空間魔法って実は凄いんです

真理亜

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苦労話

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「お待たせしました」
 
 フローラさんが今日のお勧めを三人分運んで来てくれた。今日のメニューはステーキ丼だった。ちなみにラウムさんも同じものを頼んだとのこと。

『いただきま~す♪』

 ハードな一日だったせいでお腹ペコペコだった私達は、かなりボリューミーなメニューをあっという間に平らげた。ステラさんはお代わりまでしていた。

「あ、そうそう。カリナさん...」

 食後のデザートを運んできたフローラさんが私にそっと耳打ちした。仕事中だからね。私語はあんまりよろしくないということだろう。

「私の後任はすぐに決まりました...明日から店に入るとのことです...」

「それは良かったですね...」

 私もフローラさんに囁きで返しながら朗報に顔が自然と綻んだ。

「フローラのヤツなんだって?」

 それを見逃さなかったラウムさんがすかさず聞いてきた。

「フローラさんの後任が決まったそうです」

「本当か!? やったな!」

「随分早かったですね!」

「決まって良かったです!」

 お三方がそれぞれ喜びを表現する。

「後任の人は明日から店に入るそうです。なので早ければ今週中にはケリが付くんじゃないでしょうかね?」

「ん? なんでそんなに時間掛かる? 明日で終わるだろ?」

 ラウムさんが首を捻った。

「へっ!? だってこういう時って引き継ぎとかあるんじゃないんですか? 一緒に接客なんかして業務を覚えて貰うとか?」

「いやだから、飲食業の引き継ぎってそんくらいしかないだろ? そんなもん一日あれば十分覚えられるだろ?」

「そういうもんなんですか...」

 私ってバイトを経験したこともないからなぁ...飲食業の実態って良く分からんのよね...

「実際に私がそうだったからな」

「へっ!? ラウムさんが!?」

「あぁ、まだ冒険者として駆け出しの頃はとにかく金が無かったからな。バイト掛け持ちなんてザラだったよ。あの頃はホント辛かったなぁ...」

 ラウムさんがまた遠い目をした。

「そのお気持ち良く分かります...私もそうでしたから...」

 ステラさんが続いた。

「私もです...カリナさん、飲食業って人の入れ替わり立ち替わりが一番多い業種なんですよ...引き継ぎどころか...前任者が急に来なくなったんで、今日来てすぐ働けなんてのもザラです...」

「そ、そうなんですか...」

 セリカさんの言葉に他のお二方もうんうんと頷いているところ見ると、そういったことが日常茶飯事な世界なんだな...

 これまで苦労されてきたお三方に合掌!
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