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孤児院にて
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アクセル様と訪れた孤児院は、割と立派な施設だったので驚いた。
もっと薄汚れて寂れた感じをイメージしていたので意外だった。どうやら教会が支援しているらしい。シスター服を着た職員が子供達の相手をしている。子供達もみんな清潔にしていて健康そうだ。
「王子様だ!」
子供達が歓声を上げる。
「慰問は結構頻繁に行っているんですか?」
「そうだな。大体2、3ヶ月に1回くらいかな?」
王宮の外に出たので、今日はカイル様とアラン様も一緒に護衛に付いている。
「やぁ、カリナ。王宮での暮らしに不自由はないかい?」
「なにか困ったことがあったらいつでも相談してね?」
「ありがとうございます」
そしてお二人は早速、腕白な男の子達に囲まれ肩車や剣術の手解きを強要されている。
かくいう私も女の子達に囲まれてしまい、髪を編んであげたり花冠を作ってあげたりなど、ほのぼのと過ごしていた。その間、アクセル様はシスター服を着た職員の人と和やかに談笑していた。
さすがに王子様には子供とはいえ近寄り難いのか、2、3人の男の子や女の子が恥ずかしそうに近くから眺めているだけだ。
そんな時だった。
5歳くらいの女の子が黒い箱を抱えながらトテトテと歩いて来た。箱の大きさは30cm四方くらいで、サイコロのように立方体になっている。中身は見えない。
その女の子は真っ直ぐにアクセル様の居る所に向かって行くので、気になった私はその子を呼び止めた。
「お嬢ちゃん、その箱どうしたの?」
「これね、孤児院の外に居た男の人から受け取ったの!」
「そう。どんな人だった? 知ってる人?」
「知らない人。顔はフード被って良く見えなかった」
怪しい...
「その箱どうするの?」
「男の人がね、王子様に渡しておいでって言ってたから、渡しに行くところなの!」
ますます怪しい...
「なにが入ってるって言ってた?」
「秘密なんだって! 王子様に渡すまで誰にも見せちゃいけないって!」
怪し過ぎる!
「そっかぁ、ちょっとその箱お姉ちゃんに貸して貰ってもいいかな? 中は見ないから」
「うん、いいよ!」
「ありがと」
私はその箱を受け取って耳を当ててみる。チクタクチクタク...やっぱり! 懐中時計の音がする!
「お嬢ちゃん、この箱はお姉ちゃんから王子様に渡しておくよ。その代わりにこれあげるから」
そう言って私は女の子にお菓子を渡した。
「分かった! お姉ちゃん、ありがとう!」
そんな私達2人のやり取りをずっと見ていたアクセル様が、こっちに近寄って来ようとする。私はそれを手で制してから、まずは怪しげな箱を亜空間に送った。そしてアクセル様に近寄って耳元で囁く。
「中から懐中時計の音がしました。恐らく時限爆弾かと」
「な、なんだと!?」
「シッ! お静かに! 子供達に知れたらパニックになります。まずはここを速やかに離れましょう」
「そ、そうだな。子供達を巻き込む訳にはいかない。そうしよう。それにしても...何も知らない子供を道具に使うとは...なんて卑劣な...」
「全く同感です。絶対に許せませんね。カイル様とアラン様にも伝えて来ます」
「あぁ、頼む」
そして私は汗だくになって子供達の相手をしているお二人の所に駆けて行った。
もっと薄汚れて寂れた感じをイメージしていたので意外だった。どうやら教会が支援しているらしい。シスター服を着た職員が子供達の相手をしている。子供達もみんな清潔にしていて健康そうだ。
「王子様だ!」
子供達が歓声を上げる。
「慰問は結構頻繁に行っているんですか?」
「そうだな。大体2、3ヶ月に1回くらいかな?」
王宮の外に出たので、今日はカイル様とアラン様も一緒に護衛に付いている。
「やぁ、カリナ。王宮での暮らしに不自由はないかい?」
「なにか困ったことがあったらいつでも相談してね?」
「ありがとうございます」
そしてお二人は早速、腕白な男の子達に囲まれ肩車や剣術の手解きを強要されている。
かくいう私も女の子達に囲まれてしまい、髪を編んであげたり花冠を作ってあげたりなど、ほのぼのと過ごしていた。その間、アクセル様はシスター服を着た職員の人と和やかに談笑していた。
さすがに王子様には子供とはいえ近寄り難いのか、2、3人の男の子や女の子が恥ずかしそうに近くから眺めているだけだ。
そんな時だった。
5歳くらいの女の子が黒い箱を抱えながらトテトテと歩いて来た。箱の大きさは30cm四方くらいで、サイコロのように立方体になっている。中身は見えない。
その女の子は真っ直ぐにアクセル様の居る所に向かって行くので、気になった私はその子を呼び止めた。
「お嬢ちゃん、その箱どうしたの?」
「これね、孤児院の外に居た男の人から受け取ったの!」
「そう。どんな人だった? 知ってる人?」
「知らない人。顔はフード被って良く見えなかった」
怪しい...
「その箱どうするの?」
「男の人がね、王子様に渡しておいでって言ってたから、渡しに行くところなの!」
ますます怪しい...
「なにが入ってるって言ってた?」
「秘密なんだって! 王子様に渡すまで誰にも見せちゃいけないって!」
怪し過ぎる!
「そっかぁ、ちょっとその箱お姉ちゃんに貸して貰ってもいいかな? 中は見ないから」
「うん、いいよ!」
「ありがと」
私はその箱を受け取って耳を当ててみる。チクタクチクタク...やっぱり! 懐中時計の音がする!
「お嬢ちゃん、この箱はお姉ちゃんから王子様に渡しておくよ。その代わりにこれあげるから」
そう言って私は女の子にお菓子を渡した。
「分かった! お姉ちゃん、ありがとう!」
そんな私達2人のやり取りをずっと見ていたアクセル様が、こっちに近寄って来ようとする。私はそれを手で制してから、まずは怪しげな箱を亜空間に送った。そしてアクセル様に近寄って耳元で囁く。
「中から懐中時計の音がしました。恐らく時限爆弾かと」
「な、なんだと!?」
「シッ! お静かに! 子供達に知れたらパニックになります。まずはここを速やかに離れましょう」
「そ、そうだな。子供達を巻き込む訳にはいかない。そうしよう。それにしても...何も知らない子供を道具に使うとは...なんて卑劣な...」
「全く同感です。絶対に許せませんね。カイル様とアラン様にも伝えて来ます」
「あぁ、頼む」
そして私は汗だくになって子供達の相手をしているお二人の所に駆けて行った。
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