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回想

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「後で面通しして貰うからに決まってるじゃありませんか。あ、この場合は声通しって言うのかな?」

「へっ!? それってどういう意味なんだ!?」

「言葉通りの意味ですよ。あなたを雇った男を捕まえたら、声を聞いて証言して貰うってことです」

「ということは、既にその野郎の目星が付いてるってことなのか?」

「察しがいいですね。その通りですよ。だから男を捕まえるまで、あなたにはここに居て貰います。それじゃあ」 

「ままま待ってくれ! せめて! せめてロープを解いてくれよ!」

「食事の時間になったら解いてあげますよ。一日一食ですが」

「少なっ! せ、せめて二食にしてくれよ!」

「捕虜の分際でなに贅沢言ってんですか。食事抜きにしますよ?」

「わ、分かったよ! す、済まなかった! だ、だから食事抜きは勘弁してくれ!」

「分かりゃいいんですよ」


◇◇◇


 破落戸との不快な面会を終えた私は、ちょっと気分を変えようと思って外に出た。

「フゥ...寒っ! やっぱりまだ朝方は冷え込むな...」

 今の季節は立春を迎えたばかり。昼間はポカポカと暖かいが、朝晩はやはりまだ冷たさが残る。

 私は空を見上げた。満天の星空が瞬いているが、地平線の彼方は薄らと白くなり始めて来ている。そろそろ夜明けが近い。

 思いっきり深呼吸してみた。冷たい夜気に肺が萎む。私は身震いしながらこれまでのこと、これからのことに思いを馳せていた。

 結局、人は一人では生きられないってことなんだろうな。最初にステラさんが私を探しにこの町に来た時、口ではああ言っていたし態度もツンケンしたものだったが、実際の所は心の奥底で探しに来てくれたことが嬉かったんだと今になってつくづくそう思う。

 だってステラさんに会った時も、他のお三方に会った時も、ビックリはしたけどイヤだなって気持ちにはならなかったんだから。

 やっぱりケンカ別れしたままっていうのは良くないよなって思う。ちゃんと話し合ってみれば、こうやってお互いに歩み寄れた部分もあった訳だし。

 そりゃ全ての蟠りが消えたって訳じゃないけど、もう一度戻るって決めた以上は、これからもっとみんなに歩み寄れるように努力をして行こうと心に決めた。

 私はまだ夜が明けきらぬ薄暗い街頭を一人歩きながら、そんなことを考えていたのだった。

「ぶへっくしょん! やっぱ寒っ! 朝の散歩とシャレ込むには寒過ぎるわ! 風邪引いてまう! ぶへっくしょん! 畜生!」

 早々に亜空間へと引き返したのはご愛嬌ということで...
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