音が聞こえて来た。
「皆さん、他の人に見られて騒ぎになるのもマズいですから、いったん家の中に戻ってください」
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私は子馬の体にそっと触れて亜空間へと放り込んだ。ついでに雑草の山も放り込んでおいてやる。食べてる途中だったからね。取り上げたら可哀想かなって思ったんだ。
「フゥ...それじゃ中に戻りますか」
私は大きなため息を一つ吐いた。そして、固唾を呑んで見守っていたであろう全員に向けてそう言った。
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