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命懸け

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 思った通り居酒屋は既に開店していた。店内はまだそれほど混み合ってはいない。

 私達が席をどこにしようか迷っていると、

「おや? みんな、お疲れさん。首尾はどうだった?」

 先に来ていた二日酔いが手招きしている。

「えぇ、まぁまぁってところです。ところでラウムさん」

「きょ、今日は飲んでないからな!」

 機先を制された。見ると確かに酒は頼んでないようだった。

「あら? 皆さん、お帰りなさい」

 すると私達に気付いたフローラさんが接客に来てくれた。

「ただいまです。お腹空いたんで来ちゃいました」

「お疲れ様でした。お仕事の方は如何でしたか?」

「まぁ、可もなく不可もなくってところですかね」

「そうですか。あ、ご注文は如何しますか?」

 私はチラッとステラさんの方に目を向けた。すると首を横に振ったので、

「まずは食事をしたいです。今日のお勧めをお願いします。あ、お酒は結構です」

 さすがにみんな学習したようでなによりだ。

「分かりました」

「それで? 今日はどんな仕事を受けたんだ?」

 フローラさんが下がった後、ラウムさんがそう聞いてきた。

「実はですね...」

 私は事の顛末を掻い摘んで説明した。するとラウムさんは苦笑しながら、

「なるほど...大変な目に遭ったんだな...まぁ、なんだその...何事も経験だよな...」

 同情するような目を向けてくるもんだから、私達も苦笑で返すしかなかった。

「なんかすまん...私がその場に居ればアドバイス出来たものを...」

「えっ!? もしかしてラウムさん、害獣駆除の経験があったりするんですか!?」

「あぁ、何度かある。コウモリってヤツは血を吸わないタイプのヤツでも、家の軒先に巣を作って糞を撒き散らしたり、鳴き声が五月蝿かったりで迷惑だから駆除の対象になってるからな」

「そうだったんですね...」

 まさかの害獣駆除経験者だったよ! 全くもう! なんで二日酔いだったんだよ~ ! 一緒に来てくれたらあんな怖い思いしなくて済んだものを...

「コウモリ以外にも色々駆除したなぁ...畑を荒らすイノシシやシカ、ウサギやアライグマなどなど。でも一番苦労したのはやっぱりオオスズメバチだったなぁ...」

「オオスズメバチ...ですか...」

 名前を聞いただけでもヤバそうな相手だと本能的に理解した。

「あぁ、あれは比喩じゃなく本当に命懸けだったよ...」

 ラウムさんが遠い目をする。

 そっかぁ...魔物相手じゃなくても、冒険者の仕事ってのは常に危険と隣り合わせなんだねぇ...

 私はしみじみとそう思ったもんだった。
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