王妃候補に選ばれましたが、全く興味の無い私は野次馬に徹しようと思います

真理亜

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「モグモグ...ヌチャヌチャ...ゴキュゴキュ...ゴックン...」

 そんな擬音が聞こえて来そうなほど豪快に飲み食いしているライラの様子を眺めて、ミハエルは苦笑しながらも安堵していた。

 どうやらこれなら山を下りるのも問題無さそうだ。念のためミハエルは指でチョイチョイと衛生兵を手招きした。そしてライラに聞こえないよう囁き声で尋ねた。

「これから山を下りるんだが...大丈夫そうか? 傷口が開いたりしないか?」

「えぇ、大丈夫だと思います。傷口は既に塞がってますし、包帯は念のために巻いているだけですから」

「そうか」

 ミハエルはホッと胸を撫で下ろした。

「ライラ?」

 ライラが食べ終わった辺りを見計らって、ミハエルは優しく声を掛けた。

「は、はひっ!?」

 行儀悪くお腹をポンポンしていたライラはちょっと慌てた。

「そろそろいいか? 腹は膨れたか?」

「は、はいぃ...」

 ライラは恥ずかしそうに俯いてそう答えた。

「もう少し安静にしてあげたいところなんだが、如何せん天候が崩れて来ててな。早目に山を下りたいと思っているんだ。行けそうか?」

「え、え~とその...で、出来ればもうちょっと休みたいかな~なんて...た、食べ終わったばっかりですし...」

 ライラはちょっと上目遣いをして甘えてみせた。

「そうか...なら仕方ないな...お姫様抱っこして運んで」

「行きましょう! さっさと下りましょう! とっとと下りましょう!」

 ライラは皆まで言わせなかった。跳ねるように立ち上がり元気さアピールをした。そんな恥ずかしい格好は死んでもゴメンだった。

「そうか...残念だ...」

 ミハエルは苦笑しながら本当に残念そうだった。


◇◇◇


 救護テントの撤去を速やかに行った捜索隊の一行は、風雨がこれ以上酷くなる前に下山の途に就いた。

「ライラ、本当に大丈夫か?」

 やはりまだ心配なミハエルは、ライラの側から離れようとしなかった。

「だ、大丈夫ですよ...だ、だからその...」

 近いから、恥ずかしいからちょっと離れて欲しいが、負い目のあるライラにはとっても言い辛かった。

「辛くなったらすぐに言えよ? いつだってお姫様抱っこの準備は万端」

「だ、大丈夫ですってば! ほ、ほら! さ、先を急ぐんでしょ!? い、行きますよ!」

 ミハエルは隙あらばお姫様抱っこをしようとしてくる。ライラは辟易しながらもなんとか先に進んだ。結局その後は、幸いなことに心配していた風雨もあまり酷くならず、捜索隊一行は無事に下山を果たした。
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