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「...殿下、まずは国王陛下周りの警備を強化することにしましょう。それから勿論、殿下ご自身の周りも」
重苦しい沈黙の後、騎士団長が厳しい表情を浮かべながらそう言った。
「あぁ、そうしてくれ。それから王妃候補達の周りも同様に頼む」
「心得ております。では早速、取り掛かかることにしましょう」
騎士団長が去った後、ミハエルはしばし憮然とした表情を浮かべていたが、やがて卓上にある呼び鈴に手を伸ばした。
「殿下、お呼びでしょうか?」
ややあってミハエルの秘書官が顔を出した。
「ルイス、非常事態だ。今後の予定は全てキャンセルしろ」
「...了解致しましたが、一体何事が起こったのですか?」
このルイスという名の秘書官は、つい最近赴任したばかりなのだが、余計な質問を一切せず淡々と職務を熟す様がミハエルのお気に入りだった。
だがさすがに今回は、一言聞かずにはいられなかったと見える。
「隣国の手の者が我が国に潜入した形跡がある。侵入者が特定できるまでは通常業務をSTOPすること。以上だ」
「...なるほど、了解致しました」
ルイスは重々しく礼をした後、静かに執務室を後にした。
「ふぅ...」
その姿を見送ってから、ミハエルは大きなため息を一つ吐いた。
◇◇◇
「ふぅ...」
一方その頃、似たようなタイミングでライラも大きなため息を一つ吐いていた。
ソニアにはああ言ったものの、やはり物書きの一人としては今後の展開が気にならないかと言われたらウソになるし、なんやかやと予想を立ててみるのは楽しいと感じるまである。
こんな時に不謹慎だと言われるかも知れないが、自室に戻ったライラは机に向かって今後の展開予想を書き記していた。
「やっぱり定番というか、王道なのはスパイだよねぇ...」
敵の懐深くに潜り込み、密かに情報を流して自国を有利に導く。時には要人の暗殺なども業務に含まれるだろう。
「小説の中だけの存在じゃなくて、実際に居るってことだよねぇ...怖いよねぇ...」
自分には縁が無い、身分の高い人達の間で起きる出来事だとずっと思っていたからこそ、気軽に小説のネタにしていたものだったが、いざ実際に自分がその立場に置かれてみると、やはり薄ら寒いものを感じざるを得ない。我ながら勝手なもんだと思って自嘲するしかなかった。
「う~ん...ダメだ...なんだか集中できないや...ちょっと気分転換でもするかな...」
ライラは中庭を散歩でもしてみようかと思って自室を出た。時刻は既に真夜中過ぎなので恐らく誰も居ないだろう。
「おや? あれは?」
そう思っていたのだが、月明かりの元、中庭の植え込みの奥にチラリと人影が見えたような気がした。
重苦しい沈黙の後、騎士団長が厳しい表情を浮かべながらそう言った。
「あぁ、そうしてくれ。それから王妃候補達の周りも同様に頼む」
「心得ております。では早速、取り掛かかることにしましょう」
騎士団長が去った後、ミハエルはしばし憮然とした表情を浮かべていたが、やがて卓上にある呼び鈴に手を伸ばした。
「殿下、お呼びでしょうか?」
ややあってミハエルの秘書官が顔を出した。
「ルイス、非常事態だ。今後の予定は全てキャンセルしろ」
「...了解致しましたが、一体何事が起こったのですか?」
このルイスという名の秘書官は、つい最近赴任したばかりなのだが、余計な質問を一切せず淡々と職務を熟す様がミハエルのお気に入りだった。
だがさすがに今回は、一言聞かずにはいられなかったと見える。
「隣国の手の者が我が国に潜入した形跡がある。侵入者が特定できるまでは通常業務をSTOPすること。以上だ」
「...なるほど、了解致しました」
ルイスは重々しく礼をした後、静かに執務室を後にした。
「ふぅ...」
その姿を見送ってから、ミハエルは大きなため息を一つ吐いた。
◇◇◇
「ふぅ...」
一方その頃、似たようなタイミングでライラも大きなため息を一つ吐いていた。
ソニアにはああ言ったものの、やはり物書きの一人としては今後の展開が気にならないかと言われたらウソになるし、なんやかやと予想を立ててみるのは楽しいと感じるまである。
こんな時に不謹慎だと言われるかも知れないが、自室に戻ったライラは机に向かって今後の展開予想を書き記していた。
「やっぱり定番というか、王道なのはスパイだよねぇ...」
敵の懐深くに潜り込み、密かに情報を流して自国を有利に導く。時には要人の暗殺なども業務に含まれるだろう。
「小説の中だけの存在じゃなくて、実際に居るってことだよねぇ...怖いよねぇ...」
自分には縁が無い、身分の高い人達の間で起きる出来事だとずっと思っていたからこそ、気軽に小説のネタにしていたものだったが、いざ実際に自分がその立場に置かれてみると、やはり薄ら寒いものを感じざるを得ない。我ながら勝手なもんだと思って自嘲するしかなかった。
「う~ん...ダメだ...なんだか集中できないや...ちょっと気分転換でもするかな...」
ライラは中庭を散歩でもしてみようかと思って自室を出た。時刻は既に真夜中過ぎなので恐らく誰も居ないだろう。
「おや? あれは?」
そう思っていたのだが、月明かりの元、中庭の植え込みの奥にチラリと人影が見えたような気がした。
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