空間魔法って実は凄いんです

真理亜

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ウサギ追いし

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「あぁ、キラーってそういう意味なのか...」

 ラウムさんが納得したような顔でそう言った。

「つまり人食いウサギってことなんですかね...」

「ニンジンの代わりに人をポリポリ齧るってか...」

「それ笑えないし絵面的にもキツイですって...」

「今気付いたが『ニンジン』って漢字で書くと『人参』なんだよな...」

「だからなんなんですか...なにが言いたいんですか...」

「そういや昔、ウサギ追いしかの山~♪ の部分を ウサギ美味しいかの山~♪ って間違って覚えてて赤っ恥掻いたっけな...今となっては良い思い出だ...」

「いやそれ今なんか関係あります!?」

 私達がそんな風に漫才していると、

「クエッ! クエッ!」

 上空を舞うステラさんが二回鳴いた。そしてクルクルと旋回し始める。

「見付けたみたいだな」

「行きましょう」

 私達はステラさんが旋回している真下を目指して駆け出した。


◇◇◇


「うっわっ! デッカッ!」

 初めて見たキラーラビットはその巨体を真っ白な体毛で包み、爛々と光る真っ赤な瞳と口から伸びた二本の切歯をこっちに向けて威嚇して来た。

「フシュウッ!」

 私は収納から破邪の剣を取り出して構える。

「ラウムさん、挟み撃ちにしましょう。私は右から行きます」

「ちょっと待った、カリナ」

「はい?」

「殺しちゃマズいんじゃないのか? 生け捕りにしないと」

「あ、そうでした...」

 私達が逡巡している隙に、キラーラビットは身を翻して藪の中に消えた。

「あ、逃げた!」

「これぞまさしく脱兎の如くって感じだな」

「上手いこと言ってないで追いますよ...」

「ウサギ追いしかの山~♪」

「だからそれはもういいですって...」

 こうしてなんとも緊張感に欠ける中、私達とキラーラビットとの追い掛けっこが始まった。


◇◇◇


「クエッ! クエッ!」

「今度はあっちですか...フゥ...こうチョコマカと逃げ回られたんじゃ体力が持ちませんね...」
 
 もう何度目になるだろうか? キラーラビットを追い詰めては、その度に逃げられるということを繰り返している。それもこれも一重に目的が生け捕りのため、必然的に攻撃の手を緩めざるを得ないからに他ならない。

 誰も引き受けようとしなかった理由はこの辺にもあるのかも知れないな。

「こうなったら仕方ありません。ラウムさん、部分獣化をお願いします」

「え~...ウサギを相手に全力を出すなんてなんかイヤだな...」

「文句言わない。獅子はウサギを狩るにも全力を尽くすって言うじゃないですか?」

「いやだって...私、虎だし...」

「同じ猫科じゃないですか...」

 どうにもこうにも締まらない展開である。
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