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その頃ミハエルは執務室で船を漕いでいた。
「殿下、失礼致します」
そこに騎士団長が入室して来た。
「フガッ...むにゃむにゃ...」
「あ、申し訳ありません。お休みでしたか?」
「いや...大丈夫だ...どうした?」
ミハエルは頭を振って眠気を吹き飛ばしながら応じた。
「王都に入る検問で怪しい人物を拘束しました」
「そうか。どんなヤツだ?」
「本人はあくまでも商人だと言い張ってますが、馬車の荷台には何も荷物を積んでいませんでした」
「それは確かに怪しいな」
「えぇ、なんでも王都で仕入れる物があるから荷台を空にして来たんだとか言ってるみたいなんですが」
「普通は有り得ないよな。逆なら有り得るが」
「おっしゃる通りです。王都に入ろうとする商人は、物を納めるに来る者が大半ですので」
「王都で物を仕入れようとする者が全く居ない訳じゃないだろうが、恐らくは極めて珍しい部類になるよな。しかもそれがよりによってこのタイミングというのは」
「えぇ、なにかあるんじゃないかと思いました」
「それで拘束したという訳だな」
「はい」
「分かった。だが取り調べは慎重にな。まだ怪しいというだけだから」
「心得ております」
「引き続きよろしく頼む」
そこで話を切り上げ、仕事に戻ろうとしたミハエルだったが、
「殿下、少しご休憩なさって下さい」
騎士団長に苦言を呈された。
「ありがとう。だがそうもしておれん。みんなそれぞれ頑張っているんだからな」
ミハエルは固持した。なにせそう言っている騎士団長自身の顔にも深い疲労の色が見て取れるのだから。とてもじゃないがこんな状況で一人惰眠を貪る気にはなれなかった。
「そうですか...」
騎士団長は説得するのを諦め、一つため息を吐いて部屋を後にした。
◇◇◇
夕食の席には当然ながらミハエルは姿はなかった。候補者達はお互いをチラチラと伺いながらも、特に話題もなく淡々と食事を摂っていた。
全員の夕食が終わって食後のお茶を楽しんでいる時だった。
「皆さん、ちょっとよろしいでしょうか?」
ライラが全員を見渡しながら声を掛けた。
「はい、どうしました?」
ここでも全員を代表する形でミシェルが応じる。
「時間が有り余っていたんで小説を書いてみたんです。よろしかったら皆さんで回し読みして頂けませんか?」
ライラはそう言って原稿用紙の束を取り出した。
「えぇっ!? ライラさんの新作ですか!?」
途端にミシェルの目が輝いた。ライラの小説のファンを自認するだけはある。
「殿下、失礼致します」
そこに騎士団長が入室して来た。
「フガッ...むにゃむにゃ...」
「あ、申し訳ありません。お休みでしたか?」
「いや...大丈夫だ...どうした?」
ミハエルは頭を振って眠気を吹き飛ばしながら応じた。
「王都に入る検問で怪しい人物を拘束しました」
「そうか。どんなヤツだ?」
「本人はあくまでも商人だと言い張ってますが、馬車の荷台には何も荷物を積んでいませんでした」
「それは確かに怪しいな」
「えぇ、なんでも王都で仕入れる物があるから荷台を空にして来たんだとか言ってるみたいなんですが」
「普通は有り得ないよな。逆なら有り得るが」
「おっしゃる通りです。王都に入ろうとする商人は、物を納めるに来る者が大半ですので」
「王都で物を仕入れようとする者が全く居ない訳じゃないだろうが、恐らくは極めて珍しい部類になるよな。しかもそれがよりによってこのタイミングというのは」
「えぇ、なにかあるんじゃないかと思いました」
「それで拘束したという訳だな」
「はい」
「分かった。だが取り調べは慎重にな。まだ怪しいというだけだから」
「心得ております」
「引き続きよろしく頼む」
そこで話を切り上げ、仕事に戻ろうとしたミハエルだったが、
「殿下、少しご休憩なさって下さい」
騎士団長に苦言を呈された。
「ありがとう。だがそうもしておれん。みんなそれぞれ頑張っているんだからな」
ミハエルは固持した。なにせそう言っている騎士団長自身の顔にも深い疲労の色が見て取れるのだから。とてもじゃないがこんな状況で一人惰眠を貪る気にはなれなかった。
「そうですか...」
騎士団長は説得するのを諦め、一つため息を吐いて部屋を後にした。
◇◇◇
夕食の席には当然ながらミハエルは姿はなかった。候補者達はお互いをチラチラと伺いながらも、特に話題もなく淡々と食事を摂っていた。
全員の夕食が終わって食後のお茶を楽しんでいる時だった。
「皆さん、ちょっとよろしいでしょうか?」
ライラが全員を見渡しながら声を掛けた。
「はい、どうしました?」
ここでも全員を代表する形でミシェルが応じる。
「時間が有り余っていたんで小説を書いてみたんです。よろしかったら皆さんで回し読みして頂けませんか?」
ライラはそう言って原稿用紙の束を取り出した。
「えぇっ!? ライラさんの新作ですか!?」
途端にミシェルの目が輝いた。ライラの小説のファンを自認するだけはある。
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