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パァーッと
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「ご忠告ありがとうございます。すぐに手配したいと思います。ところで...」
ナディアさんは吸血コウモリの亡き骸を見ながら首を捻った。
「なんでみんな焼き焦げているんでしょうか?」
「あぁ、それはですね...」
私はこうなった経緯を掻い摘んでナディアさんに説明した。
「えっ!? そんなにご苦労なさってたんですか!?」
「はい、そうですけど...」
「私はてっきり殺鼠剤を使って駆除したんだとばっかり...」
「殺鼠剤!? なんですかそれ!?」
「読んで字のごとく、鼠を駆除する時に使う薬品です。鼠だけじゃなくコウモリにも効果があるので、こういった駆除依頼には必須になってくるんですが...」
「そんな薬品があるんですね...知りませんでした...」
ほら、やっぱり! もっと簡単お手軽に駆除できる方法あったんじゃん! それなら多少時間は掛かっても、いったん町に戻って殺鼠剤を手に入れて、また戻れば良かったじゃん!
あ、それと今になって思い付いたけど、なにもウチら全員で往復する必要もなかったよね? ステラさんに鳥になって貰ってさ、飛んで往復して貰えば良かったんだよ。
そうすれば、吸血コウモリが活発に活動し始める夕方前に余裕で戻って来れたはずだし、あんな危険を冒す必要なんてどこにもなかったんだ。
私はなんとも言えない気持ちでステラさんの方を見た。ステラさんも同じことを考えていたのかスッと目を逸らした。
「まぁ、なにはともあれお疲れ様でした。依頼完了の手続きを行いますので窓口の方へどうぞ」
こうして鉱山都市ビエンのギルドにおける初の依頼は、なんともしっくり来ない結末となったのだった。まぁ、駆除自体は完了してるんで結果オーライっちゃオーライなんだけどね...
◇◇◇
「..え~と...なんかその...色々とすいませんでした...」
ギルドからの帰り道、私達はなんとなく無言になって歩いていたが、徐にステラさんが沈黙を破って謝罪した。
「あぁ、いえいえ...それを言うなら私も...もうちょっと強目に主張するべきでしたし...お互い様ってことで...」
ステラさんの飛行能力のことをすっかり失念してたしね。
「...あ、あの! 取り敢えず依頼は完了した訳だし、依頼料も入ったことだし、パァーッて派手に打ち上げとかしませんか?」
そんな私達の微妙な雰囲気を吹き飛ばすかのように、セリカさんは殊更明るく振る舞った。
「いいですね、それ! ちょうどこの時間ならフローラさんとこの居酒屋も開店してる時間だし、いっちょパァーッと盛り上がりますか!」
私もそれに乗っかることにした。今日ばかりは酒とタバコの匂いも我慢しよう。
ナディアさんは吸血コウモリの亡き骸を見ながら首を捻った。
「なんでみんな焼き焦げているんでしょうか?」
「あぁ、それはですね...」
私はこうなった経緯を掻い摘んでナディアさんに説明した。
「えっ!? そんなにご苦労なさってたんですか!?」
「はい、そうですけど...」
「私はてっきり殺鼠剤を使って駆除したんだとばっかり...」
「殺鼠剤!? なんですかそれ!?」
「読んで字のごとく、鼠を駆除する時に使う薬品です。鼠だけじゃなくコウモリにも効果があるので、こういった駆除依頼には必須になってくるんですが...」
「そんな薬品があるんですね...知りませんでした...」
ほら、やっぱり! もっと簡単お手軽に駆除できる方法あったんじゃん! それなら多少時間は掛かっても、いったん町に戻って殺鼠剤を手に入れて、また戻れば良かったじゃん!
あ、それと今になって思い付いたけど、なにもウチら全員で往復する必要もなかったよね? ステラさんに鳥になって貰ってさ、飛んで往復して貰えば良かったんだよ。
そうすれば、吸血コウモリが活発に活動し始める夕方前に余裕で戻って来れたはずだし、あんな危険を冒す必要なんてどこにもなかったんだ。
私はなんとも言えない気持ちでステラさんの方を見た。ステラさんも同じことを考えていたのかスッと目を逸らした。
「まぁ、なにはともあれお疲れ様でした。依頼完了の手続きを行いますので窓口の方へどうぞ」
こうして鉱山都市ビエンのギルドにおける初の依頼は、なんともしっくり来ない結末となったのだった。まぁ、駆除自体は完了してるんで結果オーライっちゃオーライなんだけどね...
◇◇◇
「..え~と...なんかその...色々とすいませんでした...」
ギルドからの帰り道、私達はなんとなく無言になって歩いていたが、徐にステラさんが沈黙を破って謝罪した。
「あぁ、いえいえ...それを言うなら私も...もうちょっと強目に主張するべきでしたし...お互い様ってことで...」
ステラさんの飛行能力のことをすっかり失念してたしね。
「...あ、あの! 取り敢えず依頼は完了した訳だし、依頼料も入ったことだし、パァーッて派手に打ち上げとかしませんか?」
そんな私達の微妙な雰囲気を吹き飛ばすかのように、セリカさんは殊更明るく振る舞った。
「いいですね、それ! ちょうどこの時間ならフローラさんとこの居酒屋も開店してる時間だし、いっちょパァーッと盛り上がりますか!」
私もそれに乗っかることにした。今日ばかりは酒とタバコの匂いも我慢しよう。
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