王妃候補に選ばれましたが、全く興味の無い私は野次馬に徹しようと思います

真理亜

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「おい! どうだ!? 不審者は見付かったか!?」

 ミハエルは息を弾ませながら正門前に辿り着き、直ぐ様警備している門番達に問い質した。既に国王命令により、王都は出入禁止になっている。不審者が通ろうとしたら検閲に引っ掛かるはずだ。

「いえ、まだ見付かっておりません」

「そうか...引き続き警備を続けてくれ。くれぐれも誰も通すんじゃないぞ?」

「了解致しました」

 ミハエルは疲れ切った体を引き摺るように正門前を後にした。

「ライラ...どこだ? どこに居るんだ?」

 その呟きは夜の町に空しく消えて行った。


◇◇◇


 時は少し遡り、ミハエルがルイスの裏切りにまだ気付いていない頃、ルイスは弱々しいながらも抵抗を続けるライラを引き摺るのに苦労していた。

「くそっ! だから暴れんなって!」

「うがっ! うがっ!」

 自分からは頑として動こうとしないライラを、時折蹴飛ばしながら又は小突きながら抜け道を進んでいるので、効率が悪いことこの上ない。

 だったらライラを殴り飛ばすなりなんなりして、気絶させてから運ぶという手もあるにはあるが、真っ暗な抜け道を松明片手に気絶した人一人を担いで進むというのも現実的ではない。

 まだ意識があった方がマシだと判断したのだが、

「あぁ、もう! お前! 少しはちゃんと歩けよ!」

「うごっ! うごっ!」

 何度もそう叫んでいるが、ライラは梃子でも自分から動こうとはしない。ルイスの焦りは次第に募っていった。

 あんまり時間を掛ける訳にはいかない。自分の正体がバレるのは時間の問題だろう。そうなったらこの抜け道にも捜索の手が入るかも知れない。

 早いところ仲間と落ち合わなければ。ルイスはライラを引き摺る力を強めた。

「ふぅ...やっと着いた...」

 かなり時間はロスしたが、ルイスはようやく仲間との合流地点である墓地の下に辿り着いた。

 階段の上から月明かりが射し込んでいる。ルイスの仲間が墓石をどかしてくれていたようだ。

「ルイス! 遅いぞ! なにをチンタラやってやがる!」

 頭上からは苛立ったようなルイスの仲間の声が聞こえてくる。

「悪ぃ、悪ぃ! このお荷物が重くてよ!」

「うがぁっ! うがぁっ!」

 お荷物呼ばわりされたライラは、これまでになく激しく抵抗した。

「うっわっ!? な、なんだよその女は!? お前! なんだってそんな女連れてんだよ!?」

 ルイスの仲間は迷惑千万とばかりに抗議した。

「まぁまぁ! 落ち着けって! こいつは大事な大事な保険なんだからよ! おいっ! こいつ運ぶの手伝ってくれ! 暴れて手に負えねぇ!」

 ルイスは仲間を手招きした。

「うぐぁっ! うぐぁっ!」

 ライラは猿ぐつわが外れんばかりの勢いで抵抗した。
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