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手練れ

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 私は未だに状況が良く分かっていないカイル様に説明するために、亜空間の一部を可視化した。

「なんと!? この町の衛兵が裏切ったというのか!?」

「いえ、恐らく賊が衛兵の格好に偽装しているだけだと思います」

「そうなのか!?」

「えぇ、この町の衛兵全てが裏切ったのだとしたら、私達の姿が消えた段階で彼らは応援を呼ぶと思うんです。ですが未だにそんな気配はなく、彼らだけで探しているようですから」

 さすがにこの町の衛兵全てが裏切ったとは思いたくないしね...そうなったら最早クーデターだもん...

「なるほど...確かにその通りだな」

「しかし衛兵に偽装するなど...なんて狡猾な...」

 そこへアクセル様とアラン様が合流した。

「アクセル様、取り敢えずは先程と同じように、一人を残して全員を始末するということでよろしいでしょうか?」

「そうだな...済まんがそれで頼む。しかし、さっきの孤児院の時も思ったが、カリナは良く気付いたよな。感服したよ...」

「いえ、そんな...」

 アクセル様に近付く者は、どんな相手であっても警戒して見るからね。それで違和感に気付いたんだよ。

「すいません...俺が気付かなかったばかりに...」

 アラン様が落ち込んでる。偽衛兵を連れて来ちゃったからね。無理もないけど、ここは慰めてあげないと。

「アラン様は悪くないですよ。私だって敵が衛兵の格好してるだなんて思いもしませんもん。それだけ敵が用意周到だったってことです。さあ、落ち込んでる暇はないですよ? 敵がこれ以上の増援を呼ぶ前にさっさと始末しちゃいましょう」

「あぁ、そうだな...良し! 行こう!」

 アラン様が元気になって良かったよ。

「敵は右と左に三人ずつ分かれてますね。では、カイル様とアラン様はそれぞれ右と左をお願いします。ヤツらの背後に回ってから亜空間を解除しますんで。私はお二人の打ち漏らしを片付けます」

「「 おうっ! 」」

「アクセル様は」

「分かってる...ここで待機してるよ...お前達、くれぐれも気を付けてな?」

「「「 はいっ! 」」」


◇◇◇


「では解除しますよ?」

「いつでもいいぞ!」

「やってくれ!」

 私はヤツらの後ろに回り込んでから亜空間を解除した。いきなり背後に現れた私達に虚を衝かれたヤツらは、一瞬慌てた様子を見せたがすぐに体勢を立て直した。どうやら相当な手練れらしい。

 その中の一人に狙いを定めた私は、亜空間に隠れそっと後ろに回り込み後頭部に一撃...食らわせようとしたが、既の所で躱されてしまった。躱されたのは初めてだった。

 こいつ本当に強いな!
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