上 下
12 / 462

王都へ

しおりを挟む
「え~...ということは、今この瞬間にもお供の方々は王子様のことを探していると...」

「あぁ、うん、まぁ、そうなるな...」

「お気の毒に...」

「うぐっ...」

 さて、どうしたものか。狼は追い払ったけど、この王子様はここから動かせないし。私がお供の人達を探しに行くってのもなんか変だし。困ったな...

 いっそのこと向こうから見付けてくれないもんかな。狼煙でも上げてみるか? あ、そう言えば、

「王子様、火の魔法が使えるんですよね?」

「えっ!? あぁ、まぁ、そこそこは」

「今から亜空間を閉じますんで、そこら辺の草を燃やして狼煙を上げてくれません? そうすればお供の方々が見付けてくれるんじゃないですかね?」

「なるほど...やってみよう」

「じゃあ閉じますね」

「おぉっ! 元に戻った! 凄いな! なんか芝居のセットチェンジを見てるみたいだな!」

 王子様、上手い表現だな。言い得て妙というか。

「火を放つのちょっと待って下さいね?」

 私は周りの草を少しずつ刈り取って行く。延焼を防ぐためだ。狼煙を上げてたら火に包まれましたなんてシャレにならないからね。

 粗方刈り取った草を一ヶ所に集める。風下になるように。

「ふぅ...こんな所ですかね。じゃあ王子様、この草の山を燃やしちゃって下さい」

「分かった『ファイアボール』」 

 おぉっ! 火の玉が飛んでったよ! 私の魔法と違ってカッコいいな!

「うん、いい感じで煙が上がってますね。これならすぐに見付けてくれるんじゃないでしょうか?」

「だといいな...その、カリナ」

「はい?」

「さっきの戦い見事だった。あんな戦い方を見たのは初めてだ。凄かった」

「あ、ありがとうございます。そんなに誉められるとなんか照れますね」

 誉められ慣れてないからね。

「君は旅行者だと言ったな? ウインヘルムから来たのか?」

「はい、そうです」

「目的地はどこなんだ?」

「いえ、特に決めてないです」 

「そうなのか?」

「えぇ、自由気ままな旅なんで。冒険者ギルドのある町を巡ってみようかなって思ってます。私、これでも冒険者なんですよ」

「なるほど...だったら王都に来てみないか?」

「王都ですか。いいですよ。いずれは行こうと思ってましたし」

「良かった。王都に着いたらたっぷりとお礼をするから、そのつもりでいてくれ」

「そんな、お礼なんていいですよ」

「なにを言う! 命を救って貰ったんだぞ? お礼をしない訳にはいかないだろ?」

 え~...なんか面倒臭いことになりそうなんでイヤだなぁ...別にお礼が欲しくて助けた訳じゃないんだよなぁ。

「いえいえ、私なんぞが王子様にお礼を頂くなんて、恐れ多いと思う次第でありまして...」 

「アクセル」

「へっ!?」

「王子様じゃなくてアクセルと呼んで欲しい」

「アクセル...様?」

「ん、よろしい」 

 と、その時だった。

「殿下~! アクセル殿下~! どちらにおられますか~!」

 良かった! お供の人達、狼煙を見付けてくれたんだね!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

森だった 確かに自宅近くで犬のお散歩してたのに。。ここ  どこーーーー

ポチ
ファンタジー
何か 私的には好きな場所だけど 安全が確保されてたらの話だよそれは 犬のお散歩してたはずなのに 何故か寝ていた。。おばちゃんはどうすれば良いのか。。 何だか10歳になったっぽいし あらら 初めて書くので拙いですがよろしくお願いします あと、こうだったら良いなー だらけなので、ご都合主義でしかありません。。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

今さら帰ってこいなんて言われても。~森に移住した追放聖女は快適で優雅に暮らす~

ケンノジ
ファンタジー
「もうお前は要らない女だ!」 聖女として国に奉仕し続けてきたシルヴィは、第一王子ヴィンセントに婚約破棄と国外追放を言い渡される。 その理由は、シルヴィより強い力を持つ公爵家のご令嬢が現れたからだという。 ヴィンセントは態度を一変させシルヴィを蔑んだ。 王子で婚約者だから、と態度も物言いも目に余るすべてに耐えてきたが、シルヴィは我慢の限界に達した。 「では、そう仰るならそう致しましょう」 だが、真の聖女不在の国に一大事が起きるとは誰も知るよしもなかった……。 言われた通り国外に追放されたシルヴィは、聖女の力を駆使し、 森の奥で出会った魔物や動物たちと静かで快適な移住生活を送りはじめる。 これは虐げられた聖女が移住先の森の奥で楽しく幸せな生活を送る物語。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

処理中です...