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トカゲの尻尾切り
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その日はさしものカリナも二倍に増えた課題を前にウーウー唸っていた。
俺はそれを満足気に見やりながら書類仕事に精を出していた。そこへ、
「殿下! ウィラー侯爵に動きがありました!」
「王都の外れにあるスラム街の一角に向かっているとのことです!」
カイルとアランが急を告げに来た。
「スラム街か...分かった。お前達もすぐ向かってくれ。くれぐれも用心してな?」
「「 はっ! 」」
俺は出て行く二人を見送りながら、
「待てやコラ。どこ行く気だ?」
カリナの襟首を掴んで止めていた。
「あう...なんでバレたし...」
「バレいでか! 余計なことすんな!」
「でもでも~! きっと私、お役に立ちますって~! 行かせて下さいよ~!」
「いいから! お前は課題をさっさと終わらせろ!」
「もう飽きました~! 体を動かさないと感覚が鈍っちゃいますよ~!」
「ダメったらダメだ!」
「あ~ん、イケズ~!」
拗ねてる姿も可愛いな...じゃなくて! ここは心を鬼にして、カリナにはしっかり勉強させないとな! 俺達の未来のために!
◇◇◇
「ご苦労、どんな感じだ?」
「中に入ったまま動きはありません」
「裏口は抑えたか?」
「はい、抜かりありません」
カイルとアランはウィラー侯爵が入って行ったという、古びた民家の前に着いていた。先遣隊の近衛騎士が周りを囲っている。
「おい、アラン! あれを見ろ!」
カイルが叫ぶ方向を見ると、民家の裏手から煙が立ち昇っているのが確認できた。
「マズい! 全員突撃せよ!」
アランの号令の元、近衛騎士隊が民家に突入する。中は既に火の海だった。
「火を消せ! 急げ!」
隊員の中で水魔法が得意な者が消火に当たる。火はすぐに消し止められたが、焼け跡には...
「ウィラー侯爵...」
既に事切れているウィラー侯爵の遺体が横たわっていた。
「トカゲの尻尾切りってことか...」
ウィラー侯爵の遺体を調べながら、アランがそう言った。
「なっ!? そこらの兵隊じゃなく、仮にも侯爵だぞ!? それって陣営のパワーバランス的にどうなんだ!?」
ビックリしながらカイルがそう言った。
「それだけヤツらが本気だってことだろ...」
そう言ったアランの顔は苦虫を噛み潰したようだった。
◇◇◇
「アッシュ殿下、完了したとのことです」
「そうか、証拠は残してないだろうな?」
「抜かりありません」
アッシュは自分の執務室でゲイルからの報告を聞いて表情を変えずに頷いた。
「しかし本当によろしかったので?」
「構わん。ウィラーのヤツは小心者だからな。余計なことを喋られる前に始末しとかんと。アクセルに気付かれたら元も子もないからな。それに」
アッシュはいったん言葉を切って、
「もうすぐこの国を手中に収めることになるんだ。侯爵の1人や2人どうってことないさ」
そう言って暗く嗤った。
俺はそれを満足気に見やりながら書類仕事に精を出していた。そこへ、
「殿下! ウィラー侯爵に動きがありました!」
「王都の外れにあるスラム街の一角に向かっているとのことです!」
カイルとアランが急を告げに来た。
「スラム街か...分かった。お前達もすぐ向かってくれ。くれぐれも用心してな?」
「「 はっ! 」」
俺は出て行く二人を見送りながら、
「待てやコラ。どこ行く気だ?」
カリナの襟首を掴んで止めていた。
「あう...なんでバレたし...」
「バレいでか! 余計なことすんな!」
「でもでも~! きっと私、お役に立ちますって~! 行かせて下さいよ~!」
「いいから! お前は課題をさっさと終わらせろ!」
「もう飽きました~! 体を動かさないと感覚が鈍っちゃいますよ~!」
「ダメったらダメだ!」
「あ~ん、イケズ~!」
拗ねてる姿も可愛いな...じゃなくて! ここは心を鬼にして、カリナにはしっかり勉強させないとな! 俺達の未来のために!
◇◇◇
「ご苦労、どんな感じだ?」
「中に入ったまま動きはありません」
「裏口は抑えたか?」
「はい、抜かりありません」
カイルとアランはウィラー侯爵が入って行ったという、古びた民家の前に着いていた。先遣隊の近衛騎士が周りを囲っている。
「おい、アラン! あれを見ろ!」
カイルが叫ぶ方向を見ると、民家の裏手から煙が立ち昇っているのが確認できた。
「マズい! 全員突撃せよ!」
アランの号令の元、近衛騎士隊が民家に突入する。中は既に火の海だった。
「火を消せ! 急げ!」
隊員の中で水魔法が得意な者が消火に当たる。火はすぐに消し止められたが、焼け跡には...
「ウィラー侯爵...」
既に事切れているウィラー侯爵の遺体が横たわっていた。
「トカゲの尻尾切りってことか...」
ウィラー侯爵の遺体を調べながら、アランがそう言った。
「なっ!? そこらの兵隊じゃなく、仮にも侯爵だぞ!? それって陣営のパワーバランス的にどうなんだ!?」
ビックリしながらカイルがそう言った。
「それだけヤツらが本気だってことだろ...」
そう言ったアランの顔は苦虫を噛み潰したようだった。
◇◇◇
「アッシュ殿下、完了したとのことです」
「そうか、証拠は残してないだろうな?」
「抜かりありません」
アッシュは自分の執務室でゲイルからの報告を聞いて表情を変えずに頷いた。
「しかし本当によろしかったので?」
「構わん。ウィラーのヤツは小心者だからな。余計なことを喋られる前に始末しとかんと。アクセルに気付かれたら元も子もないからな。それに」
アッシュはいったん言葉を切って、
「もうすぐこの国を手中に収めることになるんだ。侯爵の1人や2人どうってことないさ」
そう言って暗く嗤った。
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