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野宿

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 マリス様の実家の領地であるオコネル領へと出発する当日、待ち合わせ場所であるマリス様の家に着くと、マリス様の婚約者が手配したという3人の護衛は既に来ていた。

「へへへ、お嬢ちゃんがマリス様の手配した護衛かい? 中々良い女じゃねぇか。俺のタイプだぜ?」 

「...はい、冒険者のカリナと申します」

「フンッ! 護衛なんざ俺達だけで十分だってのに、マリス様も用心深いこった! 付いて来るのは勝手だが、俺達の邪魔だけはするんじゃねぇぞ!」

「...分かりました」 

「まぁまぁ、抑えて抑えて。こんなべっぴんさんと旅が出来るんだぜ? 喜ばしいことじゃねぇか。お嬢さん、よろしく頼むぜい」

「...よろしくお願いします」

 三者三様で好き勝手なこと言ってるが、なんだろう...どう見てもコイツら堅気には見えないんだけど...マリス様の婚約者はこんなのどこから連れて来たんだ?

 マリス様の気持ちが良く分かるわ。こんなのと一緒に旅なんかしたくないよね。しかもマリス様だけじゃなく、私のことも頭の天辺から足の爪先まで舐め回すように見て来るし。普通にキモいんだけど...こんなのと2日も一緒だなんて今から憂鬱だわ...


◇◇◇


 嫌な気分のままスタートした旅だったが、幸い馬車の中は私とマリス様の2人っきりだ。あいつらはそれぞれ御者をやったり馬に乗って付いて来たりしている。

 顔を合わすことも言葉を交わすこともないので、その辺は助かってる。

 時間があるので、私はマリス様に婚約者のことを聞いてみることにした。

「...なるほど、すると政略目的の結婚ということですか...」

「えぇまぁ...あちらも男爵家でウチと家格は同じなんですが、事業に失敗して借金を抱えているんです。ウチは男爵家ですが、そこそこ裕福な方ではあるので、目を付けられたと言いますか...」

 まぁ貴族の間では良くある話だよねぇ。向こうは金が目的ってヤツ? マリス様があんまり乗り気じゃないように見えるのはそのせいか。


◇◇◇


 やがて日が暮れて来たので、そろそろ今夜の宿をと思っていたら、ちょっとした林の中で馬車が止まった。訝しんだ私は御者席の男に話し掛ける。

「どうしたんですか? 早く行かないと日が暮れますよ? 暗くなる前に町か村に着かないと」

「あぁっ!? 何言ってんだ!? 今夜はここで野宿だぞ!?」

「なっ!? 女性が居るんですよ!? 何考えてんですか! 野宿なんてさせられる訳ないでしょうが!」

「嫌なら歩いて行ったっていいんだぜ!? 今夜中に次の町に着けるといいなぁ! ゲヒゲヒッ!」

 ...なるほど、そう来るか...

 そっちがその気ならこっちにだって考えがあるんだ!
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