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「えぇっ!? もうそんな時間!?」

「全然気付かなかった...」

 ソニアとファリスがビックリしたような顔になってそう言った。

「そうですよ? 皆さんがいらっしゃらないんで、なにかあったのかと心配になって様子を見に来たんです」

 ライラは時計を指差しながらそう指摘した。

「本当だ...とっくにお昼過ぎてる...」

「夢中になって読んでたら時間忘れた...」

「面白くて止まらなくなった...」

 ミシェル達は三者三様の感想を述べた。それに対してライラは、

「というか、そんなに量ありましたっけ? 私、あんまり長くは書いてなかったはずですが?」

 首を傾げながら問い掛けた。

「私、三周目に突入してました...」

 これはミシェル。

「私は二周目に...」

「私もです...」

 これはソニアとファリス。

「あぁ、なるほど...喜んで頂けたのは何よりですが、食事を抜いたりはしないで下さいね」

 ライラは苦笑しながらそう言った。

「言われてみればお腹空きましたわね...」

「えぇ、私も...」

「同じく...」

「皆さんの食事を出すのはちょっと待って欲しいと厨房の方には言ってありますので、今からすぐに食堂へ行って下さいね?」

「分かりました...ありがとうございます...」

「申し訳ありません...お手数をお掛け致しました...」

「ライラさんの書いた小説が面白過ぎるのがいけないのよ...さすがはベストセラー作家ね...」

 ミシェル達はそれぞれライラにお礼を言って、そそくさと食堂へ向かって行った。ソニアだけは違ったが。

 一人残されたライラはやれやれと言った表情を浮かべながらも、食事を忘れるくらい自分の作品に没頭してくれたことに対し、そこはかとなく嬉しさを感じていたりもした。


◇◇◇


 一方その頃、ミハエルは近衛騎士団の詰め所に来ていた。拘束した怪しげな商人の取り調べを見学するためである。

「どうだ? なにか吐いたか?」

「いえ、まだです。中々にしぶといヤツで...」

 詰め所に居た近衛兵の一人が忌々しげに応えた。

「そうか...」

 ミハエルはマジックミラー越しに怪しげな商人が尋問されている様子を眺めた。なお、尋問は騎士団長自らが行っている。

 ミハエルはちょっと考え込んだ後、

「ラングレー公に面通しはさせてみたか?」

 近衛兵達を見渡しながらそう尋ねた。

「面通し...それは考えも付きませんでした...殿下、さすがですね..」

 さっき応えた近衛兵が感心した様子で呟いた。

「もしかしたら面識があるヤツかも知れん。早速連れて来てくれ」

「分かりました。直ちに」

 近衛兵が詰め所を飛び出して行った。
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