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「まぁ仕方ない。次の手を考えることにしよう」
ミハエルは切り替えるようにそう言った。
「申し訳ございません...」
ファリスは恐縮頻りだ。
「なあに、ファリス嬢のせいじゃないさ。元々は小賢しいことを考えたこっちが悪いんだ。気にしないでくれ」
「ですが...」
ファリスとしては約束が果たせなかったことで、申し訳無い気持ちに包まれたままだった。
「それにな、どうも個人面談どころじゃないような状況になって来たんでな。どっちにしろ僕の望みは叶えられなかったってことだよ。だから本当に気にしないで欲しい」
「そうですか...」
ファリスは瞠目していた。なぜなら、ここまでライラの言った通りになったからだ。
「という訳だからもういいかな? 他にもなにかあるか?」
「いえ、ございません。お疲れのところ申し訳ありませんでした」
◇◇◇
ファリスが部屋を後にしてすぐ、
「殿下、よろしいでしょうか?」
騎士団長がやって来た。
「あぁ、なんだ?」
「スモルツ家の手の者が国境を越え密入国したという情報が入って来ました」
「ついに来たか...迎え撃つ準備は万全だろうな?」
「はい、抜かりはありません」
「結構。陛下には報告したか?」
「いえ、まだです」
「そうか」
ミハエルはチラッと時計に目をやった。時間は既に深夜12時を回っている。騎士団長としてもこんな遅い時間に国王へ報告するのは躊躇われたのだろう。ヘタすりゃベッドに入っている可能性もあるのだから。
「僕から報告しておこう」
「申し訳ありません。よろしくお願い致します」
ミハエルは席を立って玉座の間へと向かった。
◇◇◇
翌朝、目の下に濃い隈を浮かべたミハエルが、ヨロヨロとした足取りで朝食の席にやって来た。かなりお疲れの様子だ。そして開口一番、
「あぁ、諸君...悪い報せだ...隣国の間者が我が国に潜入した模様だ...」
ミハエルの言葉に候補者達全員が緊張して顔を強ばらせた。
「よって安全のために、この建物から外に出ることを禁ずる。中庭に出るのもダメだ。不自由を掛けるがどうか辛抱して貰いたい」
そう言ってミハエルは軽く頭を下げた。
「...分かりました...」
ややあって、またも全員を代表する形でミシェルが応じた。
「よろしく頼む...それじゃあ...」
それだけ言うとミハエルは、来た時と同じようにヨロヨロとした足取りで、朝食も摂らずにその場を後にした。
残された候補者達はお互いに目配せしながら、言い知れぬ不安に駆られていたのだった。
ミハエルは切り替えるようにそう言った。
「申し訳ございません...」
ファリスは恐縮頻りだ。
「なあに、ファリス嬢のせいじゃないさ。元々は小賢しいことを考えたこっちが悪いんだ。気にしないでくれ」
「ですが...」
ファリスとしては約束が果たせなかったことで、申し訳無い気持ちに包まれたままだった。
「それにな、どうも個人面談どころじゃないような状況になって来たんでな。どっちにしろ僕の望みは叶えられなかったってことだよ。だから本当に気にしないで欲しい」
「そうですか...」
ファリスは瞠目していた。なぜなら、ここまでライラの言った通りになったからだ。
「という訳だからもういいかな? 他にもなにかあるか?」
「いえ、ございません。お疲れのところ申し訳ありませんでした」
◇◇◇
ファリスが部屋を後にしてすぐ、
「殿下、よろしいでしょうか?」
騎士団長がやって来た。
「あぁ、なんだ?」
「スモルツ家の手の者が国境を越え密入国したという情報が入って来ました」
「ついに来たか...迎え撃つ準備は万全だろうな?」
「はい、抜かりはありません」
「結構。陛下には報告したか?」
「いえ、まだです」
「そうか」
ミハエルはチラッと時計に目をやった。時間は既に深夜12時を回っている。騎士団長としてもこんな遅い時間に国王へ報告するのは躊躇われたのだろう。ヘタすりゃベッドに入っている可能性もあるのだから。
「僕から報告しておこう」
「申し訳ありません。よろしくお願い致します」
ミハエルは席を立って玉座の間へと向かった。
◇◇◇
翌朝、目の下に濃い隈を浮かべたミハエルが、ヨロヨロとした足取りで朝食の席にやって来た。かなりお疲れの様子だ。そして開口一番、
「あぁ、諸君...悪い報せだ...隣国の間者が我が国に潜入した模様だ...」
ミハエルの言葉に候補者達全員が緊張して顔を強ばらせた。
「よって安全のために、この建物から外に出ることを禁ずる。中庭に出るのもダメだ。不自由を掛けるがどうか辛抱して貰いたい」
そう言ってミハエルは軽く頭を下げた。
「...分かりました...」
ややあって、またも全員を代表する形でミシェルが応じた。
「よろしく頼む...それじゃあ...」
それだけ言うとミハエルは、来た時と同じようにヨロヨロとした足取りで、朝食も摂らずにその場を後にした。
残された候補者達はお互いに目配せしながら、言い知れぬ不安に駆られていたのだった。
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