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「そ、それは...確かにそうかも知れないが...仮にも君は実の姉な訳だし...頼るなら君の所しかないと...」

「頼る? もしかしてリリアとなにかあったんですか?」

 私は首を傾げてわざと聞いてみた。

「あ、あぁ、まぁその...なんだ...ちょっとケンカしたと言うか...」

 さすがに監禁だか軟禁だかしていて逃げられましたとは言えないわな。

「それなら尚更私の所なんか頼らないですよ。実家に戻ったんじゃないですか?」

「いや...ご実家には真っ先に行ったが居なかった...」

「じゃあ友達の所とか?」

「友達...知らないんだ...君は知っていたりするか?」

「私が知る訳ないじゃないですか。あの娘とは何年も顔を合わせていないんですから。長女のアリスが生まれた時だって会いに来なかったんですよ?」

 本当は友達なんか一人も居ないことを知ってるけどね。

「そ、そうだったな...わ、悪かった...」

「確かに仮にも血を分けた妹ですから、心配なんで私も探したい所ですが...ほら、私これなんで」

 そんな心にもないことを言いながら、わざと見せ付けるようにして大きくなったお腹を擦る。

「あぁ、いやいや。それには及ばないよ。ありがとう。その気持ちだけで十分だ」

 ほう、そんなことまで言えるようになったのか。相手を気遣うことが出来るようになったなんて大した進歩じゃないか。

「では僕はこれで失礼するよ。手間を取らせて申し訳なかった」

 そう言ってカインは席を立った。

「いえいえ、こちらこそお役に立てず申し訳ありません。妹のことくれぐれもよろしくお願い致します」

 と、またまた心にもないことを言ってみる。

 すると帰り際、カインが目を伏せながらこう言った。

「アリア...その...今幸せかい?」

「えぇ、お陰様でとっても」

 アンタと別れられたからね。

「...そうか...良かった...」

 どの口がそんなこと言えるんだ!? とは思ったが、もちろん口に出すことはしなかった。

 肩を落としながら帰って行くカインの姿を、冷めた目で見送りながら私は「塩でも撒いておこうかな?」とか考えていたのだった。


◇◇◇


 夜になって夫のスミスが帰って来た。

「あなた、お帰りなさい」

「ただいま、愛しい奥さん」

 お帰りなさいのチュウをすると、夫は優しく腕に抱いてくれた。

「手紙読んでくれた?」

「あぁ、読んだよ。君の読み通り、リリアは俺の所に来たみたいだ。当然ながら玄関払いを食らったようだけどね」

「やっぱりね。あの娘の考えそうなことなんてそんなもんよ」

 それから私は、今後リリアがどう動くか予想してみるのだった。
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