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「なんとなく想像は付くけど...」

 ソニアはちょっと言い辛そうに続けた。

「やっぱり...レイチェルさんの時と同じように、きっとドロシーさんもなにかやらかしたってことなのよね...」

「......」

 確かにやらかした。なにせ色々と勘違いというか邪推して、ライラの家族のことを害そうとしたくらいだ。

 なんとか事なきを得たので、ライラとしてもホッと胸を撫で下ろしたところなのだ。

 だがまだそのことを言う訳にはいかないので、ライラとしては沈黙で返すしかなかった。

「ライラさんはどう思う?」

「さぁ...どうなんでしょうね...」

「絶対そうに決まってるわよ!」

「さぁ...どうなんでしょうね...」

「だってそれ以外考えようがないじゃない?」

「さぁ...どうなんでしょうね...」

「でもだったら、なんで未だに内緒にしているのかしらね!? さっさと公表しても良さそうなもんじゃない!?」 

「さぁ...どうなんでしょうね...」

「...ちょっとあなた! なによ! さっきから同じことばっかり!」

 バレたか...ライラは心の中でペロッと舌を出した。

「さては私と会話する気ないわね!?」

「あぁいえいえ、決してそういう訳では...」

 ライラからしてみれば当然である。なにも話せないというこの状況下では、これ以上会話を続けるのは不毛というものだ。

 だからさっさと話を切り上げたかった。

「とにかく、私には判断が付きかねますんで...あ、ソニアさん、そろそろ習い事の時間ですよ? さぁさぁ行きましょう」

 ライラはそう言いながら、ソニアの肩を押すようにして部屋の外へ出るようにと促した。

「ちょっ!? ちょっとちょっと! 押さないでよ! まだ話は終わってないんだからぁ!」

 ソニアの抗議は丸っと無視した。


◇◇◇


 その日の夜遅く、ミハエルの執務室のドアがノックされた。

「殿下、失礼致します」

 近衛兵の一人が入室して来た。

「どうした?」

 ミハエルは仕事の手を止めて尋ねた。

「例の暗殺者が自決しました...」

「そうか...」

 ミハエルはそれだけ言って静かに目を伏せた。

「大変申し訳ありません...ちょっと目を離した隙に...」

「まぁ仕方ない...己の運命を悟っていたんだろうしな...」

 なにせ将来の王妃候補を殺害しようとしたのだ。理由がなんであれ死罪は免れないところだったであろう。

「ラングレー公に対する手札が一つ減ったのは残念だが致し方ない...せめて丁重に葬ってやれ...」

「分かりました...」

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