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黒い狼
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その黒い狼は、通常サイズの狼の軽く3倍はあるんじゃないか? と思うくらいデカかった。
体高は約3m、全長は約5m程だろうか? 通常サイズの狼が子犬に見える大きさだ。真っ黒な体毛は艶があり鈍く光って見える。赤い瞳は爛々と輝き、鋭い眼光を放っている。
大きな口は耳元まで裂け、狂暴そうな牙が並んでいるのが見える。なんと言うか、全身から禍々しいオーラが出ているのをひしひしと感じる。
私は亜空間の一部を可視化して、みんなにも見て貰った。すると、
「狼を統べる者...」
ケリー様がボソッと呟く。
「えっ!? 今なんて!?」
「あの黒い狼のことだよ...俺も初めて見るがあれは魔物だ。全ての狼の上に君臨する者、狼を統べる者と呼ばれている。名は確か『ロボ』と言ったか」
魔物かぁ。あの大きさといい、全身に溢れる禍々しいオーラといい、確かにただ者ではないとは思ったけど。強そうだな...
「僕が行こう。カリナ、亜空間を解除してくれ」
イアン様は殺る気満々だ。確かにイアン様の強力な魔法なら勝ち目はあるかも知れないけど、相手が魔物だからなぁ。魔法に対する防御力は高いだろうから、万が一効かなかったことを考えるとリスクは冒したくないなよなぁ。
「分かりました。付いて来て下さい」
私はイアン様を連れて、未だに私達の居た辺りをしつこく嗅ぎ回っている『ロボ』の頭上に移動した。
「ここから手だけ出して攻撃して下さい。万が一効かなくても反撃されることはありませんので、おもいっきりやっちゃって下さいね」
「わ、分かった」
イアン様が範囲攻撃魔法を展開すると『ロボ』を中心に氷の花が開いたような光景が広がった。だが...
「やっぱり効かないか...」
『ロボ』は何事もなかったかのように佇んでいる。イアン様は落ち込んでしまった。無理も無いけど。相手の魔法防御力がそれだけ高いってことだから仕方ないのかな。
「今度は物理で攻撃してみますね」
私はいつも通り相手の背後に回って、首の後ろの急所にレイピアを突き立てる。だが...
カキインッ!
そんな擬音と共にレイピアが弾かれた。いやマジかこれ。物理防御力も半端ないな。
「ウオォォォンッ!」
「どわっ!」
油断してたら亜空間から外に出していた腕を食いちぎられる所だった。危ない危ない...
「さて、どうするかな...」
魔法もダメ、物理もダメとなると...他に何かないかな.. 私は無意識にポケットを探っていた。
「ん? なんだこれ?」
それはミネルバがイアン様に媚薬だとウソを吐いて渡した、シアン化カリウムの薬瓶だった。どさくさ紛れでポケットに入れたままになってたのか。
もしかしたらこれなら効くかな? やってみるか。私は『ロボ』の頭上から顔を出す。相手が飛び上がって来ても届かない絶妙な位置に。
「狼ちゃ~ん♪ こっちでちゅよ~♪」
「ウオォォォンッ!」
挑発したら大口開けて飛び上がって来た。私はそっと口の中にシアン化カリウムを流し込む。すると...
「キャウンッ!」
泡を吹いてぶっ倒れた。
毒に対する耐性はなかったみたいだね。
体高は約3m、全長は約5m程だろうか? 通常サイズの狼が子犬に見える大きさだ。真っ黒な体毛は艶があり鈍く光って見える。赤い瞳は爛々と輝き、鋭い眼光を放っている。
大きな口は耳元まで裂け、狂暴そうな牙が並んでいるのが見える。なんと言うか、全身から禍々しいオーラが出ているのをひしひしと感じる。
私は亜空間の一部を可視化して、みんなにも見て貰った。すると、
「狼を統べる者...」
ケリー様がボソッと呟く。
「えっ!? 今なんて!?」
「あの黒い狼のことだよ...俺も初めて見るがあれは魔物だ。全ての狼の上に君臨する者、狼を統べる者と呼ばれている。名は確か『ロボ』と言ったか」
魔物かぁ。あの大きさといい、全身に溢れる禍々しいオーラといい、確かにただ者ではないとは思ったけど。強そうだな...
「僕が行こう。カリナ、亜空間を解除してくれ」
イアン様は殺る気満々だ。確かにイアン様の強力な魔法なら勝ち目はあるかも知れないけど、相手が魔物だからなぁ。魔法に対する防御力は高いだろうから、万が一効かなかったことを考えるとリスクは冒したくないなよなぁ。
「分かりました。付いて来て下さい」
私はイアン様を連れて、未だに私達の居た辺りをしつこく嗅ぎ回っている『ロボ』の頭上に移動した。
「ここから手だけ出して攻撃して下さい。万が一効かなくても反撃されることはありませんので、おもいっきりやっちゃって下さいね」
「わ、分かった」
イアン様が範囲攻撃魔法を展開すると『ロボ』を中心に氷の花が開いたような光景が広がった。だが...
「やっぱり効かないか...」
『ロボ』は何事もなかったかのように佇んでいる。イアン様は落ち込んでしまった。無理も無いけど。相手の魔法防御力がそれだけ高いってことだから仕方ないのかな。
「今度は物理で攻撃してみますね」
私はいつも通り相手の背後に回って、首の後ろの急所にレイピアを突き立てる。だが...
カキインッ!
そんな擬音と共にレイピアが弾かれた。いやマジかこれ。物理防御力も半端ないな。
「ウオォォォンッ!」
「どわっ!」
油断してたら亜空間から外に出していた腕を食いちぎられる所だった。危ない危ない...
「さて、どうするかな...」
魔法もダメ、物理もダメとなると...他に何かないかな.. 私は無意識にポケットを探っていた。
「ん? なんだこれ?」
それはミネルバがイアン様に媚薬だとウソを吐いて渡した、シアン化カリウムの薬瓶だった。どさくさ紛れでポケットに入れたままになってたのか。
もしかしたらこれなら効くかな? やってみるか。私は『ロボ』の頭上から顔を出す。相手が飛び上がって来ても届かない絶妙な位置に。
「狼ちゃ~ん♪ こっちでちゅよ~♪」
「ウオォォォンッ!」
挑発したら大口開けて飛び上がって来た。私はそっと口の中にシアン化カリウムを流し込む。すると...
「キャウンッ!」
泡を吹いてぶっ倒れた。
毒に対する耐性はなかったみたいだね。
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