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捕獲

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 その後、閉店時間に近付くまでフランツ氏が姿を現すことはなかった。

 店内組のラウムさんは手持ち無沙汰な様子で、セリカさんに至ってはウトウトと船を漕いでいる始末だ。説教ネタが一つ増えたな。

 私達にもそんな弛緩した空気が流れ始めた頃だった。閉店間際、お客さんの数も疎らになった辺りで、ラウムさんが緊張感を強めたのが分かった。

「来ましたよ」

 私も目視で確認した。まるで幽鬼のような様子のフランツ氏が、フラフラとした足取りで店の中に入って来た。

 そしてフローラさんの姿を見付けるや否や、急にしっかりとした足取りになって近付いて行った。

 すかさずラウムさんが立ち上がって進路を塞ぐ。

「なんだお前は!? そこをどけ! 俺はあの女に用があるんだ!」

 私は唾を飛ばしながら喚き散らすフランツ氏に亜空間から近付き、物も言わず亜空間へと引っ張り込んだ。ついでにラウムさんも回収する。セリカさんは放っておいた。

「な、なんだなんだ!? い、一体なにが起こった!? こ、ここはどこだ!?」

 フランツ氏がパニックに陥った。まぁ無理もないが。

「こんばんわ、フランツさん。お久し振りですね。私のことを覚えていますか?」

「あ、お前は! フローラの護衛をしている冒険者!」

「えぇ、そうです。覚えて頂いていたとは光栄ですね」

 私は心にもないことを言った。

「一体なんの真似だ!? ここは一体なんだ!?」

「ここは私が作った亜空間の中ですよ」 

「亜空間!? なんだそりゃ!?」

 まぁ普通の生活をしている人には馴染みがなくて当然だよね。

「空間魔法の一種ですよ。私は空間魔法使いなんで」

「空間魔法だとぉ!? そんな魔法聞いたことないぞ!?」

「まぁそりゃそうでしょうねぇ。あんまりメジャーな魔法じゃありませんから」

 私だってセリカさん以外に会ったことないもんね。

「そうなのか...って、そんなもんどうだっていい! なんだって俺をこんな所に連れ込みやがったんだ!?」

「あなたとちょっとお話ししたいと思ったからご招待したんですよ」

「話だと!? 一体なんなんだ!? それにあれは招待じゃなくて拉致だろ!?」

 フランツ氏、中々に鋭いじゃないか。確かに拉致ったってのも強ち間違ってはないわな。

「まぁまぁ、落ち着いて下さいな。話はすぐ終わりますから。フランツさん、あなたは金で雇った破落戸に私達を襲うよう依頼しましたね?」

 私はいきなり核心を突くことにした。

「な、なんのことだ!? ま、全く記憶にないが!?」

 フランツ氏は目を泳がせながらシラを切った。

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