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王子の邂逅
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俺は夢でも見ているのだろうか...
目の前で次々と狼どもを倒して行く少女を見ながら、ぼんやりとそんなことを思っていた。
一匹二匹と立て続けに倒し、最後にボスらしき狼を倒した。呆気ないほど簡単に。その鮮やか過ぎる手口には惚れ惚れする程だった。
「ただいま戻りました。如何でしたか? これが空間魔法の使い手の戦い方です」
銀色の長い髪を靡かせながら戻って来た少女は、事も無げにそう言った。俺は咄嗟に言葉が出なかった。
「あぁ、剣が血で汚れちゃいましたね。ちゃんと拭いてからお返ししますね」
いや、気になっているのはそこじゃないんだが...俺が無言でいたせいか、的外れな勘違いを彼女にさせてしまったようだ。
「そう言えば、ずっと気になっていたんですが、王子様は何故お一人でいらしたのですか? 普通、お供の方が側にいらっしゃるもんだとばかり思ってました」
「うっ! そ、それはだな...」
俺は恥ずかしさを堪えながら、事ここに至った経緯をポツポツと語り始めた。
◇◇◇
きっかけは単なる悪ふざけだった。
この近くにある王家所有の別荘に滞在していた俺は、狩りに行くと言って馬に跨がり、護衛二人を引き連れて近くの森に出向いた。そこでちょっとした悪戯心が沸いて来た俺は、護衛二人を撒いてやろうと思ってしまった。
その企みは上手く行った。いや、上手く行ってしまった。森を抜け平原に出た所で、馬が疲れて来たので休ませることにした。
馬から降りちょっと横になっていたら、いつの間にか寝てしまった。
「ヒヒヒィン!」
甲高い馬の嘶きに飛び起きた俺は、辺りを見回して愕然とする。馬が狼の群れに囲まれそうになっていた。辛くも馬は脱出に成功したが、獲物に逃げられた狼どもは、次のターゲットを俺に定めて襲い掛かって来た。
俺は火の攻撃魔法を使えるので、なんとか抵抗しようとしたが、如何せん多勢に無勢。一匹を倒してる間に三匹が襲って来るような状況では勝負は目に見えていた。
最初に腕を、次に足をやられた俺は、最後の力を振り絞って狼どもを魔法で蹴散らし、なんとかこの藪の中に逃げ込んだが、それが限界だった。狼どもが近付いて来る気配を感じながら死を覚悟した時、あの声が聞こえた。
「大丈夫ですか!?」
誰だ? 誰か居るのか? 女の声だった。こんな所に女が? 確認したくても怪我の痛みとショックで目が開かない。女の声がまた響いた。
「ちょっと滲みるけど我慢して下さいね?」
「ぐおっ!」
ちょっとどころじゃない! あまりの痛みに意識が完全に覚醒した。周りを見渡す。自分が今居る場所に違和感を覚えた。確か俺は藪の中に居たはず。ここはどこだ? 辺り一面が真っ黒な壁? に囲まれている。
だが真っ暗闇という訳じゃなく、俺達が居る場所は明るく照らされている。俺達? そうだ、もう一人居る。そこで俺は初めて彼女に目を向けた。
思わず目を見張った。
年の頃は俺と同い年くらいだろうか。輝くような長い銀髪に意志の強そうな紫の瞳。まだあどけなさの残る顔立ちにスラリと伸びた長い手足。
見たこともないような美少女がそこに居た。
目の前で次々と狼どもを倒して行く少女を見ながら、ぼんやりとそんなことを思っていた。
一匹二匹と立て続けに倒し、最後にボスらしき狼を倒した。呆気ないほど簡単に。その鮮やか過ぎる手口には惚れ惚れする程だった。
「ただいま戻りました。如何でしたか? これが空間魔法の使い手の戦い方です」
銀色の長い髪を靡かせながら戻って来た少女は、事も無げにそう言った。俺は咄嗟に言葉が出なかった。
「あぁ、剣が血で汚れちゃいましたね。ちゃんと拭いてからお返ししますね」
いや、気になっているのはそこじゃないんだが...俺が無言でいたせいか、的外れな勘違いを彼女にさせてしまったようだ。
「そう言えば、ずっと気になっていたんですが、王子様は何故お一人でいらしたのですか? 普通、お供の方が側にいらっしゃるもんだとばかり思ってました」
「うっ! そ、それはだな...」
俺は恥ずかしさを堪えながら、事ここに至った経緯をポツポツと語り始めた。
◇◇◇
きっかけは単なる悪ふざけだった。
この近くにある王家所有の別荘に滞在していた俺は、狩りに行くと言って馬に跨がり、護衛二人を引き連れて近くの森に出向いた。そこでちょっとした悪戯心が沸いて来た俺は、護衛二人を撒いてやろうと思ってしまった。
その企みは上手く行った。いや、上手く行ってしまった。森を抜け平原に出た所で、馬が疲れて来たので休ませることにした。
馬から降りちょっと横になっていたら、いつの間にか寝てしまった。
「ヒヒヒィン!」
甲高い馬の嘶きに飛び起きた俺は、辺りを見回して愕然とする。馬が狼の群れに囲まれそうになっていた。辛くも馬は脱出に成功したが、獲物に逃げられた狼どもは、次のターゲットを俺に定めて襲い掛かって来た。
俺は火の攻撃魔法を使えるので、なんとか抵抗しようとしたが、如何せん多勢に無勢。一匹を倒してる間に三匹が襲って来るような状況では勝負は目に見えていた。
最初に腕を、次に足をやられた俺は、最後の力を振り絞って狼どもを魔法で蹴散らし、なんとかこの藪の中に逃げ込んだが、それが限界だった。狼どもが近付いて来る気配を感じながら死を覚悟した時、あの声が聞こえた。
「大丈夫ですか!?」
誰だ? 誰か居るのか? 女の声だった。こんな所に女が? 確認したくても怪我の痛みとショックで目が開かない。女の声がまた響いた。
「ちょっと滲みるけど我慢して下さいね?」
「ぐおっ!」
ちょっとどころじゃない! あまりの痛みに意識が完全に覚醒した。周りを見渡す。自分が今居る場所に違和感を覚えた。確か俺は藪の中に居たはず。ここはどこだ? 辺り一面が真っ黒な壁? に囲まれている。
だが真っ暗闇という訳じゃなく、俺達が居る場所は明るく照らされている。俺達? そうだ、もう一人居る。そこで俺は初めて彼女に目を向けた。
思わず目を見張った。
年の頃は俺と同い年くらいだろうか。輝くような長い銀髪に意志の強そうな紫の瞳。まだあどけなさの残る顔立ちにスラリと伸びた長い手足。
見たこともないような美少女がそこに居た。
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