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自称婚約者
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国境の町ヘインズに到着したイアンは、真っ直ぐに国旗警備所へ向かった。
カリナの人相書きを見せて確認する。
「あぁ、この娘さんなら確かに通りましたよ?」
「なにっ!? いつだ!?」
「ちょっと待って下さいよ。今、記録を調べて...あぁ、あった、これだ。4日前ですね」
4日前というと、カリナは家を出てからすぐここにやって来たということになる。最初から国を出る気だったのか。気付くのが遅れた自分に歯噛みする。
「今すぐ早馬を出せ! 王宮に出国の許可を大至急取り付けるんだ!」
イアンはここまで一緒に付いて来た護衛の1人に命じた。高位貴族である侯爵家のイアンは、国に黙って勝手に出国することを許されていない。他国への亡命を阻止するための当然の措置である。
「し、しかし、出国の許可はそう簡単に下りるものではないのでは?」
「カリナを連れ戻すためだと言え! それだけで伝わるはずだ!」
「わ、分かりました!」
イアンはベルトラン家と王家との関係を知っていた。カリナが他国へ渡ったと知ったら、王命を発してでも取り戻そうとするはずだ。そう確信していた。
(待っていろ! カリナ! 必ず迎えに行くからな!)
イアンは静かに闘志を燃やした。
◇◇◇
「アクセル様~♪ お久し振りでございますぅ~♪ アクセル様にお会い出来なくてぇ、ミネルバは悲しゅうございましたぁ~♪」
ドン引きした私は悪くないと思う...ここはアクセル様の執務室。この人はアクセル様の婚約者を自称している、公爵令嬢のミネルバという女だ。ここに来るまでの道すがら、アクセル様が説明してくれた。
そう、自称なのだ。この人は他にも何人か居るアクセル様の婚約者侯爵の1人に過ぎない。ただその中でも、一番格上の公爵令嬢という立場なので、アクセル様も無下には出来ないらしい。
心底イヤそうな顔をしているが...まぁ、無理もない。この女、立場を利用して他の婚約者候補の人達に嫌がらせを繰り返しているらしい。中にはトラウマを植え付けられて、候補を辞退した人が何人も居たとか。一体なにしたんだ?
立場の弱い人達は脅されて何も言えなかったらしく、証拠は掴めていないんだとか。そりゃあ公爵家を敵に回すとなったら、怖くて何も言えなくなるよね。酷い話だ。
改めてミネルバを観察してみる。真っ赤な髪は刺さるんじゃない? って思うくらい見事なドリル巻きになっている。顔立ちは美人の部類に入ると思う。吊り上がった目元が猫科の動物を思わせる。全体的に派手な印象だ。
「あらぁ? こちらの方はどなたぁ?」
その猫みたいな目が私をロックオンした。
イヤな予感がヒシヒシと...
カリナの人相書きを見せて確認する。
「あぁ、この娘さんなら確かに通りましたよ?」
「なにっ!? いつだ!?」
「ちょっと待って下さいよ。今、記録を調べて...あぁ、あった、これだ。4日前ですね」
4日前というと、カリナは家を出てからすぐここにやって来たということになる。最初から国を出る気だったのか。気付くのが遅れた自分に歯噛みする。
「今すぐ早馬を出せ! 王宮に出国の許可を大至急取り付けるんだ!」
イアンはここまで一緒に付いて来た護衛の1人に命じた。高位貴族である侯爵家のイアンは、国に黙って勝手に出国することを許されていない。他国への亡命を阻止するための当然の措置である。
「し、しかし、出国の許可はそう簡単に下りるものではないのでは?」
「カリナを連れ戻すためだと言え! それだけで伝わるはずだ!」
「わ、分かりました!」
イアンはベルトラン家と王家との関係を知っていた。カリナが他国へ渡ったと知ったら、王命を発してでも取り戻そうとするはずだ。そう確信していた。
(待っていろ! カリナ! 必ず迎えに行くからな!)
イアンは静かに闘志を燃やした。
◇◇◇
「アクセル様~♪ お久し振りでございますぅ~♪ アクセル様にお会い出来なくてぇ、ミネルバは悲しゅうございましたぁ~♪」
ドン引きした私は悪くないと思う...ここはアクセル様の執務室。この人はアクセル様の婚約者を自称している、公爵令嬢のミネルバという女だ。ここに来るまでの道すがら、アクセル様が説明してくれた。
そう、自称なのだ。この人は他にも何人か居るアクセル様の婚約者侯爵の1人に過ぎない。ただその中でも、一番格上の公爵令嬢という立場なので、アクセル様も無下には出来ないらしい。
心底イヤそうな顔をしているが...まぁ、無理もない。この女、立場を利用して他の婚約者候補の人達に嫌がらせを繰り返しているらしい。中にはトラウマを植え付けられて、候補を辞退した人が何人も居たとか。一体なにしたんだ?
立場の弱い人達は脅されて何も言えなかったらしく、証拠は掴めていないんだとか。そりゃあ公爵家を敵に回すとなったら、怖くて何も言えなくなるよね。酷い話だ。
改めてミネルバを観察してみる。真っ赤な髪は刺さるんじゃない? って思うくらい見事なドリル巻きになっている。顔立ちは美人の部類に入ると思う。吊り上がった目元が猫科の動物を思わせる。全体的に派手な印象だ。
「あらぁ? こちらの方はどなたぁ?」
その猫みたいな目が私をロックオンした。
イヤな予感がヒシヒシと...
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