上 下
9 / 462

助けた人は

しおりを挟む
 足の治療を終え腕の治療に移る前に、私は男性のことをマジマジと観察した。年の頃は15、6歳くらいだろうか、金髪碧眼のキラキラ王子様スタイルのイケメンさんだ。着ている服が高そうだから余計にそう感じる。さぞやモテるんだろうな。 

 なんとなくだが、誰かに雰囲気が似てるなあと思ったら、そうか、イアン様に似てるんだ。年の頃も同じくらいだし。イアン様もイケメンだし。ただイアン様よりこの男性の方が体つきとか顔つきとか逞しい感じがする。イアン様はもっと優しい感じだもんね。

 おっと、今はそれどころじゃなかった。

「腕を見せて下さい」

「あ、あぁ...」

「こっちは足ほど酷くないですね。血止め薬を掛けます。また滲みますよ?」

「うぐっ!」

「これで良し。血は止まったみたいですね。包帯を巻きましょう」

「あ、ありがとう...」

「困った時はお互い様ですよ。気にしないで下さい」

「...名前を聞いてもいいかな?」

「カリナです」

「名字は?」

 私は言葉に詰まった。家名を名乗るべきか? いや、既に貴族じゃないんだから、名乗らない方が良いだろう。追っ手も隣国までは追って来ないとは思うが、念のために痕跡は残さない方が良いだろう。
 
「ただのカリナです」

「そうか。俺はアクセル・フォン・オスマルクだ」

「えっ!? えええっ!? そ、それって...」

「あぁ、この国の第2王子だ」

 ま、マジですかぁ~!


◇◇◇


「あ、あの、私、王子様に大変失礼なことを...」

 不敬罪とかにならないよね...

「それこそ気にしなくていい。っていうか治療してくれて感謝している。それと狼どもからも救ってくれた。君は命の恩人だ。本当にありがとう」

「め、滅相もございません...もったいないお言葉で...」

「ところで、この空間は亜空間だとさっき言ってたな?」

「は、はい、私は空間魔法が得意ですので。っていうか、それしか使えませんので。すいません、治癒魔法が使えなくて...」

 その分、薬は多目に亜空間へ収納しておいたんだ。役に立って良かったよ。

「それを言ったら俺なんか攻撃魔法しか使えないぞ? それもショボい威力しか出ない。だから情けないことに、たかが狼程度にこの様だ。君はもっと誇っていいと思うぞ?」 

 そういうもんなのかな...良く分かんないや。

「あ、ありがとうございます...」

「ところで...カリナって呼んでも?」

「は、はい、どうぞお好きに...」

「カリナ、この空間はいつまで維持できるんだ?」

「えっと、私が解除しない限りいつまでも...」

「それ凄いな...だが、このまま狼が諦めてどっかに行くのを待ってるしかないってのも癪だな...」

 王子様の怪我も早くちゃんとした治癒しないとマズいしね。だからここは私が動くことにする。

「あの、王子様。良ければその剣を私に貸して貰えませんか?」

「剣を? どうする気だ?」

「私が狼を仕留めて来ます」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

森だった 確かに自宅近くで犬のお散歩してたのに。。ここ  どこーーーー

ポチ
ファンタジー
何か 私的には好きな場所だけど 安全が確保されてたらの話だよそれは 犬のお散歩してたはずなのに 何故か寝ていた。。おばちゃんはどうすれば良いのか。。 何だか10歳になったっぽいし あらら 初めて書くので拙いですがよろしくお願いします あと、こうだったら良いなー だらけなので、ご都合主義でしかありません。。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

今さら帰ってこいなんて言われても。~森に移住した追放聖女は快適で優雅に暮らす~

ケンノジ
ファンタジー
「もうお前は要らない女だ!」 聖女として国に奉仕し続けてきたシルヴィは、第一王子ヴィンセントに婚約破棄と国外追放を言い渡される。 その理由は、シルヴィより強い力を持つ公爵家のご令嬢が現れたからだという。 ヴィンセントは態度を一変させシルヴィを蔑んだ。 王子で婚約者だから、と態度も物言いも目に余るすべてに耐えてきたが、シルヴィは我慢の限界に達した。 「では、そう仰るならそう致しましょう」 だが、真の聖女不在の国に一大事が起きるとは誰も知るよしもなかった……。 言われた通り国外に追放されたシルヴィは、聖女の力を駆使し、 森の奥で出会った魔物や動物たちと静かで快適な移住生活を送りはじめる。 これは虐げられた聖女が移住先の森の奥で楽しく幸せな生活を送る物語。

処理中です...