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挟撃

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「グワオオオッ!」

 襲って来たのはホーンベアーだった。頭に二本の角が生えた巨大な熊だ。灰色の毛に覆われた逞しい体は、全長3mを優に超えるだろうか。今は二本足で立ち上がってこちらを威嚇しているから尚更大きく見える。

「この辺りのヌシってところか。私が相手する。アスカ、援護を頼む」

「分かりました」

 ラウムさんがバスターソードを構えてホーンベアーと対峙する。ホーンベアーは鋭く長い爪と凶悪そうな牙で迎え撃つ構えだ。

「ハァッ!」

 ラウムさんが踏み込み、バスターソードをホーンベアーに叩き付ける。だが、前足で防がれてしまう。

「グワオオオッ!」

 今度はホーンベアーが反撃して来た。鋭い爪がラウムさんを襲う。

「フンッ!」

 ラウムさんはホーンベアーの攻撃をバスターソードで受け止める。両者一進一退。良い勝負だ。

 アスカさんはまだ援護には回らない。一番良いタイミングを図っているんだろう。緊張感が高まって来たその時、

「ウッヒャアアアッ!」

 なんとも間の抜けた声が響いて来た。ナタリアさんとヒルダさんを連れて、瞬間移動で安全圏に避難していたはずのセリカさんの声だった。

「えっ!? セリカさん!? なんで戻って来ちゃってんですか!?」

「す、すいません! 瞬間移動で後方に避難したんですが、ちょうどそこに熊が現れまして! パニックになって戻って来ちゃいました!」

 見ると確かに私達の後ろの方から、なにやらガサゴソと藪を掻き分けるような音が聞こえて来る。

「どうやら挟撃されたみたいですね」

 アスカさんが冷静に分析する。

「挟撃!? アスカさん、相手は熊ですよ!? 群れる動物じゃないでしょう!?」

 動物っていうか魔物だけどね。ただ魔物とは言っても、その元になった動物の習性は受け継いでるはず。熊が群れるなんて聞いたこともない。

「ホーンベアーは番で行動する魔物なんです。恐らく前に居るのがオスで、後ろから近付いて来るのがメスだと思います」

 なるほど。そういうことか。その時、後ろから近付いて来ていたホーンベアーが姿を見せた。

「グワオオオッ!」

 確かにアスカさんの言う通り、前の方でラウムさんと対峙しているホーンベアーより一回り小さい。こっちがメスなのも間違いないようだ。

「私が行きます。カリナさんは依頼者の保護の優先を」

 そう言うなりアスカさんはメスのホーンベアーに向かって行った。

「分かりました! お願いします! ナタリアさん、ヒルダさん、取り敢えず亜空間に避難してて下さい! セリカさんもついでに!」 

「「「 はいっ! 」」」
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