上 下
53 / 462

第1王子アッシュ

しおりを挟む
「この娘はカリナと言って俺の護衛を勤めてくれているんだ」

 私が答えるより先にアクセル様が答えてしまったので、

「カリナと申します。以後お見知り置きの程を」

 私は挨拶するだけに留めておいた。

「「 護衛ですってぇ~? 」」

 また息ピッタリだなお前ら。ホントは仲良しなんじゃね? まぁともあれ、そう言いたい気持ちも良く分かる。なにせ私今ドレス姿だからね。剣も持ってないし。

「「 あんなみたいな女に護衛なんか務まるのかしらぁ~? 」」

 いやもう突っ込むのは止めよう...アクセル様が反論しようとした時だった。

「...騒がしいな。何事だ?」

「兄上...」

 兄上? アクセル様が兄上って呼ぶってことは、この人が第1王子のアッシュ殿下か。金髪碧眼。そこだけ取って見ればアクセル様と同じだが、その他はまるで違う。顔は整っているんだけど、なんていうかアクセル様と比べて冷たい印象を受ける。

 期せずして王族全員と会った訳だが、陛下と王妃、アクセル様だけだったら普通の親子に見えただろう。陛下の下半身が旺盛じゃなかったら、こんな似てない兄弟姉妹が誕生することはなかっただろうに...ホント男って生き物は...

「アクセルか。こんな所でなにをしてる? 父上のご機嫌取りか?」

「兄上こそ...」

「俺はただの見舞いだよ。そのついでに可愛い妹達の顔でも見ようと思ってな」

 そう言って姫君達の方を見るが、姫君達はサッとアクセル様の背中に隠れてしまった。嫌われてるってのはホントみたいだね。

「ところでアクセル、このお嬢さんは? 新しい婚約者候補か?」

 姫君達に避けられてると見るや、ターゲットを私に変更して来た。

「いえ、この娘はカリナ。私の護衛を勤めてくれています」

「護衛? 護衛か、これはいい。クックックッ、ベッドの中まで護衛してくれるのかな?」

 そう言って私の頭の天辺から足の爪先まで、じっくりと舐め回すように視線を這わして来た。うっ! 気持ち悪い! なんだか爬虫類みたい目をしてるんだもん!

「兄上、彼女を侮辱するのは止めて頂きたい...」

「「 最低... 」」

 アクセル様と姫君達も不快感を顕にする。姫君達はずっとシンクロしている。絶対仲良しだ。

「クックックッ、カリナとか言ったな? どうだ? アクセルの護衛なんか辞めて、俺の護衛にならないか? アクセルより良い思いをさせてやるぞ?」

 今にも舌舐りしそうな感じでアッシュ殿下がそう言った。それに対してアクセル様の怒りが爆発しそうになった時だった。

「殿下、そろそろ参りませんとお時間が...」

 いつの間にそこに居たのか、アッシュ殿下のすぐ側で黒髪黒目のヒョロっと背が高い男がそう言った。頬は痩せこけ目がギョロギョロしている。

 私は直感した。

 この男! ただ者ではない! 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

森だった 確かに自宅近くで犬のお散歩してたのに。。ここ  どこーーーー

ポチ
ファンタジー
何か 私的には好きな場所だけど 安全が確保されてたらの話だよそれは 犬のお散歩してたはずなのに 何故か寝ていた。。おばちゃんはどうすれば良いのか。。 何だか10歳になったっぽいし あらら 初めて書くので拙いですがよろしくお願いします あと、こうだったら良いなー だらけなので、ご都合主義でしかありません。。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

今さら帰ってこいなんて言われても。~森に移住した追放聖女は快適で優雅に暮らす~

ケンノジ
ファンタジー
「もうお前は要らない女だ!」 聖女として国に奉仕し続けてきたシルヴィは、第一王子ヴィンセントに婚約破棄と国外追放を言い渡される。 その理由は、シルヴィより強い力を持つ公爵家のご令嬢が現れたからだという。 ヴィンセントは態度を一変させシルヴィを蔑んだ。 王子で婚約者だから、と態度も物言いも目に余るすべてに耐えてきたが、シルヴィは我慢の限界に達した。 「では、そう仰るならそう致しましょう」 だが、真の聖女不在の国に一大事が起きるとは誰も知るよしもなかった……。 言われた通り国外に追放されたシルヴィは、聖女の力を駆使し、 森の奥で出会った魔物や動物たちと静かで快適な移住生活を送りはじめる。 これは虐げられた聖女が移住先の森の奥で楽しく幸せな生活を送る物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...