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魔道具

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「おい! 遅ぇじゃねぇかよ! こちとら腹が減って死にそうなんだ! さっさと今日の分を出しやがれ!」

 私達の目の前で、バインドロープで手足を縛られた破落戸の男が叫んでいる。

「か、カリナ! こ、これは!?」

 ラウムさんが目を丸くして尋ねて来る。

「先日、私達を襲って来た破落戸共の内の一人です。なにか役に立つかも知れないと思って確保しておいたんですよ」

「なるほど...証言をさせるためですね?」

 さすがアスカさんは呑み込みが早い。

「えぇ、その通りです。残念ながら黒いフードを目深に被っていたそうなんで顔は見れなかったらしいんですが、声はもう一度聞いたら同定できるそうです」

「つまりストーカー野郎を捕まえて来て、この男に面通しというか耳通しをさせればいいんですね?」

 ステラさんがキレイに纏めてくれた。

「そういうことです。本当は住居不法侵入や器物破損、暴行未遂の教唆として立件をしたい所なんですが、それは無理そうなんで暴行教唆の罪のみで立件しようと思います。ちょっと弱い罪なんですけどね。でもまぁ、取り調べ次第では別件に関しても吐かせることが出来るんじゃないかと期待してます」

「やい! なにをごちゃごちゃ言ってやがんだ! とっとと飯を出しやがれ!」

 そこでまた破落戸の男が騒ぎ出した。五月蝿いな全く...

「セリカさん、すいませんがなにか適当に身繕って出して貰っていいですか?」

「あ、はいはい...」

 セリカさんが収納から焼肉定食っぽいメニューを取り出した。

「ありがてぇ! って、ちょっと待てぃ! このロープを外してくれなきゃ食えねぇじゃねぇかよ!」

「仕方ない。手だけ外してあげますよ」

 私は手を縛っているバインドロープの方だけを外した。

「カリナさん、そのロープって...」

 目ざといアスカさんが真っ先に気付いたようだ。そう言えばこの中じゃセリカさん以外は初見だったね。

「これはバインドロープって言って、魔力を流して敵を拘束する魔道具なんですよ」

「そうなんですね...初めて見ました...」

「あぁ、確かに。隣国じゃ割かし有名みたいなんですが、我が国じゃあんまり見掛けないですよね」

「隣国? ということは、カリナさんはこの魔道具を隣国で手に入れたってことですか?」

「えぇ、まぁ...しばらく隣国で暮らしていた時期があったもので...」

 私は遠い目をした。

「そうだったんですね...」

「フゥ...美味かった...生き返ったぜ...」

 どうやら破落戸の男が食い終わったようだ。

「良かったですね。それじゃあ」

 私は破落戸の男の手を再びバインドロープで拘束した。

「ぐおっ!? またかよ!?」

 当然じゃん。
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