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虎の能力
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「クエッ! クエ~!」
「ガオッ! ガオ~!」
私とラウムさんは呆然としながら空中を見上げ、ステラさんとグリフォンの空中戦を眺めることしか出来なかった。
ただ空中戦とは言ったものの、実態はステラさんが逃げ惑いそれをグリフォンが追っ掛けるという一方的な展開になっていた。戦いにすらなっていない。
「...あんなのどうやって倒せばいいんでしょうか...」
「...倒す倒さない以前に、どうやって攻撃すればいいのかすら分からん...」
ラウムさんの言う通りだ。私達二人の得物は剣なので当然ながら攻撃が届く訳がない。弓矢ならセリカさんが持っているが、あんな上空まで届くとは到底思えない。よしんば届いたとしても、矢をチョコチョコ当てたくらいで倒せるような相手ではないと思う。
「...どうしましょうか...」
「...私に聞かれても...」
私達が途方に暮れていると、追い掛けっこしていた二頭の獣? は次第に高度を下げて来た。やがてグリフォンの方が先に止まってホバリングに移行した。なにしてるんだろ?
「あっ!」
グリフォンの口元が赤く光ったと思ったら、そこから凄い勢いで火炎を放射した。狙いはもちろん、飛び回っているステラさんだ。
「く、クエ~!」
危ないところだったが、ステラさんは間一髪で火炎を避けた。
「...グリフォンって火を吐くんですね...」
「...そうみたいだな...私も初めて見た...」
私とラウムさんはどこか他人事みたいに現実逃避していた。
「クエッ! クエッ! クエ~!」
そんな私達とは裏腹に、グリフォンの攻撃の矢面に立たされているステラさんは生きた心地がしないのだろう。頻りに私達の方に向かって鳴き声を上げている。
「カリナ、このままじゃステラが危ない。いったん引き上げさせよう」
「そ、そうですね...」
とは言ったものの、実際問題として一体どうすれば良いのやら...セリカさんに瞬間移動で飛んで貰ってステラさんを回収し戻って来て貰う? いや、飛んだ瞬間に火炎を吐かれたらお二人とも黒焦げになってしまう...回収するタイミングが難しい...他になんか良い方法はないか...私が手をこまねいていると、
「私がグリフォンの注意を惹き付ける。その隙にステラを回収しろ」
そう言うなり、ラウムさんは急いで靴を脱いだ。なんと! その足先は虎の姿になっていた。
なるほど。これが以前ラウムさんが言ってた『部分獣化』ってヤツか。初めて見た私は、そんな場合じゃないのになんか感動していた。
「おいっ! ライオン野郎! こっちだ!」
ラウムさんは頭上に向かって大声を張り上げ、グリフォンの注意を惹こうとする。
「ガオゥ!」
釣られたグリフォンはターゲットをラウムさんに移行した。グリフォンが急降下してくる。
「フッ!」
ラウムさんが走り出した。そのスピードはまさに虎の如しだった。
「ガオッ! ガオ~!」
私とラウムさんは呆然としながら空中を見上げ、ステラさんとグリフォンの空中戦を眺めることしか出来なかった。
ただ空中戦とは言ったものの、実態はステラさんが逃げ惑いそれをグリフォンが追っ掛けるという一方的な展開になっていた。戦いにすらなっていない。
「...あんなのどうやって倒せばいいんでしょうか...」
「...倒す倒さない以前に、どうやって攻撃すればいいのかすら分からん...」
ラウムさんの言う通りだ。私達二人の得物は剣なので当然ながら攻撃が届く訳がない。弓矢ならセリカさんが持っているが、あんな上空まで届くとは到底思えない。よしんば届いたとしても、矢をチョコチョコ当てたくらいで倒せるような相手ではないと思う。
「...どうしましょうか...」
「...私に聞かれても...」
私達が途方に暮れていると、追い掛けっこしていた二頭の獣? は次第に高度を下げて来た。やがてグリフォンの方が先に止まってホバリングに移行した。なにしてるんだろ?
「あっ!」
グリフォンの口元が赤く光ったと思ったら、そこから凄い勢いで火炎を放射した。狙いはもちろん、飛び回っているステラさんだ。
「く、クエ~!」
危ないところだったが、ステラさんは間一髪で火炎を避けた。
「...グリフォンって火を吐くんですね...」
「...そうみたいだな...私も初めて見た...」
私とラウムさんはどこか他人事みたいに現実逃避していた。
「クエッ! クエッ! クエ~!」
そんな私達とは裏腹に、グリフォンの攻撃の矢面に立たされているステラさんは生きた心地がしないのだろう。頻りに私達の方に向かって鳴き声を上げている。
「カリナ、このままじゃステラが危ない。いったん引き上げさせよう」
「そ、そうですね...」
とは言ったものの、実際問題として一体どうすれば良いのやら...セリカさんに瞬間移動で飛んで貰ってステラさんを回収し戻って来て貰う? いや、飛んだ瞬間に火炎を吐かれたらお二人とも黒焦げになってしまう...回収するタイミングが難しい...他になんか良い方法はないか...私が手をこまねいていると、
「私がグリフォンの注意を惹き付ける。その隙にステラを回収しろ」
そう言うなり、ラウムさんは急いで靴を脱いだ。なんと! その足先は虎の姿になっていた。
なるほど。これが以前ラウムさんが言ってた『部分獣化』ってヤツか。初めて見た私は、そんな場合じゃないのになんか感動していた。
「おいっ! ライオン野郎! こっちだ!」
ラウムさんは頭上に向かって大声を張り上げ、グリフォンの注意を惹こうとする。
「ガオゥ!」
釣られたグリフォンはターゲットをラウムさんに移行した。グリフォンが急降下してくる。
「フッ!」
ラウムさんが走り出した。そのスピードはまさに虎の如しだった。
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