空間魔法って実は凄いんです

真理亜

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信頼と覚悟

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「カリナさん、これだけは覚えておいて欲しいんですが...」

 不意にステラさんが食事の手を止めて居住まいを正したもんだから、私は何事か? と訝しんでステラさんに向き直った。

「はい?」

「我々獣人は普通の人よりも野生の血が色濃く反映されています。つまり、モデルとなった野生動物の本能に強く影響されがちなんです。私だったら鳥、ラウムさんだったら虎という具合に。それぞれ異なる種の動物のため、共通するような部分はあんまりないんですが、一つだけ共通する部分があります。なんだか分かりますか?」

「さ、さぁ...」

 私は首を捻った。

「他者に弱味を見せたがらないという点です」

「えっ...」

 私は絶句してしまった。

「これは鳥や虎に限らず、全ての野生動物に共通している点だと思うんですが、野生の世界では他者に弱味を見せるのは命取りになるんですよ」

「あっ...」

 私は再び絶句してしまった。

「だから本能的に隠そうとするんですよ。弱味を見せても良いと判断するのは、基本的に親兄弟など血が繋がった家族の前という場合に限ります。今回、ラウムさんがこのような弱味を見せてまで、なおも戦おうと決意してくれたということは、一重に我々を信頼してくれて身を委ねても良いと判断したからなんですよ。要するに、ラウムさんは我々のことを家族と同列に並べてくれているということになります」

「そうだったんですね...」

 私は改めてベッドに寝ているラウムさんの姿を眺めた。私達のために体を張ってくれたんだよね...私達のことを守ろうとしてくれたのかも知れないね...自分の弱味をさらけ出してまで...

 そう思うと私はなんだか目頭が熱くなって来た。

「もちろん、逆の立場だったらきっと私もラウムさんと同じことをしていたでしょう。それくらい、私にとってもこのパーティーは大事で、パーティーメンバー達のことも家族同然だと思っているんです。その点はラウムさんにも負けない自信がありますよ?」

 ステラさんは少しハニカミながらそう言って笑った。

「なるほど...良く分かりました...ステラさん、教えてくださってありがとうございます...」

「どういたしまして。では、すいませんが私はもう少し休ませていただきますね?」

「はい、そうしてください。ラウムさんの体が元に戻ったら、申し訳ありませんが王都まで飛んでいただくことになりますので」

「えぇ、心得ております。お任せください。緊急事態ですので一刻も早くギルドに知らせる必要がありますもんね」

「おっしゃる通りです。よろしくお願い致します」
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