空間魔法って実は凄いんです

真理亜

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それぞれの事情

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 今、私はオスマルク王国の王都、へルンに向かう馬車の中に居る

 ヘルンまでは3日掛かる旅だそうだ。オスマルク王国は我が母国...いやもう元母国か...ウインヘルムて比べて、国土も国力も倍以上ある大国だ。

 ウインヘルムより北方に位置しているため冬の寒さは厳しいが、それを補って余りあるほど肥沃な大地が広がり、大穀倉地帯を形成している。農業がこの国の根幹を支えている。

 それに加えて鉱物資源も豊富で、あちこちに鉄や銅、金や銀のなどの鉱山があり、こちらも国の重要な基幹産業になっている。

 つまり一言で言い表すなら、とても豊かな国ということである。その国の王宮がキナ臭いとなれば一大事だろう。

「アクセル様、先程のキナ臭くなりそうの詳細をお聞かせ願えますか? アクセル様の護衛をする上で聞いておく必要があると思います」

「あぁ、確かにそうだな...実は現国王、つまり俺の父上だが、病に伏せっていてな。もう余り先が長くない。それで後継者問題で揉めてる」

 良くある展開だな。

「それは...お気の毒です...国王陛下は後継者を指名なさらないんですか?」

「まだ決めかねてるってところだ。順当にいくなら俺の兄上が継ぐべきなんだが、兄上は第一側妃の息子なんだ。俺は正妃の息子で腹違いの兄弟なんだよ」

 これまたベタな...

「なるほど...それでアクセル様を推す声が大きくなると...」

「そういうことだ。オマケに俺と兄上の思考は正反対でな。兄上は野心家で俺は保守派。どちらも相容れない」

「野心家というと...まさか...」

 イヤな予感が...

「あぁ、その通りだ。兄上は有り余る国力を生かして南下しようとしている。戦争を仕掛けてでもな」

 私は思わず絶句してしまった。だって南に位置する国と言えば...

「まぁ、兄上の気持ちも分からんでもない。この国の冬は厳しくて長い。凍り付かない土地を欲しがるのも無理はない。だが俺は、戦争を仕掛けてまで欲しいとは思わない。なぜなら、どちらが勝ってもお互いの国土は荒れ、復興するまでに時間も金も掛かるだろう。それに戦費が加わるんだ。今ある余剰分なんざ全部ふっ飛んでしまう。そんなことするくらいなら、内需に回して冬の寒さ対策を充実させた方がよっぽど効率的だ」

「...私もそう思います。アクセル様を全面的に支持します」

「ありがとう。その...やっぱりまだ母国のことは気になるよな...」

「えぇ、まぁ...未練はありませんが、戦争になるのはちょっと...」

 その時、私の脳裏にはイアン様の優しい面影が浮かんでいた。元家族がどうなろと知ったこっちゃないが、彼だけは危険な目に合わせたくない。そう思っていた。

「だよな...君のためにも兄上の野望は阻止してみせるよ」

「ありがとうございますっ!?」

 その時、馬車が急停止した。

「何事だ!?」

「殿下! 魔物です! 魔物が現れました!」

「なにい!?」

 私は急いで馬車から降りる。あれはオーク。豚頭人身の化け物の群れがこちらに向かって来ていた。
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