空間魔法って実は凄いんです

白い子馬

「こ、これは!　す、凄い!　凄く凄いです!」

　興奮したジョージ氏の語彙力が喪失した。

「まさかウチの『ラビィちゃん』以外にもこんなに居るなんて!」

「ラビィちゃん!?」

「あぁ、はい。キラーラビットに付けた名前です。可愛いでしょ?」

「そ、そうですね...」

　私はかなり引いた。私の後ろに控えているお二人もドン引きだ。

「素晴らしい!　キラーラビットがこんなに増えるなんて!」

「えっ!?」

「カリナさんとおっしゃいましたね?　是非とも全てのキラーラビットを引き取らせてください!」

「えぇ～!?　ほ、本当によろしいんですか!?」

「構いません!　ラビィちゃんはいつも一人で寂しい思いをしていましたから、仲間が増えたらきっと喜ぶと思います!」

　そんなもんなんだろうか?　私はキラーラビットの生態について詳しい訳じゃないからなんとも言えないが、草食のウサギと違って肉食なら群れを作らないような気もするけどな。

　まぁ、飼ってる人がそう言うんだから間違いじゃないのかも知れないな。私はお二人の方をチラッと伺った。するとお二人とも軽く頷いたので、

「分かりました。全てお譲りします。どこに出せば良いですか?」

「ありがとうございます!　ではこちらに!」

　そう言ってジョージ氏は、庭に建っている大きな倉庫に私達を誘った。


◇◇◇


　倉庫の中には大小様々な檻が所狭しと並べられていた。そしてそれらはいくつかの種類にエリア分けされているようだった。

　例えば倉庫に入ってすぐのエリアは、やたらとデカいサイズのクモやらムカデやらカブトムシやらが収められている昆虫エリア。

　少し奥に入った辺りのエリアは、これまたやたらとデカいヘビやトカゲやワニなどが収められている爬虫類エリア。

　そして一番奥のエリアには、ゴブリン、コボルト、オーク、ワイルドボアなどなど大小様々な魔物が収められている。どうやらここが魔物エリアらしい。

「カリナさん!　ではこちらの檻にお願いします!」

　ジョージ氏は一際大きな檻を指差した。

「分かりました」

　私は言われた通りに、全てのキラーラビットを収納から檻の中に出した。

「ありがとうございました!　ラビィちゃん!　お帰り!」

「では私達はこれで...」

　ジョージ氏は檻の中のキラーラビットを恍惚とした表情で見詰めているので、私達は邪魔せずにさっさと退散することにした。

「うん!?　あれは!?」

　その時、私はなんだか視線を感じた気がして立ち止まった。魔物エリアの一番奥にある檻に一頭の魔物が収まっていた。

　それは額に一本の角が生えた美しい白毛の子馬だった